18話「魔轟六将が一人! ケンタウロスのオウガ!!」
ヤリオとセレティーンは、かつて戦った宿敵のゼロス、柴胡路州輝、吸血鬼レンゾーマ、悪魔騎士ガイアの四人をパーティーに加えて、魔天城攻略に乗り出す。
最大で六階ある部屋には魔轟六将がそれぞれ待ち構えている。
一人一人撃破していかねば、最上階にいるリーダーが発している霧の魔力を消す事はできない。
第一階の大きな扉が開かれると、大広間にはトゲトゲしい岩山地帯が広がっているではないか。
「ウロウロウローッ! ようこそ地獄剣菱の間へーっ! そして魔轟六将が一人、ケンタウロスのオウガ!」
たくましい馬体の首からは上半身が生えている男。
そう、これがケンタウロスと呼ばれるモンスターだ。そして両手で鋼鉄の弓を構えている。
「ウロロ……。まず挑戦する無謀なヤツはどいつだーっ!? それともまとめて来るのかーっ!?」
ヤリオは「オレが……」と汗をかきながら行こうとするが、柴胡路州輝に止められた。
「さ……柴胡路州輝!?」
「新しい聖剣を、あの王国からわざわざ授けてもらったんだ。ここは俺に任せなーっ!」
自信満々の柴胡路州輝がトゲトゲの岩山地帯へ踏み入れた。
「ウロウロウローッ! まずは転移者かーっ! 受けてたとうぞーっ!」
オウガは馬の四本足で跳躍すると、トゲの頂点に降り立った。
なんというバランス感覚だ。柴胡路州輝も汗を垂らす。
「ま……負けてられないぜ!!」
「ウロロローッ! 我が領域に踏み入れて生き延びれたヤツは数百年いなかったーっ!」
すかさず柴胡路州輝が聖剣を抜いて、岩山の上を次々と飛び跳ねてオウガへ向かう。
柴胡路州輝が聖剣を振り下ろすと、水の刃が広がって軌道上の岩山を左右真っ二つにしていく。
「これが柴胡路州輝の新しい聖剣の力かーっ!?」
「水を発生して斬撃を拡張できるなんてーっ!?」
しかしオウガは軽やかにかわして別の岩山へ移っていた。
柴胡路州輝へ「やるようだなーっ!」と、オウガは不敵な笑みで弓を構えて、矢をつがってキリキリ引き縛る。
「ケンタウロス戦闘弓術秘奥義! 業火の地獄矢ーっ!!」
矢を射ると、それは火炎をまとって分裂して、まるで空を飛ぶ火の玉のように飛び交っている。
それは柴胡路州輝へ目指して襲いかかる。
水をまとう聖剣で次々と弾くも、炎の矢は再び引き返して飛んできた。
「なにーっ!? 追尾するのかーっ!?」
慌てて柴胡路州輝は移動するが、足場が心許ない山岳地帯。思うように動けず、四方八方から炎の矢が掠ってきて「ギャアーッ!」と血飛沫を振りまいた。
早くも満身創痍の柴胡路州輝は膝をつく。
「くっ……! さ……さすがは……魔轟六将かーっ! 強すぎるーっ!」
それでも飛び交っている火炎の矢は隙を窺っている。
「ウロウロウロウロウローッ!! 口ほどにもないーっ!」
更に炎の矢を射って、数を増やす。
そんな恐るべき戦術にヤリオたちは「まだ増やせるのかーっ!?」と戦慄する。
普通の矢と違って、追尾する火炎の矢は敵が息絶えるまで飛び交い続ける。それなのに更にオウガは矢を増やせる。
これでは、追い詰められて串刺しされて火ダルマになるしかない。
「この数百年、我が秘奥義を破った者はいなかったーっ! 例えかわし続けても、ジワジワ嬲られて力尽きた時に全身串刺しにされるだけだぜーっ!」
ウロロロローッと、勝ち誇って大笑いするオウガ。
「だが、この柴胡路州輝! この聖剣で鍛えてきた成果を見せてやるぜーっ!」
聖剣を振るうと、渦潮のように水の壁が柴胡路州輝を包んで、火炎の矢をことごとく押し流してしまう。
「ウ、ウローッ!? 我が秘奥義を破るだとーっ!?」
「そうだーっ! この聖剣リバイアーは、水の魔法を無詠唱で放つようなもので、しかも自在に操れるーっ! 水の刃で斬撃を拡張するだけじゃないーっ!」
仕返しとばかりに、渦潮から水のトゲを無数生やしてオウガへ伸びる。
「くっ!」
ケンタウロスの四本足で巧みに岩山を飛び移ってかわし続けていく。
外れた水のトゲは勢いに任せて岩山を打ち砕いていった。さすがはケンタウロス、器用に飛び回り続けてなかなか当たらない。
「くっ! さすがはケンタウロスだぜ……!」
「山岳地帯は我が庭のようなものーっ! 自在に移動するなど造作もないーっ! そして我がもう一つの秘奥義である灼熱の地獄大矢を喰らうがいいーっ!」
大きな火炎の矢は槍のようだ。それでオウガは勢いよく射った。
渦潮のバリアも貫いて柴胡路州輝へ襲いかかるが、咄嗟に聖剣リバイアーで弾く。
しかし前の矢と同様、引き返してきて再び襲ってくる。
「ウロウロウロウロウローッ!! きさまが息絶えるまで逃げられやしないぜーっ!」
「ならば、先にきさまを仕留めるのみーっ!」
「ウロロロ~ッ! こちらまで間合いを詰める前に、我が秘奥義の矢が貫くぜーっ!」
柴胡路州輝は聖剣を突き出すと、自らを押し出すかのように怒涛の津波で移動させた。
それにオウガは見開く。
まさか、聖剣の力を自身に炸裂させて移動するとは思わなかったのだ。
しかも広範囲に流れる津波でオウガはどこにも逃げられない。
「ウロロロローッ!?」
「これが柴胡路州輝の生きざまよーっ!!」
津波の勢いに任せて柴胡路州輝は聖剣を突き出して、オウガの上半身の胸板を刺し貫く。
しかし追いかけていた火炎の槍が柴胡路州輝の背中を貫く。
「ギャーッ!!」
「ウロロロ~ッ! 我が心臓は二つあるのだーっ! この上半身と、馬の部分で二つ! きさまはその一つを貫いただけに過ぎんーっ! きさまの負けだーっ!」
胸を貫かれてなお勝ち誇るオウガに、柴胡路州輝はニヤッと笑む。
背中から貫き続ける火炎の槍が、勢い余ってオウガの馬の部分の心臓にまで届いた。
「な、なにっ!? ギャアーッ!!」
柴胡路州輝の聖剣と、オウガ自身が放った秘奥義の矢で、二つの心臓を貫いて致命傷を与えたのだ。血飛沫が振りまかれた。
「て……てめぇ自身の秘奥義の矢を誘導して……トドメを刺す事も計算に入れたのさ! ゴホッ!」
「が……ガハッ!? ま、まさか……、自らを犠牲に……このオウガさまを破るとは……!! 敵ながらあっぱれなヤツよっ……! グフオッ!」
刺し違えた二人は同時吐血した。
「あ……あとは……任せたぜ…………! ヤリオ…………!!」
二人揃ってグラリと傾いて、そのまま奈落の底へ落ちていった。
ヤリオたちは「ああ……!」と絶句するしかない。柴胡路州輝は命を懸けて、先への道を切り開いてくれたのだ。
感激して涙するしかない。
「柴胡路州輝……。おまえの犠牲は無駄にしやしないぜーっ!」
ヤリオとセレティーン、ゼロス、レンゾーマ、ガイアは二階へ続く階段へ走り登っていった。




