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16話「大激臭時代開幕!! 激臭王におれはなる!」

 アマゾネス村を襲ってきた恐ろしいオーク軍団を全滅させたヤリオとセレティーンは、ロガントたちに見送られて再び旅立った。

 強敵だったオーク軍団との激戦で二人のレベルはかなり上がった。


「これで自信がついたぜーっ! もっと強くなるーっ!」

「もちろんよーっ! 魔力にみがきがかかったしーっ!」


 しばらくジャングルが続き、ジメジメした湿っけが絶えない。

 すると横切る川にでくわした。

 濁った水流で幅が結構広い。どこか橋でもないか見渡す。


「ウムーッ! ならば方法は一つしかないーっ!」


 何を思ったのかヤリオは聖剣の柄をググーンと伸ばして、向こう岸に突き刺す。

 そしてその柄を橋がわりにヤリオとセレティーンは川を越えていった。


「そして縮めればこの通りよ」

「さすが勇者ねーっ」


 元の聖剣に縮んでドヤ顔するヤリオにセレティーンも感心する。

 すると凄まじい臭いが立ち込めてきて「ウッ!」と顔を歪ませていく。


「な、なんだーっ!? この激臭はーっ!?」

「それも一週間風呂に入っていない臭いなんてレベルじゃないわーっ!」

「それどころか、一ヶ月や二ヶ月お風呂に入っていない臭い以上だーっ!」


 もし嗅覚が間違っていなければ、恐らく生まれてから洗ってもいないのだろう……。

 数十年もの溜め込んできた激臭。

 尋常ならざる圧倒的な重々しいそれは、他のどの臭いを遥かに凌いでいた。




 一方その頃、ジャングルには集落があった。

 アマゾネス族の集落とは離れた位置にあり、川が境界線となっていた。


「ワンオオオオーッ! このワーウルフ族の長であるフロギラさまは、実は転生者ーっ!!」


 木造の家で、王様のように座する大きな狼人間ことワーウルフはニヤリと笑む。

 そして他のワーウルフ族が兵士として並んでいる。


「ワーウルフ族に転生した事は幸運だったぜーっ! なぜなら苦手なお風呂へ入らなくて済むーっ!」

「そうでしょうな。フロギラさまはギドギドな毛が美しい」

「ウムーッ、ワーウルフ族は古来より、激臭によって敵を退けたという歴史があるからこそ、敢えて洗わない事で臭いを溜め込んで最強の種族となったーっ」


 ワーウルフ族は風呂はおろか川で体を洗った事のない筋金入りの風呂嫌い。

 今も、種族全体ですっごく臭う為、魔族ですら攻め込めないほど。だからずっと平和だった。

 そしてこれからも魔王にも脅かされないだろう。


「だが!」


 フロギラはギロリと先を見据える。


「ただいま、リザードマン族である使者が来ています」

「やはりか。通せ。何用だ?」


 リザードマン族の二人が通されて、フロギラへ跪く。


「我らリザードマン族の長であるアライタクナさまより伝言です」

「何だ?」

「綺麗になるよう体を洗え、との事です」


 フロギラは激怒して「ふざけるなあーっ!!」と駆け出して、爪型の聖剣を装備した両拳を振るって、リザードマン族の使者を「ギャアーッ!!」と惨殺した。

 そう、これが臭ければ臭いほど切れ味が増すという聖爪なのだーっ!


「臭いで勝てないからと、洗えと卑怯な事をーっ!」

「リザードマン族も、また激臭を力にしている一族ーっ!」

「ヤツらは濁った川に潜るから、臭いが落ちるのを気にしているんだーっ! だから洗えとーっ!」


 そう、リザードマン族も激臭を身につける事で自らの強さや魔除けを誇示している。

 つまりワーウルフ族とはライバル関係である。

 しかしながらリザードマン族は習性ゆえ、川に潜ったりしてエサを獲得しているので臭いが落ちる事が弱点となっていた。

 逆にワーウルフ族は陸で狩りをするので、川に入ったりする必要はない。


「戦争じゃあ〜っ!! 戦争じゃあ〜っ!」


 ワーウルフ族たちは殺気立って「ウオオオオオーッ!!」と吠え上がったのだ。




 そして一方でリザードマン族の集落で、長は立ち上がった。


「このリザードマン族へ転生したアライタクナさまは、このジャングルで激臭王におれはなるーっ!」


 アライタクナは槍型の聖剣クッセーヨを突き上げて、圧倒的なオーラを放って自身を極限パワーアップしていく。

 これもまた臭いが強ければ強いほどオーラは強さを増すーっ!


「ウオオオオオーッ!!」

「さすがはアライタクナさまだーっ!」

「ワーウルフ族など皆殺しだーっ!」

「やってやるぜ!! 大激臭時代の始まりだぁーっ!」


 もはや戦争状態とワーウルフ族とリザードマン族は大軍を率いてジャングルを突き進んで激突待ったなしだーっ!

 もちろん興奮する事で激臭は何倍も何十倍も増して、士気高揚していくーっ!



 そうとは知らないセレティーンはヤリオに見守られながら、自身の魔力を研ぎ澄ます為に集中を高めていた。

 足元に魔法陣が展開されていく。

 ヤリオは「おおーっ!」と感嘆した。


「精霊の花よ、立ち込める激臭に香りをもたらしたまえーっ!」


 セレティーンは杖を掲げて、キラキラ光礫が周囲から舞っていく。


「更に! 精霊の水よ、立ち込める激臭を洗浄せよーっ!」


 今度は綺麗な渦潮がセレティーンの周囲で流れ始め、それらはジャングルを通り抜ける津波となった。

 それらはワーウルフ族とリザードマン族へ覆いかぶさって、くまなく体を洗い流していく。

 しかも体毛もシャカシャカかき混ぜて臭いを完全に洗い落としていく仕様。

 最後に、甘い匂いがまとわりついてオッケー!


「「「「「ギャアーッ!!」」」」」


 なんと綺麗に洗われた上に、凄まじい甘い香りにショック受けた為にワーウルフ族とリザードマン族は次々と絶命していく。

 甘い香りに耐性がないので彼らにとっては猛毒となったのだ。

 しかも激臭が取り払われて直撃を被った為、それに抗える人は一人もいなかった。綺麗になった死骸だらけの死屍累々広がるジャングルとなった。


「な……なんでやねん……! ガクッ!」


 ワーウルフ族、リザードマン族、いっしょくたに全滅……。

 こうして大激臭時代はひっそり終わった。



「ウム! 綺麗なのはいい事だなーっ!」

「そうでしょーっ!」


 そうと知らないヤリオとセレティーンはニッコニコで旅を続けた。

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