11話「魔王四天王が一人! 悪魔騎士ガイア!」
火山でのアトミックドラゴンとの死闘で二人仲間を失った。
それでもヤリオは聖剣を槍に伸ばし、セレティーンは杖を自在に操って魔法を放ち、幾多のモンスターを葬り去りながら、過酷で長き旅を続けていった。
丘の上で、広々と広がる海を見渡す。
「フウ……、旅立って三ヶ月か」
「そうね。長いようで短いけど、おかげで私たちはレベルアップしたわーっ」
「ウム」
二時間ほど歩いていると、海に沿った王国が目に入った。
セレティーンは「五大王国が一国。リバィアマンよ」と指さした。確かに港があって、帆を張った大小の船が出入りしているのが窺える。
「み、見ろーっ!!」
ハッと気づいた。建物から黒煙が昇っている……。
延焼しているかのように火の手が無数の建物を巻き込んでいたのだ。しかもボカンボカン爆発が繰り返されている。
「まさか!! 魔王の手が!? いかん急がねばーっ!!」
「ええ! 勇者ヤリオ、行きましょう!!」
ヤリオが察した通り、都市の大通りで紫で覆った巨人のような魔族が暴れていた。
体毛がなく、こめかみからは牛のような角が伸びていて、全長五メートルほど、しかも背中からコウモリのような大きな翼がある。
「ガーッガガガガッ! 我は魔王四天王が一人! 悪魔騎士ガイアよーっ!」
王国騎士たちが抗戦していて、戦慄を覚えながら目の前の四天王に身構えていた。
まさか魔王四天王直々に攻めて来るとは思ってもみなかった。
「だが、この国を滅ぼさせはせんーっ!!」
「皆でかかれば、絶対倒せるーっ!」
「「おおおおおおーっ!!」」
騎士たちは剣や槍で波状攻撃を仕掛けるが、悪魔騎士ガイアはニヤリと笑んで、俊敏に巨腕を繰り出しての嵐のような打撃を繰り出して、騎士たちをことごとく吹き飛ばす。
巨体に見合わず軽やかなフットワークに重い攻撃の連打。
まさしく魔王の側近だけある。
「「「「ギャアーッ!」」」」
吹き飛ばされて血まみれで横たわる騎士たち。その一人をガイアは踏みつけて「グギャアーッ!!」と断末魔を上げさせた。
駆けつけたヤリオとセレティーンは「ああ……!」と絶句した。
周囲の建物は見るも無残に崩れていて、火の手もあちこち上がっていて、犠牲者と思わしき町人や騎士が死屍累々と転がっているではないか。
生き残っている騎士たちは息を切らしながら、ガイアを睨み据えている。
「く……くそっ!!」
「ガッガッガッガ! 無駄な抵抗をせず、降伏せよーっ!」
「そんな事できるかーっ! この聖剣フレアミネンスの力を見せてやるーっ!!」
「ほう?」
とある勇敢な騎士の一人は、他の騎士と違い、高貴な赤いマントを羽織っている。
「私は、かれこれリバィアマン王国に仕えてきた騎士将軍アガニスだーっ!! この世界の住民として、きさまのような魔族はこの手で討ち果たしてくれるわーっ!」
アガニスは重い全身鎧をものともせず駆け出し、聖剣が炎をまとっていく。
「あ、あれも聖剣かーっ!?」
「そうよーっ! 移転者転生者しか持つ事を許されない聖剣! あれなら四天王に通じるかもーっ!」
この世界の住民として誇りを抱くアガニスは、ありったけの想いと魔力を込めて聖剣の力を発動させた。
それは邪悪なるものを焼き尽くす聖なる炎を発する力なのだ。
アガニスは聖剣を振りかざし、全身に聖なる炎を纏っていく。
「これがセイントフレアバーン!! 喰らうがいいーっ!!」
移転者転生者でもないのに、それにも勝るとも劣らぬ身体能力で斬りつける。
魔族にとって聖なる炎は天敵のようなもの。
「グアッ!!」
なんと胸元に切り傷をつけてしまう。少しばかり血飛沫を噴き上げた。
更に幾重も斬りつけて、ガイアを防戦一方に追い込んでいく。これはいけるかも!
生き残った騎士たちは一縷の希望を見出した。
「ガッガガガーッ! それで倒せると思ってるのかーっ!」
「なにーっ!?」
無数の切り傷をつけられるも、ガイアは以前と余裕そうに笑んでいる。
「苦し紛れをーっ!! セイントフレアバーンッ!!」
一丸となって突っ込んで斬りつけるアガニスに、ガイアは頭を突き出して牛のような一対の角をピーンと伸ばした。
「ジェノサイドホーン!!」
「ギャアーッ!」
ガイアの伸ばした角が、アガニスの胸板を貫き血飛沫を噴き上げた。
そのまま高く飛び上がり、ガイア自身が真っ逆さまになり突き刺したままのアガニスを真下に体勢を整え、両手で頭と両足をクラッチし急降下。
「光栄に思うがいいーっ!! これが四天王たる奥義! グレイトホーン・クラッシュガイアーッ
!!」
ズガガァン!! 強烈に体重を乗せてアガニスを地面に叩きつけた。
ツノで突き刺しつつ、地面に叩きつけるダメージは恐るべきもので、さしもの騎士将軍アガニスも「ガハッ」と苦悶に吐血して絶命した。
「お……恐るべき魔王の幹部……。これでは……勝てようがないではないか……」
ヤリオは身震いするしかない。
セレティーンも絶句し、顔を青ざめている。
どれだけ強いか、戦わなくとも察し取れてしまったのだ……。




