10話「火山のアトミックドラゴンとの死闘!」
ヤリオ、セレティーン、チョーホー、太助は七日間かけて旅を続けていた。
草原を抜けて森を通って、山脈を越えるという過酷な冒険に入っていた。山脈は起伏が激しく、登ったり降りたりで体力を消耗させてくる。
おまけにモンスターも遭遇する為、生半可な覚悟では生き残れない。
しかし聖剣を持つ三人の勇者と、魔力に長けているエルフならではの戦闘力でなんとかくぐり抜けてきた。
「フウーッ! しかしこの辺りは火山地帯だ。暑いぜ……」
ヤリオは、背の低い草木しかない火山の山腹を見渡して、額の汗を腕で拭く。
チョーホーは山頂を見上げて「見ろ! 黒煙が昇っている……! 活動中だぜ」と呟く。
太助も「ああ。暑くて当たり前かーっ」と頷く。
「とにかく、溶岩が流れてこない内に通り抜けましょーっ!」
「ウム!」
「ログログ。ああ、そうだなーっ!」
「オノオノ……、そうしよう」
セレティーンの言う通りだと、三人は頷く。そして歩み始めた。
三〇分歩いていると村が見えてきた。あちこち洞窟に掘られている所で、兜をかぶった小人のような人々がたくさんいた。
「あれはドワーフよ」
「ドワーフ?」
「ええ。山岳地帯に住む事が多い種族で、身長こそ低いものの頑丈な体格で毛むくじゃらなのが特徴。それに手先が器用で装飾品とかも作れる。鍛冶屋もやっていて武具も彼らが作っているのよ」
「へぇーっ」
博識なセレティーンに、三人は感嘆した。
すると地響きが大きくなっていく。グオオオーンと唸り声のようなのが響いてきたと思ったら、巨大な何かがドワーフの村に降り立った。
赤く染まったドラゴンで、恐ろしい吠え声で「グワオオオーッ!!」と大気を震わせるほどだ。
「あ、赤いドラゴン!? 初めて見たーっ!」
ヤリオは驚いて口走った。
チョーホーも太助も目を丸くして、ドラゴンに呆然。
「あ、あれは!? 火山に住むアトミックドラゴン!」
「アトミックドラゴン!?」
「ええ! 高温地帯に住む事が多く、プライドが高くて縄張り意識が強い! ドワーフの村は縄張りに入っているから襲われたんだわーっ!」
ドワーフたちは一斉に武器で徹底抗戦するが、アトミックドラゴンの鋼鉄みたいな皮膚に傷一つ付けられない。
逆に口から火炎ブレスを吐かれたり、鋭い爪や牙で振り回されて、哀れなドワーフはみんな「ギャアーッ!!」と虐殺されていった。
例えドワーフの頑丈な体でも真っ二つに切り裂かれたりするから、ドラゴンは恐ろしい。
「いかん! このままでは村が壊滅するーっ!」
「オノノーッ! 助太刀するぜーっ!!」
チョーホーと太助は駆け出す。ヤリオは戸惑っていたが、セレティーンに「助けに行きましょう!」と促されて共に駆け出す。
アトミックドラゴンは苛立ちを晴らすかのように「グワオオーッ! 死ねーっ!」とドワーフを惨殺し続けていた。
「ログーッ!! そうはさせないぜーっ!!」
チョーホーは聖剣ナガーケンを振り下ろして、包丁のように肥大化して翼を斬り飛ばす。
そして太助は聖斧マプタツンを横薙ぎに払って、右足を爆破させた。
「グワオオーッ!! なんだきさまらはーっ!!」
片翼にされ、右足を負傷して、怒り狂ったアトミックドラゴンはギロリとチョーホーと太助を見下ろす。
その間に生き残ったドワーフは「今だーっ! 逃げろーっ!」と蜘蛛の子を散らすように去っていく。
ヤリオは、ゼロスから託された聖剣パーフェクトを槍のように伸ばして奇襲した。
「くらえーっ!! 聖剣パーフェクトの威力をーっ!」
無敵と言われた聖剣でアトミックドラゴンの背中を突き刺そうとしたが、刃先が弾かれて傷一つ付けられない。
思わず絶句する。無敵の聖剣が効かないだと、と。
「なにものだーっ! さては勇者どもかーっ!」
ヤリオへ振り向くと尻尾で薙ぎ払って、聖剣パーフェクトを弾いてしまう。それはそのまま弧を描きながら溶岩の川へ沈んでいった。
愕然して言葉を失うヤリオ。
「ヤリオーっ!! なんでも斬れないから、斬れないのよーっ!」
「そうかーっ! うかつだったーっ!!」
ゼロスが自慢げに言っていたから勘違いしていたが、刃こぼれしないほど無敵だが逆に切れ味も皆無なのだ。つまり攻撃力ゼロ。ドラゴンはおろか小さな虫にも傷一つつけられないだろう。
「ううっ……! 役に立たないではないかーっ!」
ヤリオは悔しくてたまらず、地面を拳でドンドン叩く。
「ログログログーッ!! 俺だけでも倒してやるぜーっ!!」
「オノオノーッ!! 抜け駆けするんじゃねぇぜーっ!!」
チョーホーと太助はアトミックドラゴンと激しい戦いを繰り広げていた。
聖剣ナガーケンと聖斧マプタツンで、ドラゴンの猛攻を弾き捌き、攻勢に出てダメージを与えたりする。
「グルオオオーッ!! さすがは勇者よーっ! ここまで手こずらせるとはなーっ! では本気を出すかーっ!」
「なにーっ!? まだ本気じゃないだとーっ!?」
「グムーッ!」
アトミックドラゴンは「グオオオオーッ!!」と大気を震わせるほど吠えると、巨体に似合わず瞬間移動のように動き回ってチョーホーの後ろから爪で突き刺して「ギャアーッ!」と苦悶に絶命させた。
慌てる太助は聖斧を振るうが、アトミックドラゴンに凄まじい火炎ブレスを吐かれて「ウギャーッ!」と燃やし尽くされて息絶えた。
あっという間に、強かった二人はやられたのだ。
茫然自失していたヤリオは仲間を失ったショックで立ち直る。
「きさまーっ! よくもオレの仲間を殺してくれたなーっ!!」
「ダメよーっ!! 相手はドラゴン!! 二人かがりで倒せなかったのよーっ!」
セレティーンの必死な制止も虚しく、ヤリオは単身駆け出していく。
アトミックドラゴンは「バカめーっ! さっきの二人の二の舞だーっ! 惨たらしく死ねーっ!」と火炎ブレスを吐く。それは大地を轟かし、周囲を溶かすほどの超高熱を撒き散らすほど。
セレティーンは絶望して「ああーっ! 終わったわーっ!」と頭を抱える。
「くらえーっ!! これがオレのストライクランサだーッ!!」
「バカなヤツめ! それより先にきさまが黒コゲになるわーっ!!」
勝ち誇ったままアトミックドラゴンは火炎ブレスを吐き続けている。
しかしヤリオの伸ばした聖槍は、火炎ブレスを切り裂いてアトミックドラゴンの胸板をグサッと貫いたのだ。
「な、なにーっ!? ギャアーッ!!」
アトミックドラゴンは苦悶の顔で「ゲボバーッ!」と血を吐いて絶命した。
なんでも斬れるという事は、火炎ブレスすらも斬り裂けるという事。それが勝因となった。
二人の犠牲は払ったが、ヤリオはドラゴンを倒せた喜びで聖槍を勢いよく掲げた。
「や……やったーっ!! ドラゴンを初めて倒したんだーっ!!」
セレティーンはホッとして笑顔に満ちていく。




