第4話 Dと3D!
作:佐藤そら
だいすけというダンディーな男が現れてからというもの、ひろしとたくみの機嫌はあまりよろしくない。
わたしがDと口にしようものなら、2人の表情は一気にこわばる。
わたしは家の外に出るのも億劫になり、2階にある自分の部屋で読書をしていた。
ふと、車のエンジン音が家の前で止まった。
なんとなく気になり、わたしは部屋の窓を開ける。
すると、見覚えのある高級車からDが降りてきた。
「うっ、うそ! なんで!?」
声が届いてしまったのか、Dはわたしを見上げ、爽やかに手を振った。
すると、車からもう1人降りてきた。
手を振るDにまとわりつき、こちらを睨みつける。
それは、間違いなくひろだった。
「こちらに来てくれないか?」
「えぇっ!?」
動揺しつつも、足は部屋を飛び出し、軽やかに階段を下り、彼の元へと向かっていた。
「だいすけさん!!」
「やあやあ、ごきげんよう。やっぱりこのおウチだったんだね?」
「えっ?」
「うちのひろが、彼女はここにいるって突き止めて教えてくれたんだよ」
「ええ!?」
「言っとくけど、お前が Dに近づかないように見張るためだからな!」
ひろは怒った様子だった。
でも、かわいい。
「Dがお前の相手なんてしないんだからな! バーカ! バーカ!」
頬を膨らまし、ひろはご機嫌斜めの様子。
それでも、やっぱりかわいい。
Dは切り出す。
「あの坊や2人組は、さすがに家にはいないようだね?」
「ぼ、坊やって……!」
「お嬢さん、今度、僕とドライブディナーデートをしないかい?」
「えっ!?」
Dとドライブ、ディナー、デート!?
3Dだと思った。
「君を素敵な世界に連れて行きたい」
すぐに、ひろしやたくみに怒られると思った。2人の顔がよぎる。
でも、この高鳴る気持ちを止めることはできなかった。
「是非!」
わたしは無意識のうちにそう答えていた。
× × ×
ついにやって来たDとのデート!
つまり、ディートである。
わたしは、遠足の前日のたくみのように全然眠れず、ひろしのような冷静さもすっかりなくなり、この日を迎えた。
「大変!」
服装が決まったのは、Dとの約束の時間の10分前!
わたしは慌てて梨を飲み込むと、まだ喉に梨がいる違和感を抱えながら、髪を整える。
Dは時間ぴったりに車でわたしを迎えに来ると、高級車のドアを開けた。
「お嬢さん、こちらへ」
こんなお高い車に乗るのは初めてだ。
Dの微笑みと緊張にドキドキが止まらない。
わたしは助手席に乗り、後ろから妙な視線を感じて振り返った。
後部座席にはひろがいた。
「いる……!」
思わず声が漏れた。
「当たり前だろ、Dは僕のなんだからな」
ひろがいようとお構いなしに、Dは車を走らせた。2人っきりとは言えない、歪なデートは始まった。
ドライブデートは、とても大人な気がした。
ひろしとたくみと、3人で自転車を走らせる距離とはまるで違う。
日が傾き、闇に吸い込まれていく景色を見つめながら、ふと窓に映る自分の顔がニヤニヤしていることに気がついた。
コレが、ディート!
高そうなホテルの夜景が見えるレストランへと案内され、わたし達は食事をした。
「どうだい? 焼き芋より美味しいかい?」
「はい、とっても! こんなオシャレで豪華な食事は初めてです!」
「それはよかった。君の初めてを貰えるなんて、僕は幸せ者だ」
Dは優しく微笑んだ。
その時、誰かの強い視線を感じた。
視線の先を見ると、ひろがこちらを睨みつけている。
「あの……彼は……」
「気にしなくていい。ひろは、僕らを見守ってくれているだけさ」
いや、見守ってるっていうか、ずっと睨みつけてますけど……。
食事を終え、わたし達は外に出ると、夜景を見つめた。
「くしゅん」
「寒くなって来たね、そろそろ戻ろうか」
Dは自分の着ていたコートを脱ぐと、わたしを包み込み、そのまま後ろからギュッと抱きしめた。
バックハグ!?
ズルい! ちょっと、こんなの反則じゃない!!
Dは、まるで王子様だ。
わたし……
『だいすけ』が『だいすき』ってこと!?
恐れていたことが起きた気がする。
変わらないはずのわたし達の三角形が、今、四辺形になろうとしていた……。
× × ×
「はぁああ!! アイツ、Dと距離が近い! Dは僕のなのに!! Dは僕の!!」
ひろは1人怒っていた。
第5話:『「やんのか、やんねーよ」』へ続く