第3話 騎士と王子
作:シキカン
「ゆいこ、帰るぞ!!」
あの日からひろしとたくみは毎日のように教室に迎えにきて、まるでどこかの国のお姫様と騎士のように護衛付きで帰っている。
「私、子供じゃないんだから1人で帰れるよ。」
「またいつアイツが現れるかわからないだろ!」
たくみが少し怒ったような口調で言う。
「アイツって…だいすけさん?」
名前を口に出しただけなのに、ほんのり顔が赤らむ。
「ゆいこに何かあってからじゃ遅いから。」
ひろしが真顔でまっすぐ私の方を見ながら言葉を発する。
嬉しいような…、なんだか妹扱いされてるような…複雑な心境だ。
すると前から見覚えのある男の子が歩いてきた。
「あっ。」
「あっ!」
2人同時に声を出す。あれは確か…
「ひろくん?」
「やっぱりおまえか!僕のDの周りをちょろちょろしてるやつ!今日はイケメン2人と帰ってるんだなー。」
中2男子のような絡み方をされて少し困っていると、グイッと顔が近づけ、私を牽制するようにこう言った。
「おまえなんか僕のDに全然相手にされてないんだからなっ!」
かわいいお猿さんのような顔をしているのに、急に雄を感じる雰囲気と発言に少しドキッとした。
「おい。何も言わないからってゆいこに近づいてるんじゃねぇよ。」
たくみがひろを見下ろすように睨みつけ、肩を掴んで私から引き離す。ひろしは私の前に盾のように立ちはだかり、さながら本物の騎士のようだ。
すると後ろから「あれ?ゆいこちゃん?」と甘くセクシーな声が聞こえる。
「だいすけさん!?」
自分でもわかるほど声が上擦った。
「今日は1人じゃないんだね。よかった。夜道じゃなくても、女の子1人で帰っちゃダメだよ。」
と優しい眼差しで私を見つめ頭をポンとしてくれた。
私がポーッとしながら「はい…」と答えると、Dが「そこの2人ちょっと」とひろしとたくみを呼び出し、私から離れたところに連れてった。
ひろが付いて行こうとするが、Dに「しっ!しっ!」とされる。
今度は捨てられた子犬のようにシュンとして、私の横に立つ。
Dが2人に何かを話している。2人の顔はみるみるうちに曇っていく。
戻ってきた2人に「なんて言われたの?」と聞いても「…なんでもない」と暗く答えるだけ。
Dはひろを連れて笑顔で手を振り去っていった。
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「君たちが3人の関係を壊したくないのはわかるけど、いつまでも騎士のように守っていたらいつか王子に連れていかれちゃうよ?
どんなお伽話もお姫様と結ばれるのは、いつだって王子だろ?」
第4話:『Dと3D!』へ続く