告白
「おはようございます、セレス」
昨夜すごく忙しかった気がするんだけれど、何があったんだっけ。えっと歓迎パーティがあって、それで飲み物を飲もうとしたら確かラーレさんが急に……そ、そうだ!!
「ラーレさんは!?」
「はい、どうしました?」
あ、そうだ。なぜかは知らないけれどラーレさんは意識が戻ったんだった。強張った肩が目の前の笑顔を見た途端に力が抜けていくのを感じた。
「そうだ、生きてるんだ」
おもむろにラーレさんの手を握り何度も確認する。昨日触った、手はとても、冷たくもう生きていないもののそれだったのに。今はもうとても温かった。
「どうしました?」
「いや、ラーレさんが生きていてくれてとても嬉しいなって思いまして」
私は笑顔でそういった。うん、そういえば私昨日どこで寝たんだっけ。
「――――!ご、ごめんなさい!」
私は今になってようやく自分の置かれている状況を理解した。私がラーレさんに覆い被さる形でそのまま寝てしまい、今、私はラーレさんベッドの上にいてしかもラーレさんに密着する形でいる。本当に今までどうかしていた!!確かにラーレさんが死んでしまいそうで、とても動揺していたけれども、でもこれはあり得ない!!それに、ラーレさんのこと好きだって、気づいたばかりなのに!!
私は慌ててラーレさんのベッドの上からどいた。そのまま床に座って頭を下げた。
「毒をあおっていた人の横で呑気に寝ているなんて、本当に申し訳ないです!!それに、覆い被さって寝るなんて、本当に失礼なことを!!」
「いいんです。気にしないでください。それほど、私のことを大切に思っていくれていたということですものね」
まぁ、否定はできない。もう二度とこういうことがなくて欲しいと思うほどに。
少し雑談をしている時、扉をノックし入ってきたのは、昨日ラーレさんを見てくれていた宮廷医師の方だった。
「おはようございます。ラーレ陛下、セレス様。お加減はいかがお過ごしでしょうか」
あれ、ラーレさんが起きていることに驚いていない。なんでなんだろう。もしかして、私が寝てしまった後に、訪ねてきていたのかな。それだったら、私の失態も見ていたってこと?それはちょっと恥ずかしいかもしれない。
「ラーレさんの診察をするのはわかるのですが、なぜ私まで?」
ラーレさんの触診が終わった後、なぜか私まで診られていた。だから思わず聞いてしまったのだ。そうすると、お医者様は
「当然です。覚えていられないかもしれませんが、セレス様はきっと癒しの力を使われたのですから」
「そうですよセレス。私を救うために、セレスは癒しの力を使われました。きっとダヌア様の力を引き継がれたのですね」
私が癒しの力を使った?あの時、私とラーレさんを包んだ光が癒しの力ってことなの?でも、私あの力はもう二度と使えない気がする。
「申し訳ないのですが、私癒しの力とやらはもう二度と使えないと思います」
そう私が言うと二人とも、驚いた表情でこちらを見た。
「なぜですか?」
「なぜ、っていう明確な理由はないんです。ただ私の勘、ですので」
癒しの力を使える者は限られていて、私が使えるととてもみんなが助かるのはわかっているけれど、あの時だけお母様が力を貸してくれたような気がする。
「本当にごめんなさい。裏切るようなことしちゃって」
「いえ、もう使えない力だとしても私のことを救ってくれたのは確かですから。ありがとうございます、セレス」
ラーレさんにそう感謝を述べられ、私は鼻がきゅうっとなった。
「では、お二人が元気なことを確認しましたし、私はそろそろお暇させていただきます。何かあればすぐに呼んでください」
そう言ってお医者様は部屋を出て行ってしまった。
うん。私もお医者様について部屋を出ればよかったな。完全に間を見失ってしまった。それに、自分の恋心を自覚して初めて落ち着いてラーレさんと一緒にいる。前までこんな時どうしてたっけ。
「セレス」
「――!はい!」
そんなことを考えていればラーレさんがいきなり私を呼んだ。驚いて大きな声で返事をしてしまった。すごく恥ずかしい。
「少し、ベランダに出ませんか?」
そう言われ私たちはベランダに出た。今日は日の出がゆっくりみたいだ。まだ、日が出ていない。そんなことを考えているとラーレさんが私を呼んだ。とても神妙な顔つきだ。どうしたんだろう。
「私、本当にあなたに感謝をしています。この命を救っていただいたこと、あなたが愛し子として生まれてきてくれたこと。とても、感謝をしています。今回私が毒をあおった時今までであればきっとこのまま死んでも良いと思っていました。ですがあなたに出会って、あなたの境遇を聞いた時とても肝が冷えました。ああなぜ早くあなたのことを見つけられなかったのかと、とても後悔しています。だからせめてもの償いにこれからはあなたのことをとても幸せにしようとそう誓っていました。その機会をもう一度与えてくれてありがとう」
日の出が始まってみたいで、ラーレさんの髪がとてもキラキラ輝いて見えた。一息ついてラーレさんはもう一度話し始めた。
「私はあなたを愛してます。愛し子だからではなくセレスあなたを愛しています。だからこれからずっとあなたのそばに、あなたのことを幸せにします。だから結婚してくれますか?」
急なことに私は頭が真っ白になった。冗談だって思ったけれど、彼の瞳を見たらそんなことは言えなかった。
「私、ラーレさんが死にかけてやっとあなたのことが何よりも大切だって気づいたのです。あなたがいない世界なんて私はもう生きていけなくなってしまいました。だから、責任をとってください」
彼の熱のおびた瞳を見てたら、そう自然と言葉が漏れてしまっていた。だけど、後悔はしていない。きっといつまでもこの気持ちを抑えておこうとも思っていなかったし、すぐに伝えようと思っていたから。伝えられないままさよならするなんて絶対に嫌だったから。
「あぁ、もちろん責任を取るよ。私の命全てをかけてね」
ラーレさんは私の頬に手を当て、顔を寄せた。
私たちの唇が重なり合った。
「愛しているよセレス」
「私もですよ、ラーレさん」
朝日が昇る。私たちを祝福しているかのようでとても綺麗だった。




