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第四話 交差する刃

時は少し遡り、デーレ村。この平和な田舎村は今日もいつもと変わらない平和な時間が過ぎ去ろうとしていた。しかしその平和な時間は1人の男によって終わりを告げる。




「あの銀白色の髪の男は村の奴らをなるべく多くこの短剣で殺せとってたな……」




殺さなきゃ、殺される……悪く思うなよ。そうして村に短剣を構えて入った俺は……近くに居た男を1人()った。村の外れでやったつもりだったがこんな田舎のことだ。常に誰かしらが見ていても不思議ではないと気付いた瞬間、俺の後ろから女の叫び声が聞こえる。声量からしても村全体に聞こえただろう。後ろで叫ぶ女の息の根を止めたのち、すぐさまその場を離れる他無かった。




「ここまでればとりあえずは大丈夫だろう。村の奴らは全員叫び声の方にってるだろうし。ここまで200メートルは距離があるからな」




安心感が故なのかそんな独り言を呟いていると




「よぉ、ヘリム。この間はウチのハイドが世話になったらしいな」




あの男は……確かハイドの親父か。いつも明るくて人当たりも良い。気にくわねぇ野郎だ。こいつも……




「んで、さっきの叫び声について何か知らないか?俺はお前の手元にあるその赤く染まった短剣と何か関係があるんじゃないかって踏んでるんだがな」




こいつ……理解してやがる。俺が人を殺したことを……




「仮に関係があったとして、お前はどうするんだよ」




そう質問したが返答が来ない。いや、実際には数秒の時間なのかもしれない。しかし俺にはとても永い時間に感じた。そしてやっとこの男が口を開く。




「お前が何もせずに村から出て行くなら俺は命までは取らねぇ。だが、大切な仲間を傷つけておいて簡単に許されるつもりならば笑止千万!俺を怒らせてただで済むと思うなよ、ヘリム!」











村の中から叫び声が聞こえてから俺とシーオはすぐさま走り出す。思考が脳を巡るよりも先に脚が動き出した。俺達が居た場所は村から歩いて5分程の場所。そこそこ距離もあるが叫び声がハッキリと聞こえたということは、相当大きな声で叫んだということだ。妙に胸騒ぎがする……




「ね、ねぇハイド、早いよ……」


「もう村はそこだ。あと少しだけ頑張ろうぜ」


「う、うん!」




そんなやり取りをしつつ村に辿り着き、人(だか)りが出来ている場所に向かったのがやけに騒々しい。年に一度の収穫祭に匹敵するほどだな。だが皆の顔は収穫祭とは異なり喜んでいる顔ではなかった。今にも泣き出しそうな顔、怯えている顔、拳を握りしめ怒りを露わにしている人も居る。どうしたのだろうと考えていると皆の視線がある方向に集中していることに気付く。恐る恐る、その先を確認すると……




「あ……」




言葉に出来ない光景が広がっていた。人が死んでいる……いや、正確には殺されているという表現が正しいだろう……見知った顔の男女が2人、それも結婚して幸せだった筈の2人。なのに何故……!悲しみ、恐怖、様々な負の感情が俺の脳内を支配する。しかし1番は犯人に対する純粋な怒りだった。頭に血が上る感覚に陥ったが、隣にいるシーオの怯えた表情を見て我に返る。俺が冷静にならないでどうすると自分に言い聞かせ、鼓舞する。




「シーオ……一旦父さん達と合流しよう」

「……」




無言で小さく震えながら頷くシーオ。俺はまだ良いが、シーオは単なる6歳の女の子だ。顔見知りで少なからず話したことがある人があんな状態になっているんだ、動揺しない訳がないだろう。だから俺が考えて動かなければいけない。さっきの叫び声から察するに犯人はまだ近くにいる筈だ……シーオの手を引いて父さん達を探すために歩き出す。するとこんな声が聞こえてきた。




「俺、見たんだ……ヘリムのやつがあの2人をぶっ刺してるところ……」




皆もその声を聞いて、思い思いに考えを呟いているようだ。本当なのかという真偽を確かめる声、ヘリムを許せないという声も多い。俺も覚悟しておかないとな……




「父さん達どこに行ったんだ……」




人集りを探しても全然見つからない……あの後シーオの両親が居たので隣の村まで行き事件の知らせと救援を呼んでくるよう頼んだのちシーオを預けてきて今は1人だ。俺も危ないから無闇やたらに動くのはやめなさいと言われたが、父さん達が心配なので探す選択をし今に至るが……嫌な予感が頭をよぎる。俺は急いで自分の家に向かって走り出す。そして家と事件現場の中間にある俺達が普段待ち合わせに使っている広場を通り過ぎようとした時




「そこの君、焦って走ってるそこの君。ちょっとお兄さんと遊びませんか?」




何やら誰かが俺のことを呼んでいる。声の方を振り返る。すると銀白色の髪をし灰色のタキシードを来た男が立っていた。顔はなかなかの美形だが身長は160cm前後でそこまで高くはないという印象だ。それにしても、なんでこんな男が今この状況において俺に話しかけるのかが分からない。とりあえず聞いてみるしかないか。




「は、はじめまして……ですよね?なんか俺に用でもあるんですか?」

「うん、はじめましてだね。用という用ではないんだけど、ちょっと君の加護を聞きたいなって思ってね」

「俺の加護……?」




何の目的だ?初対面の相手にいきなり加護を聞くだと?名前とかなら分からないでもないが……それにこの人、村で見たことないし胡散臭すぎるな。ここはキッパリと断ろう。




「知らない人に加護を教えちゃいけないってお父さんに言われてるので」


「なるほど、しっかりしているんだね君は。なら、殺すしかないかな」


「……え?」




直後、この男は胸元から短剣を取り出し俺にそうい向かってくる。




「あ……」

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