表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

アメリア、アドルフ王国へと発つ

あれからギルはカッ詰めて何かをしているようで顔を合わせる事がほぼ無くなった。

だけど、朝と夜部屋のドア下に紙が挟んであるのを見て自然と笑顔になる。


何気ない一言しか書いてない紙だけど、その気持ちが嬉しくて…

大事なものをしまう宝箱に日に日に増えるわたくしの宝物。


その間にもわたくしにはやる事があった。

アドルフ王国の勉強と婚約破棄に向けた証拠掴みのための材料集めだ。


そしてあっという間に三ヶ月が経ち、アドルフ王国から使者がやって来た。


「アメリア…元気でね。毎日連絡ちょうだいね…」


グスングスンと泣く母上とまだ納得のいってない表情の兄達は迎えに来た使者達を睨みつけていた。

綺麗な顔の分彼らに敵意剥き出しで睨まれるとその威力は凄まじい。


最後まで母上とお兄様達に蔑ろにされ続けている父上にこれもかと言う笑顔で別れの挨拶を交わした。


「行って参ります父上。それと、約束、必ず守ってくださいよ…」


「あ、ああ。勿論だ。」


カーテシーをし馬車に乗り込む。

私の身の回りの護衛とお世辞をする人達を10人程一緒に連れて行く。

その中には勿論メリーはいたが、ギルはいなかった。


「王女様あんなに泣いていらっしゃったのになんだかご機嫌ですね。」


横に座るメリーが不思議そうにわたくしを見る。


「ええ。頑張るって決めたの。それに…」


朝置いてあった切れ端をぎゅうと胸元で握りしめる。


“必ず迎えに行きます”


「頑張るお守りもあるから平気よ。」


「…そうですか。王女様がそうおっしゃるなら私は全力でお守りするだけです!」


「ふふ、よろしくねメリー。」


「はいっ!!」


馬車に揺られ途中で宿に泊まりを繰り返し三日。

ようやく城へと到着したアメリア御一行は出迎えていたアドルフ王国国王ニクラス・アドルフ。王妃アルマ・アドルフ。第一王子ベルンハルト・アドルフ、第二王子ロルフ・アドルフ、そして何故か一番偉そうにしている第三王子デュオドルド・アドルフにカーテシーをして挨拶をした。


「ヴァルデノン大国から参りました。アメリア・ヴァルデノンと申します。この度はわたくしめをデュオドルド殿下の婚約者にご指名していただき誠にありがとうございます。至らない点もまだまだございますが、これからよろしくお願いいたします。」


「う…「アメリア!!ようこそ!ずっとずっと待っていました!!」


国王が答える前に王妃が我慢出来ずにアメリアを抱きしめ頬ずりをする。


「貴女また綺麗になったんじゃなくて?ああ、わたくしずっと女の子が欲しかったの!!さあ、早速わたくしのお気に入りのサロンでご一緒にお茶しましょう!!」


「ゴホン!」


暴走気味の王妃に国王がわざとらしく咳をする。

第一王子第二王子も苦笑いする中、何故か第三王子だけは今度は機嫌が悪いようだ。


「私はアドルフ王国国王ニクラス・アドルフだ。こちらこそデュオドルドとの婚約に関して承諾をいただかな感謝する。」


「もう貴方ったら固いのよ!!これから娘になるのにそんなんじゃ嫌われるわよ!」


なりません。

そう叫びそうになったのをグッと堪える。


にこにこ愛想笑いしていると、第一王子と第二王子がデュオドルド様を肘で小突き小さな声で会話し始めた。


「デュオドルド、随分綺麗な人を見つけたな。あれでお前と同い年なんて信じられないな。」


「それもあのヴァルデノン大国の王女様なんてやるじゃないか。」


「!!ふ、フンっ!俺にかかればこんなモノです兄上達!」


いや、お前何もしてないだろ。

主に王妃が勝手に動いたんだろ。

お前がした事は王妃様にわたくしと結婚したいと我が儘言っただけだろう。


「初めましてアメリア王女。私は第一王子ベルンハルトと申します。」


「初めましてアメリア王女。私は第二王子ロルフと申します。」


「これからよろしくお願いいたします。ベルンハルト殿下、ロルフ殿下。」


第三王子であるデュオドルドはいつまで待っても挨拶しない。

暫しの沈黙が流れる。


「そ、それと…アメリア王女に確認したい事が…」


まずいと思った国王が言葉を発する。


「なんでしょうか?」


「契約書のことなんですが…」


「父上にもちゃんと許可をいただいて作成いたしました。全てはその通りでございます。ごく当たり前の事を書いたまでで何も心配なさる事は書いてないと思いますが?」


わたくしが提示した契約書はこうだ。


・アメリアの身の回りのお世話、護衛はヴァルデノン大国から派遣される者のみとする。

・アメリアとデュオドルドの婚約は仮とし、16歳を迎えた時正式な婚約となる。

・デュオドルドは側室を持つ事を許さぬ。またそのような関係があった場合速やかに婚約破棄となる。

・アメリアを大事にする。

・アメリアは一時的にアドルフ王国への留学とし、本籍はヴァルデノン大国王女である事に変わりないものとする。

・アメリアがヴァルデノン大国の事について関わっていても介入しない。

・アメリアがヴァルデノン大国の王女である事をバレてはいけない。

・これらの規約をデュオドルドに教えてはならない。

・これらの規約か一つでも破られるのなら、即刻婚約破棄、またアドルフ王国との取引を全廃止する。


「どれも簡単な事ですわ国王様。」


「う、うむ…」


あまり納得のいっていない表情の国王。

わたくしくらいの小娘なら言い包めるとでも思ったのかしら。

わたくしもバカにされたものですね。

それにわたくしの契約書はそちらが何も問題を起こさなければ不利になる事は何もかいていませんのに。

ああ、それだけデュオドルド様に信頼がないのね。


「それと王妃様、先程せっかくお茶会に誘っていただいたのですが、慣れない長旅で疲れてしまい今日はお部屋で休んでもよろしいでしょうか?荷物の搬入もありますし…」


「まあ、そうね。そうよね。やだわたくしったらそんな当たり前の事にも気付かずに…ごめんなさいねアメリア。今日はゆっくり休んでちょうだい。お茶会はまた落ち着いたら一緒にしましょう。」


「はい。ありがたきお言葉感謝します。では早速部屋で休ませていただきますね。」


「誰かアメリアを部屋まで案内して差し上げて。」


もう一度と彼らにカーテシーをしてその場をさる。

デュオドルド様が何やら言いたげな視線を送っていたが無視だ無視。


「…王女様、本当に彼の方と婚約するんですか?」


部屋に案内され荷物の搬入を行う。

侍女と執事がせっせと動く中、護衛も務めているメリーはこそっと耳打ちをした。


「…する訳ないでしよ。六年の間に何としても婚約を破棄させるわ。」


「ですよねー。第一王子第二王子ならともかく彼はないですね。」


第一王子でも第二王子でも嫌よ。

わたくしはギルベルトじゃなきゃ嫌。


コンコン


誰かがドアを叩く音がした。

荷物搬入の為開けっぱなしのドアから顔を見せたのはデュオドルド殿下だった。


何しに来たの?

わたくし今日は疲れたから部屋で休ませてって言ったわよね?


「…来い。」


「えっ、ちょっ!」


有無もなく腕を引かれ部屋から連れ出される。

メリーが止めようとするのを目で合図して事の成り行きを見守る。

連れてこられたのは庭園の噴水の近く。

沢山の花々が咲き誇るそこに足を止めるとこちらを見て、怒った。


「何故俺以外にも愛想を振りまく!!」


「え?」


分からない。

彼が何故怒っているのかも分からないし、何故わたくしが怒られているのかも分からないし、何を言っているのかも分からない。


「お前は俺の事が好きだから俺の婚約者になったんだろ!!それなのに何故兄達に笑う!!媚びを売っているのか!?」


いつ!誰が!誰に!何をした!!


「いいか!お前は俺の婚約者だ!俺のモノだ!!俺以外の男に愛想を振りまくな!媚びを売るな!わかったか!!」


言いたい事だけ言ってスッキリした表情でわたくしを置いて何処かに行ってしまったデュオドルド殿下。


ただただ唖然とし、空いた口が塞がらなかった。


「……ねえ、メリー。」


「はい王女様。」


「彼の頭の中には何が入っているの?」


「ウジ虫でしょう。」


即答するメリーに同意するように私も頷いた。

早速報告書にかきましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ