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フィクションで人生変わった奴に会ってみたい

俺はあのストーカーを捕らえるため、ダンジョンに足を踏み入れる


「シカ、灯をつけよう」


俺は道なりに続くロウソクに火を灯しながら前へと進む


「ガルゥゥウ」


遠くからのモンスターの唸り声がダンジョンの中にこだまし、その不気味な声に俺の足はブルブルと震えていた


「まったく、出てくるなら早く出てこいや…」

『な、何びびってんだ。さ、さっさと進め』


ん?魂内からビクついた声が聞こえる


「まさかお前、怖いのか?」

『怖くないし…』

「悪魔のくせに怖いのか?」

『怖くない』

「…………」


本人は否定しているが、魂内にいるので感情がバンバン伝わってくる

お前は怯えられる側だろとツッコミたい


それからダンジョンを歩き回り、RPGゲーム同様なんでそこあるのかわからない宝箱を何回か開けるが、全てカラだ。やっぱり金目のものは今回のクエストでは見込まれないな




すると真ん中に石像がある広間に出た

だが、その石像のセンスに俺は首を傾げる


「ん〜」


その石像は子供が意味もなくカーテンに巻きつくあれの形だった


「なんでこれ?」


俺がこの石像のセンスに首を傾げていると、石像の後ろからさっきの唸り声と同じ声を発しながら赤色に目を光らせ、黒色の狼らしきモンスターが顔を出す


「ガルゥゥウ」


その狼モンスターに釣られたか、いつの間にか左右からも同様の狼モンスターが複数こちらを睨み、俺の周りを囲った5匹の狼モンスターが同様にあの唸り声をあげる


「「「ガルゥゥウ」」」


やっとクエスト開始か。残敵を狩るだけの簡単なクエストかと思えば宝箱はカラだし、ダンジョン歩き回って疲れるし…もう次からは探索済みダンジョンのクエストはやめておこう

それよりも…


「シカ、ここに来るまでストーカーは見えたか?」

『いや見てない』


あんだけ歩き回ったのに見えないってことは既にこのダンジョンに入って待ち伏せでもしてるのか?


そんなことを考えている間に包囲していた狼モンスターが一斉に俺に襲いかかる


「ガルゥア‼︎」


「よしシカ、一匹ずつ着実にやってくぞ」


悪魔との戦闘にもだいぶ慣れた。

というか悪魔によって強くなったことを自覚しただけだが


『任せろ』


俺は悪魔に頼った動体視力と身体能力で狼モンスターの牙を避け、1匹1匹着実に火炎放射を喰らわせていく


「1!2!3!」


本来これは自分が望んでいることとは程遠いが、今この強さに自惚れている状況は悪くないな。


「4!」


後はこの狼モンスターで最後だ


最後の狼モンスターが俺に突進して来る


「さぁ来い!地獄の炎で焼き尽きろ!」


俺が調子に乗って厨二病発言をしたと同時に狼モンスターを見ると俺は顔を引き攣らせ、言葉を失った


なぜならその狼モンスターの口内から俺の首目掛けて白い炎を纏わせたダガーを向けるあのストーカーの姿があったからだ。

首との距離はもう数センチといったところまで迫っていた。流石にもう防御は今の俺の力でもっても間に合わない。


ヤバっ…… 死…


だが、その刃は俺が気づくと同時に首の前で止まった


「…………」


俺は今度はその行動に絶句しつつげ、思考が停止していた


『おいカイセイ!』


‼︎ シカの一声で停止していた思考が動く


ガシッとストーカーのダガーを持つ右腕を掴むと俺はストーカーを狼モンスターの口内からそのまま引き摺り出した。


「うおぉぉらぁ‼︎」


次にストーカーを掴んだ左手はそのままに右手からの火炎放射で最後の狼モンスターを焼き尽くす。


そしてストーカーをダンジョンの端の壁に軽く投げ飛ばす


『お、おい女の子に乱暴しちゃダメだろ…』


こいつ本当に悪魔か?


そんな悪魔は無視してストーカーに冒険者登録の時に初回特典として貰ったペイントボールを投げつける。

しかし狼モンスターの口内でベトベトな体に水と油のように唾液とペンキは分離した。


「顔に投げればよかったな。もう一発いっとくか」


俺は顔にもう一発投げつけた


『おい、女性の顔はダメだろ…』

「お構いなく」


少女が答える


『え?』

「そうだ。女も男も関係あるか。女か男かの関係が生まれる時は子供が産まれる準備の時だけだ。それ以外、俺は………ん?今コイツ、シカに返事をしなかったか?」

『魂内の俺の声は魂の主であるカイセイにしか聞こえないはずだが…』


その魂内のシカの声に返事をするようにストーカーは答えた


「私は祓魔師エクソシストです。エクソシストは悪魔を祓う他に魂に棲みついているやつも祓うために魂の声を聞くことが出来ます」

『何…⁈』


エクソシストって漫画とかアニメに出てくるあれか?

じゃあ…この悪魔も祓ってくれるのか⁈


『エクソシスト。聞いたことはあったが、こんな時に出会うとは…!』


焦るシカとは裏腹に俺は高揚していた。だってもう討伐クエストに行かなくて済むのだから!


「エクソシストさん早く!早くコイツを祓ってください!ずっとこの悪魔に脅されているんです〜」

『おい!裏切るのか⁈』

「裏切るも何もお前とは何の関係もない!こっからだ!こっから俺の第二の人生が始まるんだ!」

『貴様…!』


そんな俺と悪魔の言い合いの中、少女は淡々と言った


「いや、祓いませんよ。今は」


今は?


「あぁ、ペンキですね。すいません、すぐギルドでシャワー出来るので奢りますね」

「いえ、私は暗殺以外では祓いません」


は?


「私は!奇襲、暗殺、一撃を流儀にしています!」


いきなり少女は立ち上がって演説をし始めた


「予想外で、気づかれず、痛みを感じる前に!祓う!」

「な、なんでそんなことを…」

「よくぞ聞いてくれました!」


そういうとこの少女は懐からベトベトの本を見せてきた

俺を狙ってきた時は顔色を変えなかったのに今はその時では想像もつかない満面の笑みである

可愛い


「私はこの小説、[暗殺者ゴベル]の主人公ゴベルが大好きです!この主人公ゴベルは…


そこから変わらず満面の笑みで数十分にも渡って小説のあらすじを説明してきた。しかし、可愛いかったから聞いてた

どうやら主人公ゴベルって暗殺者は予想外で誰にも気付かずに一撃で殺すというのが流儀らしく少女はそれに強く憧れて真似ているらしい。

それによって魂の声が聞こえるため俺が気づかずともこの悪魔に気づかれた時点で撤退していたというわけだ


……それで、ゴベルの決め台詞は「全てはこの一撃のためにあった」…カッコ良すぎませんか⁈ですから私もゴベルのように一撃のためなら全てを懸けます!」


なるほど、理解しても理解不能だ


「つまり君はターゲットに気付かれる限りは殺さないということか?」

「はい。私の流儀は揺るぎません」


じゃあ今回は出来なくとも今日見逃して適当に過ごしてたらそのうち悪魔を祓ってくれるってことか


「よし!じゃあ今日は帰りなさい」

「えっ、いいんですか?私は貴方を殺そうとしていたのですよ?」

「全然!むしろ殺しに来てください」


『おい!見逃したらまたコイツは俺を狙いに来るぞ』

「知るかよ!お前は悪魔なんだから祓われる運命なんだよ!そうだなぁ今夜にはお別れかもな。結構楽しかったぜ戦火の悪魔さんよぉ」


俺は心の底から高揚した!だってクソ女神が寄越したペナルティから解放されるんだぞ?悪魔が死んでからは平穏に暮らそう。そうだなぁ海の見えるところに家を建てよう、そして日光を浴びながら一日中ゴロゴロするんだ


『貴様…!今まで恩を忘れたのか⁈』


おいおい、死者がなんか言ってるぜ


「あ、ありがとうございます…名前はウルイ、歳は18です」

「ウルイちゃんか。いい名前だ」


ん?何だ?さっきから許してあげたというのに何やら少女は腑に落ちない様子だ

すると少女は軽くお辞儀をしてその場を去ろうとする


「今回のことは感謝しますが、私は諦めません。また貴方と悪魔の首を狙いますからね」

「はいはーい。じゃあまたね〜。……ちょっと待て今なんて言った?」

「それではまた。今夜にでも私の白イ炎で屠ってあげますよ悪魔憑きさん」


あれ?確かさっき「悪魔を祓う他に魂に棲みついているやつも祓う」って言ってたけど、その「やつ」って悪魔じゃなく悪魔憑き()のことだったのかー⁈


「ちょっと待て!」


俺の声は届かず、少女は暗闇に消えていった


マズイ…ワンチャン狙っていたが、向こうはガチの俺のハート狙っていたようだ


俺は柔らかい声でシカ君に言う


「………………シカくん。夜、お願いね…(護衛)」

『……………』


シカ君から返答は無かった





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