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童貞を笑う者は童貞に泣く

「よっと…」


ナンバは自警団から逃げるため屋根伝いを走っていた


「さて、次はどこに行こうk「見つけた!10万ニート!」


俺はナンバの頭上から飛び降り、首に手を伸ばした


「おっと」


ナンバはそれを軽やかに避ける


「おぉ、いい感じに力制御出来てんじゃない?」

『まぁまぁだな』


ナンバは突如現れた俺に動揺しながらも話しかけてきた


「君、自警団の人じゃないよね?何者?」


これがナンバって奴か…服装は色彩的で見たところ年は18か19といったところだな。多く見積もっても俺よりは年下だろう


「あぁ俺は一応冒険者で今はギルドから自警団の依頼を受けてお前の確保に協力している。…なぁなんでこんなするんだ?まだ若いのに」

「それは…」


ナンバは首を下に向け、何やら考え込んでいるような面持ちを見せた

何か事情があるのか?流石に俺も事情によっては10万は諦めるが…


「何か事情があるのk「俺を捕まえてみてから訊きな!」


ナンバは聞いてた通りの煽り口調で捨て台詞を吐きながら颯爽とその場から退散した

よし、もう情を挟むのはやめよう


「シカ、アイツ絶対捕らえるぞ!」

『当然!』


不思議と今、悪魔と一体になれた気がした


俺は足を踏み出し、屋根伝いに逃げるナンバの後を追う


だが、いくら悪魔と呼応しあった俺でも相手は数年あの強面自警団から逃げ延びた逃げのプロ。速さでは勝っていても屋根から屋根の軽やかな渡り、時には路地に入り他人の小競り合いの渦中を抜けるなど逃げの技術を惜しげもなく使ってくるナンバに俺は苦戦する。


「どうしたの〜?捕まえるんじゃなかったけ?」


こいつ…!


「あの自警団の依頼ってことは君も童貞でしょ?いや、顔見た時から分かったけどねw」


ナンバは逃げながら嘲笑し、挑発してくる

早くアイツをぶん殴りたい


その後約10分ほど俺たちの鬼ごっこは続いた







「ほら早く〜!距離が縮まってないよ〜?」


またもナンバは嘲笑う

もう俺は決意した!どうなってもアイツを捕らえて10万貰って自警団に引き渡す!


「おいシカ、もうお前の魔法を使うぞ」

『いいのか?お前が人前ではダメだって言ったんだろ』

「今回だけだ!今回だけ!なるべく小規模で」

『んー、分かった…』


悪魔は俺が自ら約束づけたことを破っていることに疑問持ちながらも了承した

まったく、悪魔がちょくちょく純粋さを出してくるな


ボォン!


俺は背中から炎を噴射し、一気にナンバとの距離を詰め、体を掴んだ


「なっ!」

「やっと捕まえたぞ!」


ガシャン


驚くナンバをそのままに俺は勢いのまま屋根に突撃した


「ぐへっ…」


愕然とするナンバに俺は両手を足で踏み止めた


「さて…どうしてくれようかな!」

「ま、まてこっちにも事情があるんだ…!君だってなんで俺がこんな事するか気になるだろ?」


コイツ、この期に及んでも上から目線か…!

だが俺もなりふり構わずボコボコにするほど心は死んでない


「……わかった。だが、縄で拘束はさせてもらう」

「わかったそれでいい」


俺は悩んだが、自警団に貰った縄でナンバの両手と両足を縛り上げた


するとナンバは屋根に腰掛け、何やら語り始めた


「…このネトリンゲは国家の兵隊たちはいるがその殆どが貴族の護衛に使われている。法務局もあるが、扱うのは大事件だけだ。だから小競り合いや夜の問題なんかは軽視されてる。ネトリンゲに一つだけあの自警団も動くのは昼間、それも殆どが女性問題だった…。俺はこの街が大好きだ!でも俺一人じゃどうにも出来ない…かといって兵を動かす権力なんてない……。だからあの自警団を挑発して俺を追わせるようにして、普段目の届かない街中の問題に目を向けて欲しくて…」


ナンバは顔を隠すように首を下に向け、その小さい唇を震わせて、瞼に一粒の涙を滲ませた


「そうか…お前はこの街のために…」

「はい…」


ナンバはその涙を人差し指で拾うとゆっくりと顔を上げた

そのまだ目が潤んでいる顔の動きに合わせて俺はナンバを静かに見つめ、正直な心のうちを明かした



「けど知らねーよ」



「へ?」


俺の返答に呆然としているナンバに俺はそのまま続けた


「お前が不審者と思われているのは事実だ!よってお前は少なくとも誰かに不安を与えている!それに街中の問題を解決したいなら他人を使うのでは無く、まず自分だけで動け!ただ自分に言い訳するガキが!そんなんじゃ社会に出てもブラック企業に就くだけだ!」


俺はナンバを担ぎ上げた


「な、何を…⁈」

「お前を法務局に引き渡す」


俺は先に見える大きな城らしきものに向かって足を踏み出す


「ちょ、ちょっと!」

「なんだ?まだ何かあるのか⁈」

「そっちは兵舎ですよ?法務局は逆!」


「……………」


「わ、わかってたし!お、お前を試したんだよ」


我ながら意味がわからない言い訳をしてしまった。これではさっきカッコづけたのが…!


俺は逆方向に走り直した

強張りつつ









俺は法務局の門番に事情を話してナンバを引き渡した。だが、その表情はまだ不満げだった


「おっさん。責任取れよ?俺がこの街を守ってたんだ、俺を退かすって事は代わりにおっさんがこの街を守れよ」


まったく、このイキリ野郎は…


「ガキ、この街の治安が心配になるのは分かるが、やり方が間違ってんだよ。お前はまだ18歳とかそこらだろ?人生のスタートを決める一番大事なところだ。これを機に決め直すんだな。あと、俺はまだおっさんと言われる歳じゃねー」


俺はそう言い残して法務局を後にした






あの後俺はまだナンバを探し回ってる自警団に法務局に引き渡したことを言った。女性の紹介をしてもらえないやら何やら勝手に引き渡したことに不満を言う奴は一部いたが、殆どの団員と親玉は称賛してくれた。

そして俺は親玉にその代わりと言っては何だが、これからは女性問題に固執し過ぎるのではなく、街の小さな問題にも目を向けて欲しいと頼んだ。すると親玉は「そんなもの随分と前からやっている」と笑いながら言い返した。どうやら親玉はナンバの騒動が起きてからそれを重視するようになってたらしく既に取り組んでいたらしい。だが、今回の俺の活躍によりもっと対応を強化するとのことだ。



ギルドの報告を終え、報酬も貰った俺はゆっくりとアパートに帰ってベッドに腰を掛けた


「ふー、今日は働いたなぁ」


俺は深くため息をついた


「そういえば背中から炎を噴射した時なんで俺の服は燃えなかったんだ?」

『俺の炎は生命力のあるものしか燃やせないからな。植物とか動物は燃やせるが、武器とか服は燃やせない。たぶん貴様自身が燃えなかったのは俺が魂内にいることで体とか脳が俺に合わせられ、耐性がついてるんだろう』

「へー、じゃあ言葉わかるようになったのもお前を宿してる影響ってことかもなぁ」


そして俺はいつも通り酒を口に流し込む





『おい‼︎』


突然のシカの叫び声と同時に俺も自分自身の危機に気づいた

それにより俺は反射的に屋根裏の穴から身を乗り出し、短剣(ダガー)を振り向ける銀髪少女の腕を掴む


なんで刃物なんて向けてくるんだ⁈ゆっくり酒ぐらい飲ませてくれ!





しかし、その子は可愛かった



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