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思いつきで行動すると後悔が多い気がする


俺は悪魔の要求でシャープ大蛇という人間の3倍くらいの大きさの蛇のモンスターの討伐クエストを受け、怯えながらも現地に着いてみたが…


シャァァァ


シャープ大蛇の威嚇をしながらこちらに牙を向ける。


「え?帰りたい」

『さぁ、いっちょやるか!』

「いっちょやるか!じゃあねーだろ!明らかに冒険者初日でやるクエストじゃねーだろうが!」

『あぁ?大丈夫だ。俺が付いてる』

「ついてねー!取り憑いてるだけだ!お前は中にいて痛くないかもしれないが、俺はあれを受けるんだぞ⁈わかってるのか⁈」

『わかってねーのはお前だ。黙って蛇のやつに右腕だけ伸ばしてろ』


シャァァァ


次の瞬間シャープ大蛇が唸らせてこちらに向かってきた。


「お、おい。本当に大丈夫なんだろうな?」

『いい加減分かれ。俺は戦火の悪魔、シカだ!』


すると俺の伸ばした右腕から放射線状に火炎を放たれ、大蛇は焼き倒れた


シャァ……


「………マジか」


俺は目の前の状況に唖然とした。


『フンっ!どうよ⁈』

「すげぇな。あの大蛇が火炎放射で一撃か…やっぱ悪魔って強いんだな」

『そうだ俺は戦火の悪魔、火魔シカ。もっと褒めていいぞ』

「ホントに凄い…これならどんなモンスターでも……ハッ‼︎」


待て、こいつの力が在れば冒険者で楽に金稼ぎできるんじゃね?


「よし、冒険者になろう」

 

テキトーにモンスター倒してギルドのアパートで暮らしつつ金貯めたら憧れの田舎暮らしだ。こいつの事はその時考えよ


俺はギルドに帰り、報告とクエスト報酬から冒険者登録をした







その夜…


「うめぇ!やっぱ仕事後の酒が一番(いっちゃん)美味い!」

『お前は右腕伸ばしただけじゃねーか』


あの後俺は冒険者特典の割引を使ってギルドが運営してるアパートの部屋で酒を飲んでいた。なんでもギルド自体の中に家賃無料の部屋があるらしいけど住めるのは上位の冒険者だけらしい。駆け出しの冒険者のだいたいは実家暮らしかギルド運営のアパート暮らしらしい。


「それにしても今回のクエスト報酬を受け取った時に気づいたが、50,000《《ニート》》ってなんだよ。この異世界にニートなんて言葉が無いのは承知だが、それにしても酷い金の単位だ。まるでニート5万人いるみたいだ」

『ニートってなんだ?』


悪魔は純粋な物言いで聞いてきた。俺は子供に下ネタを聞かれた母親の気持ちを少しだけ理解したような気がした


「ん〜と……それぞれ自分の領地を護る守り神のことだよ」

『神か、いつか戦ってみたいな』


悪魔はまるで夢を語る子供のように言った。どうやら悪魔は疑いというのを知らないらしい。今日転生した奴が守り神なんて知るはずないのになぁ


「……まぁ、そうだね」


俺は他人事のように言った。実際他人事だし、俺はクソ企業だが働いてたわけでニートでは無い。だが、正直会社でハードワークをしてたからニートに憧れはあった。まぁ、悪魔にはニートのことは黙っておこう。

それよりこの悪魔には異世界について聞きたいことが山ほどある。


「なぁ悪魔、この世界について教えてくれ。なんか魔神がいるみたいじゃん」


すると悪魔は雰囲気を変え、声のトーンを数段下げて話し始めた


『今この世界は魔神が絶対的な恐怖になっている。この街、ネトリンゲは比較的魔神がいる辺境の地アーレスとは離れいるため脅威を感じる事はないが…」


この街の名前ネトリンゲっていうのか、初めて知った


「ここより遥か南に位置するアルン山脈を越えればそこはまさに魔境。数多の精鋭冒険者が足を踏み入れたが帰ってきたものはいない』


なーんだ常に魔神の脅威に怯えて暮らしてんのかと思えばアルン山脈とやらに行かなければ割と安全なんだな

俺は安心すると酒をぐびっと飲み進める


「あ〜ぁ美味い!今日討伐クエストやったから明日は休もうぜ。宿代もあと二泊は出来そうだし」

『ふざけるなよ。当然明日も明後日もモンスターに俺の炎をぶち込みいくぞ』

「マジですか。まぁ金と8時間睡眠が取れるなら命も惜しくない。思ってた異世界生活とは正反対だが」

『ふんっ、貴様とは長い付き合いになりそうだ』


実際に見れたわけでは無いが声トーンや魂の感覚からその悪魔の笑い声はよくアニメや漫画である暗黒微笑だと確信した。

すげぇ、リアル暗黒微笑だ。やっぱカッケェなぁ


『そういえばまだ貴様の名を聞いてなかった。名はなんだ?』


暗黒微笑には暗黒微笑で返そう。自己紹介もそれっぽくして…


「ふんっ、俺は黒き業を背負い世と戦っていた人間。相馬(アイバ) 海生(カイセイ)だ」

『そうか。ならこれからカイセイと呼ぶことにするから貴様も俺を火魔(シカ)と呼べ』

「え?あっ…うんわかった」


シカのあっさりとした反応に俺は恥ずかしくなり、少しの酒を残して布団を被った








次の日…


俺はギルドのクエストボードを眺めていた


しかし、こうしてみると…外壁工事の補助に規定領地の森林伐採、要人の護衛とか…ギルドってモンスター討伐がメインなのかと思ったら何でも屋みたいな感じなんだなぁ


『あぁ、だから貴様が言っていた仕事の紹介所のハロワなんぞはこの世界に存在しない』


ハロワないのか。じゃあ何も持たないで転生した人とかはどうすんだろ。モンスター討伐以外の日払いはこの程度の報酬だから飯代抜いたら宿にも泊まれないし…ホームレスじゃん。


ん?


「なんだこれ」


雑用からモンスター討伐まで幅広いクエストが掲示板(ボード)に貼られているが、一つのクエストが俺の目を引いた。


「毎日予告状を出し、街を走り回る不審者の確保に協力してほしい。依頼者:基本自警団 条件:童貞であること 報酬:20,000ニート」


『不審者か…!それならぶっ倒してもいいよな⁈』

「目立つことはするなよ?」


いろいろとツッコミどころが多いのだが…まぁコイツもやるきになってるし、内容も気になるし、何より命の危険は無さそうなので俺はそのクエストを受諾した。条件にも当てはまってるし、問題は無いだろう。

俺らは受付嬢から教えられた自警団の事務所へ赴く





到着すると、事務所(そこ)はドラマなどの自警団のイメージにある荒くれ集団のボロい集会所みたいなのではなく、白を基調とした清潔感の外観だった。大きさや綺麗さは元いた世界でいうところの新館の公民館みたいだ


「まぁ、いってもここはファンタジーな世界だからな。荒くれ集団なんて元の世界のイメージが通用するわけないか」


俺は事務所の門を開けた


「すいませーん、ギルドから来たものなんですけど…」


俺は馬鹿でした。門の中には刺青坊主やモヒカンなどのアニメでよく見る如何にもな奴らが一斉にこちらに厳つい視線と怒号を向けてきました。トイレに行きたくなりました。


「あぁん⁈」


『あぁん⁈』


この悪魔はもっと大馬鹿でした。思いっきり外に出て殺す気満々です。俺がギリギリ魂内で抑えなければ終わっていました。


『なんで止めた⁈』


馬鹿かお前は!ポケ○ンの世界じゃねーんだよ!目と目が合っただけバトル始めんな!


「おいアンタ…」


奥に座っている親玉らしき人が如何にもな口調で聞いてきた。俺の本能が自然と動きを萎縮させる


「はい…」

「童貞か?」


「……はい?」


予想外の質問に俺は思わず訊き返してしまった


「童貞かって訊いてんだ!」

「はいィ!」


威圧感に押され、強く答えた


「…………」


「よし、ギルドからの仕事仲間だ。もてなせ」

「「「よっしゃぁぁぁ!!」」」

「へ?」


さっきまで冷たい視線を送っていた強面たちが歓喜の声を上げた

俺はそのギャップの極地みたいな光景に呆然としていた


「俺はグラルよろしくな」

「オイラはダイバン」

「俺様はオーザン。わからないことが有ればなんでも聞いてくれ」


わからないことしか無いんだが…


「じゃあオーザンさん、ギルドの掲示板に条件が童貞ってあったのですが…それは…」

「そりゃだって…一緒に仕事する以上仲間意識は大切だろ?」


仲間意識?どういう……まさか!こいつらこんなヤンキー面で全員‥⁈


「童貞なんですか?」


俺は目の前の強面たち1人ずつ訊いていくと全員当たり前のことかように答えた


「童貞です」

「はい」

「当然です」

「もちろん」

「基本です」


核心を突かれたからだろうか、全員敬語になった…


グラルさんが思い付いたかのように話し出した


「そうだ!アイツが現れるのはいつも夜だから昼間に俺らの仕事を見学して行った方がいいんじゃないか?」


まぁ確かにどんな仕事ぶりか見とかないとな。どうせ昼間やることなんてないしな


「まぁ仕事といいつつ私設の自警団だから給料なんてないけどな」







とある裏路地にて…


「おいテメェ何してんねんなぁ⁈」

「死ねや!」


それで自警団の見学に来たが、案内されたそこでは狂気的な目をした自警団に強姦していた男がボコボコにされていた


「あの、やり過ぎでは…」

「何言ってんだ、女性を強姦するなど非道の極みだろ!」


まぁ確かに…


「ごめんなさい!もうしませんから!」


強姦の男は先ほどからずっと泣き叫んで許しを乞うている


「わかったか!もう一度この街の女性に手を出そうものならこの倍の仕打ちを受けるものと思え!」

「はい…!もうしません…」


これで流石に強姦の男は懲りただろう。少々やり過ぎな気はするが…


「こ、これでもう大丈夫ですよ」


あれ?


自警団員が後ろで隠れていた被害女性に話しかけたが、さっきまで強姦の男をボコボコにしてた者とは思えないほどしどろもどろになっている。いくら強面でも女性関係ゼロの童貞の弊害はあるんだな


「え、あ…はい」


女性引いてんじゃねーか


「で、では…あ、安全なところにつ、連れて行ってあげろ」


もう1人の自警団員が挙動不審でしどろもどろになりながら女性を案内する


「は、はい。で、では…」


そう言うとその自警団員は急に女性を姫様抱っこをしだした


「ひ、ひゃっ、何を…」

「え、あ…すいません」


その自警団員はまたも、しどろもどろになりながら女性を恐る恐る下ろした


これ、もしかしてあれか?童貞が女性との距離感が分からず空回りするやつか…?


幸いにも俺は童貞だが、社会人経験があるので女性と話すぐらいなら日常的にやっていたのでそういったものはない。

裏を返せば俺が社会人経験で得たのはそれぐらいしかない…




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