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リヴルとアハートの旅行日記#1

 聖華歴836年 7月


「さてと、準備は出来たか?」


「バッチリなのですよ。」


 私、リヴル・ゾンネンシュタインとタカティン・モーントシュタインは、旅の支度を整え、シュタール邸を出ました。


「また暫く会えなくなるのね。」


 カトレアさんが寂しそうに言いました。


「なに、ほんの一年ほどだ。また用が済んだら戻って来る。」


「必ず……必ず帰って来て。でないと私……、貴方を探しに行きますから。」


「わかったわかった、そう怖い事を言うな。」


 後ろでディジーさんとダリアさんが苦笑いを浮かべています。


「リディア、しばらくお別れなのです。リヒトと仲良くするのですよ。」


「うん、リヴルも元気で。」


 私もリディア達と別れを済ませ、タカティンと一緒にシャーリアンの機兵駐機場へと向かいました。


 そこでタカティンは『ゼフュロス』、私は『マーチヘアⅡ』に乗り込みます。

 タカティンの乗るゼフュロスは、実は第3期LEVで機兵ではありません。


 タカティンの元の乗機であった第3期LEVワールウィンドⅢは諸事情によって損壊し、今は既にありません。

 その為、ベースキャンプのケイブ・セクター6に保管されていたこの機体を引っ張り出してきたのでした。


 そして私のマーチヘアⅡは、こちらも諸事情で損壊してしまった第4期LEVマーチヘアから人格AIを『普遍の幻装兵 フレッシル』に移植し、魔装兵化の改修を行ったものです。

 フレッシル自体はソキウスがケイブ・セクター7で回収した様々な物資のうちの一つで、それを改修して私に譲渡してくれたものなのです。


 どちらの機体にも低高度飛行が可能な噴射システムが搭載されているので、シャーリアンから十分に離れたら飛行によって移動する予定です。


 目指すは自由都市同盟、工業都市マギアディールです。


 *


 2日後、私達はマギアディールに到着しました。

 ずっと飛行すれば1日経たずに到着していたのですが、それを目撃されるわけにはいかず、途中からは約4時間かけて機体を歩かせました。


 到着してからは一休みして、リヴェルタ商会にやって来ました。


「2人とも久しぶり。」

「かいちょが首を長くしてお待ちかねだよ。」


 ロビーで2人の女性、ロアさんとミーシャさんが出迎えてくれました。

 お二人は本名ロア・エリスライト、ミーシャ・エリスライトという容姿が瓜二つの双子で、カトレアさん達と同じく同型のアンドロイド姉妹なのです。

 外見的差異をつけるためか、ロアさんは活発な印象を与えるポニーテール、ミーシャさんは床に届きそうなほど長い髪を三つ編みに結っています。


「やれやれ、約束の時間通りなのだがな。」


「さあさあ、奥に行った行った。」


 会長室の扉をノックすると。


『開いてますよ〜。』


 弾んだ声で返事がありました。


「失礼する。……これは気が早すぎないか?」


 私達が会長室に入ると、このリヴェルタ商会の会長であるアハートさんが出迎えてくれました。

 でもその格好は、めかし込んだ服装に大きなトランクとリュックサック、すでに何処かへ出かける気満々の余所行き仕様でした。


「だって、待ち切れなかったんですもの。」


 アハートさんの表情は浮き浮きしたもので、今にも飛び出して行ってしまいそうです。


「気が早るのも分かるが、ちゃんと引き継ぎはしてもらわんと困るぞ。」


「フッフッフ、それならご心配無く。ちゃんとこの日の為に全ての業務、伝達事項、懸念事項、新規案件に継続案件、途中経過にリヴェルタ商会全社員の個人情報まで纏めて圧縮データにしてあります!」


 アハートさんがドヤ顔で胸を張ります。

 タカティンは呆れ顔で溜息一つ。


「確かにデータは受け取った。確認するから後5分だけ待て。」


「分かりました、じゃあお茶でも飲みましょうか。2人とも掛けてください。」


 そう言って、私達は3人でソファに座り、ロアさんとミーシャさんが運んできたお茶を飲みます。

 程なくして。


「…………良し、どうやら抜けは無いようだな。」


「はぁぁ〜、これで束の間とは言え、私は自由の身ですね。いざ、まだ見ぬ新世界。」


「おっと、ちょっと待て。」


 立ち上がって部屋を出ようとしたアハートさんを、タカティンが引き留めました。


「なんですか? まだなにかあるんですか? もうこれ以上待てませんよ?」


「待て待て、そう急くな。実はお前の小旅行にリヴルも同行させてもらいたいのだ。」


「ほへ? リヴルさんも一緒に、ですか?」


「そうなのです。ご一緒させて欲しいのですよ。」


 アハートさんはこの申し出に数秒だけ考えて。


「分かりました、一人旅より二人旅の方が楽しいかもしれませんね。それではリヴルさんもご一緒しましょう。」


「それではよろしくお願いしますなのです。」


 こうして、私とアハートさんの一年近い二人旅が始まったのです。


 ……なお、マギアディールから出航する陸上客船の出発直前に、ミーシャさんからアハートさんへの悲鳴に近いデータリンク通信が入ったのですが、アハートさんは。


「頑張れ。」


 と笑顔で返したのでした。

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