疑惑
「では少し出掛けてくる。」
そう言ってタカティンは出て行きました。
「……最近、やけに一人で出かける事が多いな。」
「………」
「まぁ四六時中カトレアとリヴルに引っ付かれていては、そういう気分にもなるのではなくて?」
「……そんな事は、無い……はずです……多分。」
ディジーとダリアの言葉に、カトレアは少し沈む。
「リヴルもずっとベタベタしているわけではないのですよ。」
リヴルも反論をする。
「そういや、この前タカティンが女と話してるのをリヒトが見たって言ってたっけな…うわ。」
「「「ディジー、その話詳しく。」」」
一瞬でカトレアとダリアとリヴルに詰め寄られたディジーは引いてしまった。
*
「あの店ですわね。……あぁ居ましたわ、テラス席で隠れる気もない感じですわ。」
カフェのテラス席に座るタカティンを発見し、四人は注意深く観察する。
「あ、誰か来たのですよ。……むぅ、知らない女の人なのです。」
タカティンは女性を手招きし、女性も同じテーブルの席に着く。
「……本当に、浮気……?」
「流石、堂々としてやがるな。後ろめたいとこなんて何も無いってか。」
遠くからタカティンの様子を伺うリヴルと三姉妹。
リヴルは頬を膨らませ、カトレアは青ざめた表情、ディジーは少し面白そうに、ダリアはこのメンツの反応に呆れていた。
ただし、四人の中には共通した疑惑が渦巻いている。
「それにしても、データリンクも切っているところからして、私達に知られたく無い行動をしてるのは明白ですわね。一体どんな話をしているのやら。……カトレア、まだ動くのは早いですわ。抑えて抑えて。」
拳銃を手に、今にも突撃をしそうなカトレアをダリアが宥める。
リヴルの方はディジーが押さえている、物理的に。
少し様子を見ていると、さらにもう一人が現れてテラス席に着く。
今度は男性だ。
何か思っていたのと違う展開の予感。
「まさか、一人の女を取り合って……てな感じでも無いか。」
見知らぬ男性と女性はタカティンとしばし談笑した後、お互いに手を取って立ち上がり、タカティンに一礼して去って行った。
タカティンも席を立って二人に手を振りつつ見送り、彼らが居なくなると再び席に着いて店員に注文をしていた。
「ちょっと行ってみましょうか。」
ダリアの言葉に頷いて、四人は店に向かった。
「相席、宜しいかしら?」
「……好きにしたまえ。」
まずはダリアがタカティンに声をかける。
タカティンは訝しげに四人を見回して、それでも席に着くよう促す。
「覗きはあまり良い趣味とは言えんな。まったく、リヴルまで付き合うとは。」
「なんだよ、知ってたのか。」
「タカティン、さっきの女性は誰なのです?」
「どんな関係だったの? 答えて。」
リヴルとカトレアの問いに、タカティンはふぅっと溜息をついた。
「さっきの二人は私の露店の客だ。たまたま同じ本を手に取った事がきっかけでお互いに恋に落ちたそうでな。これも何かの縁と、それぞれの相談に乗っていたのだ。おかげで良い観察が出来たわけだが。」
「まぁ、朴念仁の貴方が恋愛相談だなんて珍しい。」
「…じゃあ、浮気じゃないのね?」
「浮気だと? そんな恐ろしい事出来ると思っているのか?」
「それなら良かったのですよ。」
カトレアリヴルもほっとした表情になる。
ただディジーは些かつまらなさそうではある。
「そういう事でしたら私にも相談して欲しかったですわね。そうすれば余計な心配せずに済みましたのに。」
「お前は面白がってグイグイと首を突っ込むだろう? 下手をすれば二人に変な勘違いをさせかねん。」
「まぁ心外ですこと。」
ダリアはさも心外だという顔をして、タカティンを睨め付ける。
その光景が面白かったのか、ディジーは小さく吹いた。
「ほっとしたらお腹が空いてきたのです。」
「まぁ良い、お前達も何か頼みなさい。ここは私が持とう。」
「ではリヴルはパンケーキが食べたいのです。」
結局、五人は思い思いに注文をして、食事をしながら会話に花を咲かせたのである。





