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 聖華暦835年 1月末 聖王国領シャーリアン


「あ、あの、私、貴女の事がずっと好きでした。私と…、私と付き合ってください!」


 薄い茶色のセミロングをした17〜8くらいの可愛い子が、アタシに告白をして来た。

 彼女は数いる女友達の一人で、交友期間は3年くらいになるかな。

 今の今までにアタシは友人としか思ってなかった、けれども彼女は違ったらしい。


 ものすごく勇気を振り絞って、すごく必死なのはわかる。

 ただ……、この半年でこれで三人目なんだよな、女性から告白されたのは。


 アタシ、ディジー・シュタールは気まずそうに頭を掻く。


「あー、その、なんだ……、気持ちは、素直に嬉しい。けどな、アタシは同性とお付き合いする気は無いんだ。……ごめんな。」


 アタシの拒絶の返事を聞いて、彼女は両目にいっぱいの涙を溜めて、それでも泣き出さずにアタシになおも聞いてきた。


「それじゃ、誰か……誰か好きな殿方がいるんですか?」


「好きな殿方か……、まぁ、いる。」


 必死に食い下がる彼女を突き放す為、あえて嘘をついた。


「誰なんですか、教えてください。そうしたら、私も諦めます。」


 困ったなぁ、ほんとはそんなヤツいないんだけどなぁ。

 身代わりにできて実害がほとんどないヤツ……。


 一人だけいるな。


「アタシの好きなヤツはさぁ……」



「……ワリぃけど、そういうわけでよろ。」


 アタシは義理の兄になる予定の男に事情を話し、軽く頭を下げた。


「阿保かお前は! 例え咄嗟の事とはいえ、なんでそんな適当な嘘をついたんだ!」


 タカティンの思いの外きつい物言いに、アタシは顔を逸らした。


「あーいやぁ、ほら、他に思いつかなかったし、姉の婚約者に横恋慕してるって言っときゃ、他に寄ってくるやつもいなくなるかなぁって。」


「まったく、どこで変に拗らせる者が出てくるかもわからんのだぞ。付き合わないというのなら、誠意を持って断る事がせめてもの礼儀だろうに。」


「わかってる、わかってるって、アタシも悪かったと思ってるんだって。」


 ふぅ、とタカティンがため息をついた。


「カトレアやダリア、リヴルにはこの事は?」


「いや、まだ。」


「ならば言わない事だ。余計にややこしい事になる。嘘だとしてもな。」


 なぜか容易に想像できた。


「そうする。」


 アタシもため息をついた。


 *


 やがて、アタシのついた小さな嘘で事件が起きた。


 この間、アタシに告白してきた彼女がタカティンに詰め寄ったのだ。……ナイフを持って。


 その際、彼女はタカティンにこう言ったそうだ。


「貴方さえ、いなかったら」と。


 もちろん、タカティンが大人しく刺されるはずも無く、あっさりと彼女を取り押え、ナイフを取り上げた。

 あとは泣きじゃくる彼女をタカティンとリヴルが二人で宥めすかして事なきを得た。


 さらにその後、事の次第がバレて、アタシはカトレアからこっぴどく説教を喰らう羽目になっちまった。


 ………もう好きな人がいるとか、そんな嘘をつくのは金輪際やめようと、アタシは誓った……。

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