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第28話 出撃

目を覚ますと、そこはシリンダーの中だった。

すぐに手を動かして動作を確認する。誤差無し。

起き上がり、感触を確認する。感覚の差違無し。

ステータスチェック、異常無し(オールクリア)


「リヴル?」


辺りを見回すが、あの子がいない。

基地のシステムにアクセス。あの子の居場所を探す。


……………


すでにマルドゥクを持ち出し、一人で出撃してしまっていた。

アイツめ、予想通りとはいえ、勝手に動くなと何時も言っているのに。

出撃したのは33分前、今からなら、まだ間に合う。


私はすぐに基地のシステムを立ち上げ、出撃準備に取り掛かる。

12分で4機の機体が出撃可能となる。その間にパイロットスーツに着替え、ハンガーへと移動する。


ハンガーに到着した時には、三体の無人LEV[シルト]と、一体の[フレッシル]が待機モードで鎮座していた。

私は[フレッシル]に乗り込む。


[シルト]は第4期LEVをベースに製造された無人機で、マルドゥクの直掩機だ。

ホスト機からの司令で統率され、集団で運用される。

リヴルは焦って出撃したのだろう。本来ならばコイツらを伴って行けば良かったのだが…


そして、[フレッシル]…

この機体は所謂、幻装兵に分類される機体だ。これは本来は旧大戦時の()()()()()()()であり、旧人類の基地であるここに、あるはずの無い代物だ。

だが、旧大戦のおりに[フレッシル]は少数ながら纏まった数が鹵獲されており、これはその一体と言う訳だ。

WARESによって改修を施されたこの機体は便宜上、[テューポーンユニット装備型]と登録されている。

この機体はテューポーンユニットという複合装備……高速振動剣・実体剣型テトラビット・ビームサーベル発振機構・フライトユニット・噴射システムの集合体……のおかげで高速飛行が可能となっている。これならば追いつく事が出来る。


操縦槽に座り、操縦桿からエーテルを機体へと流し込む。魔導炉に息吹が吹き込まれ、永い眠りから機体が目を覚ます。


「あの子を決して死なせたりはしない。」


言葉に出して目的を確認する。

私の存在意義を消させたりなどしない。

この身体を再び失い、存在が消える事になったとしても…


「オペレーティング・ジェミニ、スタンバイ。」


『オペレーティング・ジェミニ』とはアンドロイド専用の機体制御補助システムの事だ。機体の人格AIに一時的にアンドロイドの人格データを上書き(コピー)し、データリンクで同期することで機体と一体となり、反応速度が大幅に向上する。


『YES、Copy start……OK、Data link……OK。』


移動カタパルトで基地表層の滑走路へと全機移動し、すでに日の落ちた空を睨む。


「出撃する!」


テューポーンユニットの噴射システムが蒼炎を棚引かせ機体を押し上げる。

風を切るように空中へ舞い上がり、南へ進路を取る。三機のシルトも私に追従する。

4機の機体が連なって空を切る。


間に合え、間に合え、間に合え…


私は自分がこれまでで感じた事が無いほどに焦れている事を自覚した。

この機体は速い。第4期LEVと遜色無い程に…

それでも速く、もっと速く、もっともっと速く…


落ち着け、今焦れていては冷静な判断が出来なくなる。


今はただ、最短ルートで移動するのみ。

途中、ノルド王国上空を掠める事になるが、それを気にしている暇など無い。

東端を掠めて一気に突っ切る。


速く、速く、速く…


もうすぐ戦域に到着する。恐らく大半の魔獣はマルドゥクだけで片付いているだろう。

だが、その後ろには大型魔獣(サルガタナス)が迫っている筈だ。


戦域突入まで後5分。

あと少し。


戦域突入まで後3分。

ようやく見えてきた。


後2分。

眼下には死屍累々たる魔獣の死骸、残骸。


レーダーに大型個体の反応が二つ。

アレだ、見つけた。


後1分。

マルドゥクが擱座しており、大型魔獣がすぐ目の前へ迫っている。

サルガタナスには魔導障壁を展開している反応がある。

まずはアレを取り払わねば。


「全機散開!大型個体を三方から囲んで攻撃開始‼︎」


『『『YES』』』


三機のシルトは即座に散開、サルガタナスへ向けて一気に加速する。

私もマルドゥクとサルガタナスの間に割って入るべく、更に速度を上げる。


シルト三機が取り囲むと同時に、超高温焼夷榴弾砲を斉射する。

この兵器は魔導障壁を取り除く為に開発された特殊弾頭だ。

単純に超高温で長時間燃え続ける液体燃料を用いた焼夷弾であり、魔導障壁に纏わり付いて燃え続ける事で魔導障壁が耐え切れずに消滅する、と言う理屈で作られた試作品だ。


実際には実戦で使われなかった代物であるので、デカブツの魔導障壁にどれ程効果があるかは未知数だ。

そんな物にも頼らざるを得ない状況だったが、存外、捨てた物でも無かったようだ。


サルガタナスの魔導障壁が消滅し、シルト三機がエーテリックライフルで攻撃を加え始める。


サルガタナスの分厚く硬い外殻も、高エネルギービームには耐えられず貫通している。

サルガタナスが堪らずジリジリと後退る。


私はそのままマルドゥクへの注意を逸らす為に、サルガタナスの前へと躍り出た。

そして通信機を立ち上げ、マルドゥクへと回線を繋いだ。

モニターにマーチヘアのコクピットの様子が映る。

リヴルは……無事だ。


「まだ諦めるな、リヴル!」

○幻装兵

旧大戦時に製造された科学と魔法が交差した機兵の事。聖華暦800年代の最新鋭機兵を遥かに凌駕する性能と、魔導障壁によりLEVに対して優位性を持つ。


○魔導障壁

幻装兵に搭載されている防御装備。実体弾、エネルギー弾問わず射撃兵装を無力化する。

稀に生体でこの機能を有した魔獣が存在する。


○テューポーン・ユニット

第5期LEV用の装備としてWARESによって開発された複合装備。

噴射システム・姿勢制御スラスター・高速振動剣・ブレードビット・ビームサーベル発振器を備える。

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