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猫耳少女ミィナの冒険  作者: もつわた
2/2

2、ミィナと初めての依頼

「違うんですよ」


「……一応聞こうか。何が違うんだい?」


「ケモナーって職業になったので、スキルを試したかったんです」


「ちゃんとそう言えばいいじゃないか」


「そう言ったら逃げられると思いました」


「それなら仕方ない……とはならないけどもね」


 変態さんもといユウさんと私は事情聴取を受けていた。兵士さんのまたかって顔が印象深い。


 ユウさんは既に一晩牢屋で過ごすことが決定しているので、一人で宿を取るのも効率が悪いかと思って私も詰所で過ごすことにした。


 ついでにこれからの話とかも出来るからいい考えじゃないだろうか?


「ううっ……目の前にケモミミ天使がいるのに触れないなんて拷問だ……」


 ユウさんにとっては拷問になってしまったみたいだ。それはそれでいいか。


「ぼくは隣の部屋にいるから、何かあったらすぐに叫ぶんだよ」


「分かりましたにゃ」




「……せめてフードを取って欲しい」


「仕方ないにゃあ」


 ちょっと可哀想なのでフードを取ってあげる。息を荒くして耳を凝視されるぐらいなら大丈夫だ。突然触られたりしなければ。


「そうだ、しっぽはあるのか?」


「あるけど、今の服じゃ出せないにゃ」


「残念だな。そもそも、どうして隠してるんだ? 可愛いのに。可愛いのに!!」


「うわ……。ええと、獣人のことを良く思わない人間がこの世には少なからずいるのにゃ」


「なんだと!? そいつらの気は確かか!?」


 まずユウさんの気は確かか問いただしたい。


「この町にはそんな人いないって言われたけど、念の為隠してるにゃ」


「そうか……いつか俺が獣人を迫害する人間を全員駆除してやるからな」


「本当にやりそうだから勘弁して欲しいにゃ。それに獣人だって人間を迫害する奴もいるからお互い様なのにゃ」


 人類は愚かなものだ、とはおじいちゃんの弁だ。本当にその通りだと私も思う。


「それで、これからの話にゃ。なんか流れで同じパーティーになったことは私はまだ納得してないけどそれはともかく二人じゃ冒険に出るのは心もとないにゃ」


「まあ、いざとなれば敵は俺が殴り倒すが」


「それにしたって限度はあるにゃ。安全に冒険するためにはせめて三人、欲を言えば四人は欲しいにゃけど……」


 しかし、それには問題がいくつかある。


「フリーの冒険者っていうのがそもそもほとんどいないにゃ。みんなすぐにパーティーを組んじゃうから」


「俺達が誰かに入れてもらうのはどうだ?」


「ケモナーなんて意味不明な職業の初心者を入れたいと思う人はいないと思うにゃ」


「そうだな。良く考えればミィナが俺以外のものになるのは耐えられん」


「うん、ユウさんのものでもないにゃ?」


 これを踏まえて、私達が人を募集する方がまだ期待はあるんじゃないかと思う。……まともな人が来るかは分からないけど、すでに一人まともじゃないのがいるから多分大丈夫だ。


「何か失礼なことを考えているな?」


「まず私の耳から目を離すにゃ」


「それはできない。そうだな、明日はパーティー募集にするか」


「それがいいにゃ」




 翌日、朝早くから私達は起きて冒険者ギルドに向かった。パーティーの募集の他に依頼をこなさなければ日銭すらない事に気づいたのだ。


 ごはんまで恵んでくれた兵士さんには感謝してもしきれない。


 Gランクの依頼はほとんどが採集か手伝いの依頼だったので、二人でも容易にこなせそうだ。


「募集要項か、"獣人のみ"と……」


「やめろにゃ、犠牲になるのは私一人で十分にゃ!」


「犠牲とはなんだ、俺はケモナーなんだから獣人の方がいいじゃないか!」


「まだ見ぬいたいけな獣人達の貞操の方が大事にゃ! ほら、書き直して!」


「分かったよ……そういや、なんで俺ここの文字普通に書けるんだろうな。ご都合主義?」


「なにか言ったにゃ?」


「いや、こっちの話だ。ほら、これでどうだ」




ーーーーーーーーーーーー

パーティーメンバー募集


  人探しています


当方現在二人

・Lv1ケモナー 人間男

・Lv1軽業師  獣人女


興味のある方は受付まで

ーーーーーーーーーーーー




「まあ、いいんじゃないかにゃ」


「よし、提出するぞ。依頼はこの採集依頼にするのか」


「うん、一度外でスキルを一通り試した方がいいと思うにゃ」


「なるほど、その通りだな」


 受付に募集の紙と受ける依頼書を提出して、私達の記念すべき初依頼が始まる。内容は薬草採集だ。


 目標は、スキルの確認と体を動かしてみること。私は職業補正があるので感覚が変わっているのだ。


 町に入る時とは別の扉から町の外に出ると、来る時も見た草原が私達を出迎えた。冒険の始まりだ! 内容は薬草採集だけど。




 軽業師の初期スキルは二つ。高く跳ぶスキルと、着地の衝撃を緩和するスキルだ。


「みててにゃーっ」


「うむ、見てるぞ」


「ていっ……おおお!」


 スキルを使って思い切り跳んだら、冒険者になる前の三倍以上の高さまで上がった。それに、体が羽みたいに軽く動く。


「凄いな、十メートルぐらいいったか?」


 空中で体勢を整えて、足から着地する。着地の衝撃もほとんど感じなかった。とても楽しい。


「あははは、楽しいにゃ!」


「可愛いな……持って帰りたい」


「にゃっ」


 調子に乗って飛び跳ねていたらユウさんから不穏な気配を感じたので、思わず話を変えた。


「ほ、ほらケモナーはどんなスキルが使えるのにゃ?」


「モフモフすることで能力を上げるスキルだ」


「え?」


「モフモフすることで能力を上げるスキルだ」


「じゃ、私は薬草採集に行ってくるにゃ」


「急がなくても薬草は逃げないぞ」


 くっ、力が強い。能力値おばけめ……


「ユウさんの触り方変態みたいで嫌にゃー!」


「分かった、頭だけにするから」


「……まあ、それなら」


 問答無用で触られるよりはましなので、観念して頭を差し出す。フードも外されて、何かいけないことをされている気分になってくる。



 さわさわ。ふにふに。



 ……改めてゆっくり撫でられると意外と心地良い。大きくて暖かい手が的確に気持ちいいところを撫でてくれている。


「ふにゃあ……ごろごろ……」


「おっ、ここが良いのか。うりうり」


「んー」


「はは、気持ち良さそうだな。……これ以上やると怒られるか」


 手が離れていった。いいところだったのに……


「どうだ? 強化されてる感じはあるか?」


「にゃっ、そうにゃね!」


 あんまり気持ちよかったので危うくスキルのことを忘れかけていた。そんなのがばれたら変態に養分を与えることになってしまう。


 スキルは問題無く発動しているみたいだ。体がさらに軽くなった気がするし、実際さっきよりも高く跳べた。


「十五メートルってとこだな。強化幅は大きそうだ」


「でも、毎回あれやられるのは私の身が持たないにゃ」


「そんなに嫌だったか? すまん。本当は一撫でで発動できるんだ」


 それは残念……違う、良かった。せ、戦闘中に時間がかかると危ないからね。別に残念とは思っていない。


「スキルはそれだけにゃ?」


「ああいや、もう一つあるんだが……」


「何か問題あるにゃ?」


「……いや、一回やってみるか。俺と目を合わせてくれ」


 何か歯切れが悪い。目を合わせるだけならさっきのよりも簡単なんじゃないだろうか?


 そう考えていると、不意に頭の中に声が響いた。


『あー、あー。ミィナ、聞こえるか?』


「にゃっ!? ユウさん、喋ってる?」


『ああ、頭の中でミィナに話しかけている。ミィナからも何か返して欲しい』


「あ、頭の中で……『こんな感じにゃ?』


『そうだ、ちゃんとできてるな。これで離れた所や声が届かない場所でも話すことができるみたいだ。便利だろ』


『おお……ケモナー、意外と侮れないにゃ』


「(しかし、俺のことを信頼してくれてなければ使えないはずなんだが……まさか成功するとはな)」


『ん? 何か言ったにゃ?』


『いや、何も。折角だし、このまま二手に分かれて薬草採集して来るか』


『それはいい考えにゃ、早速行くにゃ!』




 ユウさんとお話しながらの薬草採集は、日が傾く前に終わった。悔しいけど一人で歩いてた時よりよっぽど楽しい。


 どうやら、遠くでも話せるスキルは一度繋げば次からは私から繋ぐこともできるようだ。ケモナー、腐ってもレア職業である。とても便利。


 ただ誰彼構わず繋げてたら混乱しそうだけど大丈夫なのだろうか?


「薬草採集、終わりましたにゃ」


「はい、量も十分ですね。初依頼達成です、おめでとうございます」


「やったな、ミィナ」


「やったにゃ!」


「ところで、お二人のパーティーに入れて欲しいという方が見えていますよ」


「にゃっ」


「おお」


 受付の人の指す方を見ると、テーブルに私と同い年ぐらいの女の子が座っていた。こちらを見て笑って手を振っている。


 見た感じいい子そうだし、ぜひパーティーに入って貰いたいと私は思った。ユウさんは……



『ケモミミじゃない……』


『その言葉絶対口に出すにゃよ!?』

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