マッチング売りの少女
Happy Halloween♪
むかしむかし、寒い夜のことでした。
「マッチング……マッチングはいりませんか……?」
一人の少女が道行く人々に、か細いながならも懸命に声を掛けておりました。
人々は、そんな少女を気に止めるでも無く、それぞれが持つ家へと向かっているのでした。
「あの……」
ふと少女が声を掛けた太めの中年男性。手には封を開けたポテチと、飲みかけのコーラが握られていました。
「マッチング……しませんか?」
少女がマッチに一つ火を付けると、暖かい小さな光が、素朴で清楚な女性を映し出しました。
「あなたにはこちらの女性がお似合いです」
「なんと可愛らしい……!!」
中年男性は、紹介された女性をいたく気に入り、直ぐさま会うことにしました。少女の懐には紹介料500円が入ります。
「あのぅ……」
少女は毛髪が心許ない青年に声を掛けました。
「マッチング……しませんか?」
青年は「ふっ……」と少し諦めたような笑いを返しました。しかし、少女がマッチに火を付けると、気の強そうな太ったオバサンが映し出されました。
「見た目では分からない、あなたの内面を見てくれる素敵な方ですよ」
「本当かい? ならば嬉しいね」
青年は、寡兵な髪の毛を撫で、紹介されたオバサンの下へと向かいました。少女の懐には紹介料500円が入ります。
「マッチングしませんか?」
少女はダンディな紳士に声を掛けました。
「うん? 私には先立たれたワイフがおります故……」
少女がマッチに火を付けると、そこにはしたたかに微笑む少女の姿がありました。
「私とマッチングしましょ♡」
「……?」
少女が紳士の腕に寄りかかると、物陰からガムを噛んだ警察官が現れました。
「ピピーッ!! 青少年健全育成なんたらかんたら条例違反で逮捕する!!」
紳士は捕まりました。
そして、少女の懐には、こっそり紳士からかすめ取った財布が入ります。