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 滅多にしない外出を終え、牛車を降りて居室に戻ると、この邸の主のような顔で寛ぐ老成の坊主がいた。


 出家しているため色合いこそ大人しいが、豪華な刺繍を施した袈裟や上等な絹を使用した法衣など、一介の僧侶というには随分賑々しい装いである。


「この寒い中どちらにお出掛けでしたのかな?我が君。」


 肥えた手を火桶にかざしながら、目線すら寄越さず気だるげに問うてくる坊主。


「伯父上、来ていたのですか…。お互いに俗世を離れたのだからもうそのように呼ばないでください。」


 お互いに(・・・・)の部分に毒を混ぜて返すが、坊主はピクリと片眉だけで反応し、何事も無かったように傍らの酒を仰ぐ。


 生臭坊主め…。


 口から出かかった悪態を何とか飲み下す。

 俗世を離れたというのに、富や権力にいつまでも執着しつづける伯父。

 かつては右大臣まで登りつめたが政権争いに敗れ、宮中から摘み出されるように出家をしたこの男を、世の人々は高倉入道と呼んでいる。


「何を仰る我が君。あなたも儂も、この侘しい姿は仮のもの…。今は臥して機が熟するのを待っているにすぎないのですよ。」


 酒で湿った口許を陰湿に持ち上げる様は死人に(たかる)(うじ)のように醜悪だ。


 そして、集られている死人とは正に私の事だな…。


 我ながら見事な例えだと苦笑いが浮かぶ。

 その嗤いを、同調と取ったのか、蛆はさらに醜く笑う。


 何を企んでいるか知らないが、集るなら好きなだけ集ればいい…。



 どんなに喰い荒らされたところで、あの日既に死んだ私は物言わず土に還るのを待つだけなのだから…。


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