一人と一匹
仕事の都合で更新止まってましたが、ウィルスのあれやこれで自宅待機になったのでチョロチョロ更新出来そうです。
止まっててすいません。気長によろしくお願いします。
大変だけど、頑張りましょうね。
ステラは3年前の冬に両親を亡くした。
魔物に襲われたのだ。
二人はステラ同様、魔術師であった。
魔術師は国に仕える身、魔物討伐の招集が掛かれば無条件で駆り出される。
その分無事帰還すると充分な報酬を貰えた。
この家もそうして二人が獲得した報酬で購入した家だった。
そんな家に、ステラは一人で暮らしている。
親戚の家へ身を寄せることなく、一人でだ。
というのもステラの両親はほぼ駆け落ち状態で家を出たらしく、ステラが産まれてから一度も実家へ帰ることはなかった為、ステラは祖父母の顔を1度も見た事がなかった。
祖父母さえ分からないのに、親戚らしい親戚が身近に居るはずもなく、一人残されたステラの選択肢は3つだった。
1つは、協会に身を寄せること
親がいない子、もしくは親を亡くした15歳以下の子供たちが集っている、言わば養護施設のような場所だった。
しかしそこへ入るとなると既に入学していた魔術学校を辞めねばならない。それだけは絶対に嫌だったため、ステラはこの選択肢を真っ先に却下した。
2つめは、魔法学校の寮に入ること
この案は中々魅力的だった。学校を辞めなくていい上、未成年の間は学校側が保護者代わりになってくれるというものだ。
既に入学している生徒にしか適用されない、特例案とも言える。
入学する子供の親は魔術師であることが多いため、危険と隣り合わせの職であることを考慮されているのだろう。
だがステラはこれも却下した。
学校の寮に入る、それはつまり両親と暮らした家を捨てなければいけないという事になるからだ。
当たり前だが、学校は家の管理までは行ってはくれない。
その上寮に入ると厳しい制限が掛けられる。外出する際には必ず学校側へ申告せねばならず、門限を破ると罰が与えられ、最悪は退学のケースも珍しくないのである。ステラは話を聞いただけで自分には無理だと思ってしまった。
3つめは、一人で暮らすこと
子供一人では酷かもしれないが、幸いステラにはこの家があった。住むところには困らない。
また一度入学した魔法学校からは、成績がめっぽう酷くない限り奨学金が受けられるという。学費はそれを活用しようと思っていた。
両親は国のために亡くなったということで殉死扱いとなっており、国からはお金が支払われた。一年に3回ほど恩給もある。
恐らく自分が働けるようになるまではやっていけるだろう、それぐらいの額だった。
もちろん当時小さかったステラにこれほどまでの詳細な事情は分からない。
実際説明されたのは大まかな内容だけ。
ステラがわかる範囲のものだ。
もっとも大変と思われる選択をステラは選んだ。一生懸命考え、周りの大人からの反対を押し切った結果、頑なに曲げないステラの意志の強さにとうとう大人たちは『様子をみよう』と折れてくれた。
こうして、ステラは二人が残してくれた財産で、一人生きていこうと決めたのだった。
---- ジリリリリリリ
目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。
「…ん、…」
ステラはゴロンと寝返りをうった。
---- ジリリリリリリ
「ん、ぅぅ~」
なり止むはずもない目覚ましの煩さに耳を塞ぐ。
---- ジリリリリリリ
「んー…」
手のひら越しに聞こえるそれへ、ようやく観念して腕を伸ばそうとした時だった。
「っるせー!」
ベシンッ!
---- ガシャン!
「はっ」
何かが壊れるような音で目が覚めた。
ステラは慌てて飛び起きる。
枕元にあったはずのそれは、白く小さなドラゴンに変わっており、目覚ましは壁に叩きつけられたのか見るも無残な姿になっていた。
「……」
「…くー…、かぁー」
ヘソ天で口をあけながら眠るドラゴン。
おじいさんドラゴンだった彼は一日で赤子ドラゴンになっていた。
ぷにぷに
ステラは白いもふっとしたドラゴンのお腹をつついた。
鱗はもうちょっと大きくならないと出来ないのだと、昨日教えてもらった。
どちらかといえばこの手触りの方が好きなので、ずっとこのままでいて欲しいのだが。それは難しそうだ。
ステラは今のうちにこのモフ毛を堪能しておこうと思った。
ドラゴンは「んぅ~」と唸りながら、ステラの指を前足で払い除ける。
くすぐったいんだろうか。
その仕草が実に可愛らしくて、ステラは繰り返しドラゴンの腹をつついた。
何度も払い除けられてはつつき、
払い除けられてはつつき、
払いのけられては…
…ついに眉間にシワを寄せたままドラゴンは目を覚ました。
「…う、っとぉぉしぃんじゃぁぁ!!」
「あうっ」
ドラゴンは小さなあんよで、主人のほっぺを蹴りあげた。
学校へはドラゴンも一緒に行くことになった。
狙われているのなら一人家にいるより学校にいた方がまだ安全だと、ドラゴンがそう言ったからだ。
子供が大勢居る場所で魔法をぶっ放すわけにもいかないだろうし、そこには担任のネイルもいる。
腐っても魔法学校の教師だ、多少は役に立つだろうとドラゴンは上から目線で物申した。
昨日と同じようにステラの肩へ乗り、人が通るとサッと髪に隠れる動作を繰り返した。
しかし残念ながらドラゴンのお尻は丸見えである。
ショーウィンドウに映った自分の髪からはみ出るこのドラゴンに声を掛けるべきかステラは悩んだが、…結局そっとしておこうという選択に至った。
また小さなあんよで蹴られてはたまらない。
それに、ちょっとマヌケなぐらいの方が可愛いとステラはクスッと笑った。