表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
使い魔はドラゴンです。  作者: 江田 豆子
第一章
1/6

大物引き当てました。

初投稿です。ゆるゆる進みます。どうぞよろしく。



落ち着け、落ち着くんだステラ、



すぅー…


目いっぱい肺に空気を吸い込んだ。

それはそれは若干胸が苦しくなるほどに。



……――はぁー



深すぎる深呼吸をして、緊張で強ばる面持ちのまま地面に膝をつく。

自身の目の前に描かれている魔法陣に両手をかざし、ステラは学校で習った呪文を唱えた。




「…召喚魔法の儀式において、この身朽ち果てるまで、我の魔力を汝に捧げることを誓います。」





――――()()()()()()





言葉と共に、ポタッとステラの親指から一滴の()が魔法陣の上に落ちた。


瞬間、蝋燭の明かりだけが頼りだった薄暗い部屋が、眩い光に包まれる。

窓もないこの空間で巻き起こるはずのない荒々しい風が、部屋に灯されていた蝋燭の火をかき消したのが分かった。


なぜならば、その風はステラの体さえも容易く吹き飛ばせる程の勢いがあったからだ。





( な、なな、なにごとぉ!? )





身を小さくし、地面にへばりつきながら風圧に耐えていたステラは、同時に焦ってもいた。


自分が想像していた以上にこの光景が凄まじいものだったからである。


縦横無尽に駆け回っていた風たちはやがて、輝きを放ち続ける魔法陣を囲むように取り巻いていった。

それはまるで部屋の中で巻き起こる竜巻同然だった。




( …召喚の儀式って、皆こうなの? )




口を半開きにし、ボサボサ頭で唖然としたままステラは扉の前に立つ担任を見た。



すると彼女もまた、髪をボサボサに乱しながら呆然とそこに立っていた。




( あ、これ普通じゃない。 )




担任の間抜け面でステラは一瞬で理解した。

自分は何かをやらかしたのだと。



( 召喚の手順は完璧だったはずだけどなぁ )



冷静な自分が内心口を尖らせる。



まぁ起きてしまったものは仕方がない、とりあえず事の成り行きを見守ろう。


担任が次第にオロオロしだすのも無視して、ステラは竜巻の中心に目を凝らした。




--- !! なにか、いる!!




飛び上がりそうなぐらい、心がざわめく。

それはもちろん、喜びと嬉しさでだ。


召喚を専門分野とする担任から見ても、この儀式はイレギュラーなものだったはず。

だからステラは諦め半分だった。

失敗したと、そう思ったのだ。



けれども、それは現れてくれた。



…たった一人の、彼女(ステラ)の元へ








――――― 『お前が、ワシを呼んだのか』







声がした。地を這うような低い声が。

威厳さも漂うそれはもちろん、ステラに向けられているものだった。


風が薄れていき、その巨体が姿を現す。


ステラは天をあおいだ。

そうしなければいけない理由は一つ、


それがあまりにも大きすぎるからである。



いつの間にか、魔方陣は輝きを消していた。


しかし何故だろう。




その躯の全貌を、ステラははっきりと目にすることが出来ていた。



理由は、すぐにわかった。





( …そうか、光ってるんだ。 )





魔法陣ではなく、――――この白い、ドラゴンが。





羽根をたたんでも窮屈なのか、ドラゴンは辺りを見回して『せまい』と呟く。


ついでに『なんでこんな部屋で召喚なんぞしたのだ。普通は外だろう。外連れてけ。』とまで文句も言い始めた。

確かに、ドラゴンは若干前のめりだった。

長い首も苦しそうに湾曲している。要は首が凝ると、そういう事か。


しかしこの部屋の出口は、担任が腰を抜かして座り込んでいる背後の扉しかない。

当然人のサイズなので、全長5メートル以上はありそうな、このドラゴンが通れるはずもなかった。



「ごめんなさい。あなたは大きすぎてここからは出られません。」



ステラは馬鹿正直に事実を述べた。

担任は何言ってるのステラ…!と声には出さないが表情でそう物語った。


死ぬぞ!殺されるぞ!私は嫌よまだ生きていたい!!


半べそになりながら担任は胸の前で両手を組んで祈る。

神様…!どうか助けてください! と。



彼女が腰を抜かしてまで怯える理由、それは彼女の認識していたドラゴンが、人に付かず、人に懐かず、人に介さず、とてつもなく気分屋で暴虐性を持った、…とってもレアだがとっても恐ろしい生き物だったからである。




( ひえええ!もうお家帰らせてぇぇ!! )




いっそのこと、このまま気絶してしまいたい。

担任は祈りながら壁に頭でもぶち当てようかと本気でそう思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ