5話目 ~新たな仲間(?)~
街に出ると、昼間の雰囲気とは違う異世界感に溢れていた。
「おぉ、やっぱり本当に異世界なんだな」
軽く感嘆が漏れた。
そんなことを呟いた後、ブラブラと街を歩き出した。
軽い夜食のようなものでもないかと探していると、日本の牛串のようなものが売っている露店があった。ふと立ち寄ってみると
「いらっしゃい! ・・・ん? お前さんこの辺じゃ見ない顔だな。新人か?」
と威勢の良い声で聞かれたので
「あ、はい。い・・・なかから出てきたばかりなので、あんまりこの街のことよく分かってないんですよね」
危ない・・・、異世界から来たとか言いそうだった。流石にまずいよな。
「おぉ、そうなのか! ま、これから頑張れよ! 」
「ありがとうございます」
なんか威勢のいい人だなぁ。
とりあえず牛串(?)を買って帰ろう。
「毎度ありー! 兄ちゃんには1本サービスしてやるよ!」
「えっ、いいんですか?」
「いいってことよ! お前さん、冒険者だろ? これから頑張ってくれよ?」
「はい、ありがとうございます」
なんだか分からないが、おまけで2本になった。まあ、増える分にはいいか。
牛串を両手に持ち、食べ歩きながら色々と見てまわり、食べ終えた頃に宿屋に戻ると
「あれ? 出歩いてたの?」
「フレアか。 どうした?」
「いや、今からちょっと街の案内ついでにコウタと一緒に散歩にでも行こうかなって思ってたから」
なるほど、その好意を無駄にするわけにもいかないな。残念そうな顔してるし。
「あぁ、そういう事ならついて行くよ。 街の案内よろしくな」
「・・・っ!! うんっ!」
うん。よく分かんないけど、嬉しそうだし良かった。
俺は、戻ってきてそのまますぐに街に繰り出すことになった。
「えっと、ギルドはこの道を真っ直ぐに行って2つ目の角で曲がるとあるからね」
「へー」
街の中をブラブラと歩きながら、どこにどんな施設があるのかを説明してもらっていた。
「ところで、英雄譚の女の子のこと知ってる?」
「あぁ。 あのココロって子の話か」
「そうそう、その子のおかげで今の私があるって言っても過言じゃないからね」
「どういう事だ?」
「えっとね・・・」
フレアの話をまとめるとこういう事だった。
***
ある日突然現れたココロと名乗る女の子が、ギルドで冒険者登録をしようとしていた。しかし、この世界では女の冒険者が認められていなかった。ただし、例外として上級騎士を倒すことが出来たら冒険者になれるというものがあった。
しかし、今までに騎士を倒せたものは一人もいなかった。
そもそも、騎士に挑もうという者がいなかったのだ。
そんな条件を呑むと宣言したココロは、次の日にその騎士と対戦することになった。
そして次の日、ギルドの裏にある闘技場で、騎士VSココロの対戦が始まった。
観客席にいる冒険者達は、ココロの方をニヤニヤと眺めていた。負けるだろうと思っているからだ。
だが、その思いは一瞬にして粉々に砕かれた。ココロは騎士を文字通り秒殺したのだ。
辺りの人々や、審判さえも呆然としていた。
「しっ・・・勝負ありっ!」
そんなこんなで冒険者になったココロは、そのまま王様の所へと直談判しに行ったのだ。そのおかげでこの国で女性冒険者が認められるようになったのだ。
***
「へぇ、そんな事があったのか」
「そうなんだ、そのおかげで冒険者になりたかった私も冒険者になれたんだ」
「良かったな」
「うん!」
そんな話をしながら俺たちは宿屋へと帰る道のりを歩いていた。
宿屋についてから俺は、ベッドに身を投げ出した。
「あー、なんか疲れたなぁ・・・。 明日からどうしようか・・・」
そのまま俺は深い眠りについた。
次の日。
目を覚まし軽く伸びとあくびをした後、着替えを済ませて出入口の方に向かって歩いていくと、フレアが受付に立っていた。
「あ、おはよ。 ギルドでも行くの?」
「あぁ、そのつもりだけど」
「へー。 行ってらっしゃい」
「おう、行ってくる」
やべぇ。サラッと言ったけどクソ恥ずい。
「なんか顔赤いけど大丈夫?」
「あ、あぁ。 大丈夫だ」
そんなやり取りをしながら宿を出ると、雲ひとつない青空に、燦々と太陽が照りつけていた。
「んー、ギルドに行くとは言ったけど、行ってから何やろうか・・・。せっかくだしパーティ組むとかしてみたいよなぁ・・・」
そんなことを呟きながらギルドに向かっていると、後ろから何かがぶつかってきた。
「おっと」
ぶつかってきた何かは小さな女の子のようだ。
「大丈夫か?」
その子はこちらを一瞥すると、また走り去って行った。なんだったんだろうか。まあ、いいや。
俺は特に気にすることも無く、そのままギルドへと向かっていった。
ギルドに入ると朝から飲んだくれていたり、歓談していたりと様々だった。
それらを横目に受付へと向かっていくと、さっきぶつかってきた女の子が、ベテラン冒険者らしき人達に囲まれていた。
「お前! 今回こそは逃がさねぇぞ!」
「……」
「今日はちゃんと金持ってるんだろうな?」
「今までで盗られたもんは返してもらうぞ!」
あの子、盗賊だったのか。・・・ん?そういえば俺もぶつかられたよな?
ガサゴソ…
「あっ」
やべっ、声に出てしまった。
というか俺の財布も盗られてんじゃん!
まあ、そんなに怒る気にもなれないが・・・
実際俺は、討伐依頼をこなしているだけで暮らしていくことが出来るのだ。あいつらめちゃくちゃ金落とすし。
あの子のこと、助けるべきかなぁ。
とりあえず見守ってみるか。
「おい!早く金出せよ!」
女の子は懐から俺の財布を取り出した。
「おっ、ちゃんと金持ってんじゃねぇか。 これは全部貰っていくぞ」
女の子は財布ごと強引に取られ、その場に倒れ込んだ。
「今回はこれで許してやるよ。 ただし、次やったら覚悟しとけよ?」
「・・・」
うっわぁ、容赦ねぇな。いやまぁ、金取られてるから仕方ないか。
あ、あの子こっち見た。あ、逃げた。
ま、当たり前か。普通は逃げるよな。追いかけるつもりないけど。
さて、今日も依頼を受けますかー。
なんか良さげなの無いかなぁ・・・
今回は少し短めです。
純粋にやる気がなかった…orz
次回頑張ります…