1話目 ~どこだよここ!~
ある日の朝のことだった。
まさか、こんな若さで死ぬとは思わなかった。
いや、まあ別に俺が死んだところでどうなるってわけじゃないんだけどさぁ、ねぇ。
まあ、こうなったのは仕方ない。こっちの世界で生きていくしかないよな・・・
***
俺は、とある大学に通っている・・・いや、通っていた大学生(笑)だ。
・・・そうだよ、ニートだよ! それも、ヒキニートだよ!
年齢? えーっと、19? あ、違う20だわ。
え?名前を早く言えって? あれ、言ってなかったっけ。
えー、俺の名前は、コウタ。タカサキ コウタだ。
そんなことより、俺死んだんだけど。いやね?新しいゲームの深夜発売があるってことで久しぶりに外に出たんだけど、買いに行くのには特に問題はなかったんだけど、帰りにね?
懐は寂しくなったけど、心はホクホクして帰ってくる途中に久々に外に出たせいか、何もない道で転んでしまった。そしたらその瞬間、眠そうなトラックの運転手が、結構なスピードを出して突っ込んできた。
いや、そんなの来たところでとっさに反応できなくない?フツーにぶつかって死ぬぞ?
「あ、これ死ぬわ」とか思いながら奇跡が起きる・・・わけでもなく、フツーに死んだ。
目の前が、真っ暗になったと思ったら、急に明るく目の前が白んできて正座していた。
いや、待って。意味わかんないんだけど。どうゆうこと?誰か教えて?
とかなんとか思っていたら、目前に神々しい人がちょこんと座っていた。
「・・・ほんっとにすいませんでした!」
なんか急に謝られたんだけど、いやそんなことより、
「ここどこだよ!」
あ、なんかびっくりしてる。いや、フツー聞くだろそれ。
「・・・あれ、・・・・・ここの・・・・・」
なんか言ってるの聞こえるけど何言ってんだろ、あの焦りようから見るとなんかミスでもしたのかな?
「えーっと、まずは何から話せばいいんでしょうか・・・」
いや、俺に聞くなよ。こっちは何もわかんない状態で連れてこられてるんだぞ。いや待って、俺死んだんだっけ。
「えっと、ここはあなたたちの住む世界で言う“天界”になります」
・・・やっぱ死んだんだな、俺。で、なんで俺は謝られたのかっていうと・・・
「あの、ですね、こちらの手違いで間違えてあなたを天界に連れてきてしまったんです・・・」
いや手違いで殺されたのかよ俺。いや攻めるつもりはないけど、なんかもったいないなぁ、まだ人生の半分も過ごしてないのに。
「いや、それはいいんですよ。なんかそんな気がしてたんで」
「いや、いいんですか!?」
うお、びっくりした。
「いやそんなことより俺はどうすればいいんですか?」
なんか唖然としてる。口ずっと空いている。
あんぐりと言う擬音がぴったりの顔している目の前の人を見ていると、急にはっとして言った。
「はっ、あ、あのですね、これからあなたには、もう一つの世界に転生してもらおうかと」
「え、なんで。生き返らせるなら元の世界に戻せばいいのに」
俺は、間髪入れずそう答えた。どちらかと言うと突っ込みに近かった。
「・・・あ、えっとですね、一度死んだ人をもとの世界に戻すことは禁止されているんです」
そうなのか。てか,普通そうだよな。生き返らせるとなると俺を知ってる人の記憶をすべて捻じ曲げることになるしな。
ならどこに生き返らせるのだろうか?俺の生きてる世界以外にも世界があるのだろうか?
「その代わりといっては何ですが、あなたはゲームって好きですか?」
おっと、唐突ですね。
「まぁ、それなりには好きですね。というか、大好きです」
あ、ゲームで思い出したけど俺の買ったゲームってどうなったんだろ。まぁ、誰かに回収されてるってオチだろうな。
「それならよかったです!今から転生していただく世界は、そのまま剣と魔法の世界なんです!」
どこかで聞いたことあるフレーズだなぁ・・・まるでログ〇スみたいな・・・
「いや待って、俺がそんなところ行って即死とかしないんですか?」
いや待って、黙らないで。怖いから。しかも考え込んでるし・・・
30秒くらいの沈黙ののち、口を開くと
「・・・大丈夫です・・・・・多分・・・」
確証ないのかよ・・・怖すぎだろ。
「まあ、こちらの手違いで起きたことですし、最低限ですが装備とお金はお渡しします」
まぁ、よくよく考えたら俺殺されてる身だしね、そうなるよね。
「はぁ」
ちょっと戸惑い交じりに、答えた。それに加えて、面白いものをもらえることになった。
「それに、"今は"一つしかないのですが能力を付与します」
おお、なんだそれ面白そう。どんな能力なのか尋ねようとすると、
「それは、向こうの世界についてからのお楽しみということで・・・」
教えてもらえなかった。なんだろうか? 魔法とかか?
まぁ、なんにせよ少し楽しみだ。
「あ、準備ができましたのでよろしければそちらの魔方陣に乗っていただけますか?」
そんなことを考えていると、そう声をかけられた。
「あ、はい」
ふと思ったのだが、言葉とかって通じるのだろうか?そう思って聞いてみると
「えっとですね、文字や、言語などは日本語のままなので大丈夫なのですが、あちらの世界の最低限の情報は、脳に直接負担をかけ送り込みます。まぁ、心配はしなくてもいいってことですよ!」
まぁ、それならいいのだが。脳に直接負担って、怖いな。記憶とか吹っ飛びそう。心配いらないらしいけど。
「では、あちらにお送りしますね。一応最終目的は魔王討伐で、討伐すればその報酬として、一つだけどんな願いでもかないます」
へぇ、マジのRPGみたいだな。元の世界に生き返らせてもらうとかもありなのか。
「では、そろそろお送りします」
うぉぉ、なんか楽しみだな。
「あ、お願いします」
てかこの人女神なんだな。いまさらながらに分かった。
その女神さまが、ふぅ、と一息つくと
「では、頑張ってください!」
そういって、俺は送り出された。
「まぁ、ちょっとだけ頑張ってみるか・・・」
***
さて、なんだかんだで異世界に転生したわけだが、どうしよう。
何すりゃいいんだ、これ。
いや、一応知識としては何すればいいのかわかってるんだよ。
まず、ギルドに行けと。そして、冒険者登録をしろと。
・・・それしか知らないんだけど。ほんとに最低限だな。
場所すら知らないんだけど。むしろ最低限以下じゃね?
まぁ、ここはRPGらしく町(?)の人に聞いてみるとするか。
「あのー、すいません」
俺は冒険家らしき中年くらいの男性に話しかけた。すると気さくな感じで返ってきた。
「おう、どうした兄ちゃん?」
「えっとですね、ギルドってどこにありますかね?」
そう聞くと目の前の男性は、少し珍しそうに言った。
「兄ちゃん。もしかして、転生者か?」
リーンカーネーション? なんだそれ?
「あの、リーンカーネーションってなんですか?」
すると小さな声で、男性はつぶやいた。
「まさかほんとに転生者とは・・・」
えーっと、早くリーンカーネーションについて説明してくれないかなーとか思っていると。
「あぁ、転生者ってのはだな、ちょうど今から2~3年前の話だ。
今から2~3年前に、この世界に一人の幼い感じの子供が突然現れたんだ。その子はココロと名乗ったそうだ。しかもその子は、とんでもない強さだった。
俺たちみたいな中堅の冒険者じゃ歯が立たないほどだった。むしろ、上級の騎士さえもしのぐ強さだった。そしてその子は、ここではない別の世界から来たと言っていたんだ。
そこから、別世界からやってきたやつのことを転生者と呼ぶようになったんだ」
・・・なんか壮大な話だなー。
まぁ、俺には関係ないしいっか。いやでも、それだけ強いのに何で魔王倒してないんだろう? それだけ強けりゃ倒せるだろうに。とか思いつつ本来の目的に戻ることにした。
「そんなことがあったんですか・・・ところでギルドの場所ってどこですか?」
男性ははっとした表情をした後、こちらへ向き直って場所を教えてくれた。
「ギルドってここか? ・・・まぁ、ゲームでよく見る感じだな」
そんなどうでもいいことを口にしながら、俺はギルドに足を踏み入れた。
投稿については(多分)不定期ですが気長に待っていてくれるとありがたいです!