ペンギン部勧誘
「おはよー」
「あ!おはよう!」
教室では友達同士が挨拶を交わしている。
昨日入学式だったのにもう友達ができたというのか。
俺にはまだ誰1人話しかけてこない。
だから俺はペンギン図鑑を開き、必死に見ているフリをしている。
「あ、あのペンギンのストラップ可愛い!」
「シッ!ダメ!アイツに関わっちゃ!」
女子がなにやら俺のバックにジャラジャラついているペンギンストラップを指さした。
このまたとないチャンスを逃してたまるものか!
「ペンギン好き?俺、片下雄輝。俺めっちゃペンギン好きでさ、ペンギン部っていうの作ったんだけど君、ペンギン愛してるなら入らない?」
「あ、あのっ...」
「ほらみなよー!関わっちゃダメって言ったでしょ?」
「コホン!君、さっきから失礼じゃない?俺、そんなヤバイヤツだって見える?」
「うん」
「え...」
「だって男の子なのにそのファンシーなストラップの数々、筆箱もペンもペンギンって私はヤバイヤツだって一瞬で思ったよ」
俺は開いた口が塞がらなかった。
俺がヤバイヤツだと...!?
「何その世紀末みたいな顔して」
「美希、失礼だよー」
「だってヤバイヤツなんだもん」
もう1人の女子が美希という女子をなだめる。
「あの、美希さん、俺、そんなヤバイヤツ?」
「何回も聞かないで。しつこい」
俺は大ダメージを受けた。
「ごめんなさい、美希、思ったことなんでも言っちゃうから...」
「君は天使だ!ペンギン部にふさわしい!名前は!?」
思わずその女子の手をとった。
「えっ!斉木綾です...!天使ではないです!」
「あー!セクハラ!うちの綾に触らないでくださーい!」
「違う!そんなつもりはない!天使よ!お願いします!ペンギン部に入ってください!土下座します!」
「えええ!やめてください土下座は!分かりましたから!お願いします...」
「綾!嫌なら嫌って言っていいんだよ!?」
「ううん。いいの。私、天使なんて言われたの初めてで...」
「Fuuuuu!!ありがとうー!君が記念すべきペンギン部員第1号です!」
美希さんはなんだか納得いかない顔をしてブツブツ言っているが、ほっておこう。
「綾様!ここにお名前をお願いします」
俺は綾様にペンと入部希望の紙を渡した。
戸惑うことなくスラスラと書いてくれた。
「綾になにか変なことしたら許さないんだからね!」
「しねぇよ!」
コイツ俺をなんだと思ってるんだ。
とにかくひとり部員をゲットした俺は綾様にまたあとでと伝え、職員室に向かった。
☆
「失礼しまーす。三上先生ー。部員ひとり見つかりましたー。」
「え」
自分の机で顔を伏せていた先生の元に寄って綾様に書いて貰った紙を見せる。
「信じられん...」
「先生ー。誰もペンギン部入ってくれないと思ったんですかー?超ウケる」
「やめろ。その女子高生みたいにウケるとか言うの。キモイ」
「えー。生徒にそんな暴言吐いていいんですかー?」
「うるせえ」
「この調子でもっと部員集めちゃお☆」
「キモイ」
何故だろう。
今日は先生、俺にはあたりが強いな。
昨日言われたことを気にしているのだろうか。
「先生。先生って本当に美人ですよね」
「は!?ななななに言ってんだ!!今更媚び売ろうったってそうはいかないぞ!」
「いやー、昨日はひどいこと言ってすいませんでした」
「え...あぁ。うん。ちょっと気にしてた。でもわざわざ謝るなんてお前、なかなかいい奴だ」
「えへ☆」
「キモイ」
「えー。今、褒めましたよね俺のことー」
「撤回だ。早く去れ」
先生に肩パンされ早く去るよう促される。
暴力反対。
「痛い!」
たいして痛くもなかったけど肩をおさえ、しゃがみこんだ。
「え!?片下?」
あわてふためく三上先生。
「嘘でーす」
「ウザ」
「失礼しまーす」
「おい!」
追いかけてくる先生をよそに俺は職員室を出た。