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転生しました。3

おひさしぶりです。

もう一人の姉弟をようやく出せて良かった~

あの日も雨が降っていた。

私が通っていた高校は幸い家から自転車で通える距離だった。

だから私はいつも通り朝起きて、いつも通り朝食を摂って、いつも通り…より少し遅い時間に家を出た。

あの日は明け方から雨が降り続いて寒かったから、手袋を久し振りにつけようと探していて、手間取ったのだ。

玄関の時計を確認した私は急いで自転車に乗り…途中にある四車線の大きな道路で、車にひかれた。

思い返しても、全てが偶然の積み重ねで、あたかも必然であるかのようだった。


まだ新しい黄色い帽子をかぶった小学生が歩道からはみ出る。

ブレーキをかけようとするも、かじかんだ手では思うように力が入らず、やっとブレーキを握っても手袋が滑る。

慌ててハンドルをきった先はマンホールの上で、前輪がスリップ、横転。

後ろから走行してきた乗用車に乗り上げるかたちでひかれる。


誰だ、異世界転生で痛みもなく死んだ奴?!


私の最期は、声も出ない程の激しい痛みに、自分の骨が軋み折れる音、泣き叫ぶ子どもの声、そしてむわっと臭う血と鉄と雨のにおいに、支配されていた。


……で、これを思い出したのは弟、マイケルが生まれたとき、だろう。

まだ小さかったけれど、家で出産した母の側を離れなかった私を襲ったのは、生まれた赤ん坊(弟)の泣き声と血と、その日も降っていた雨のにおい。

聴覚と嗅覚が前世の記憶を呼び覚ました、という訳だ。

怖い怖いと言いながら泣く私だったが、初めての出産立ち会いが原因と勘違いされ、ありがたかった。

そのまま泣き寝入りしたものの誰も不審がらず、しかも次の日、前世の私の記憶が混じって大人しくなったのを、姉の自覚が!という理由で誉められる。

最期の記憶のせいで小さい子どもが苦手になったが、ウェンディが常に構っているからマイケルも寂しくないようだ。

また、マイケルもだんだん大きくなっているので、もう普通に遊ぶくらいなら苦手意識は無くなってきた。


……とこんなことを考えながら、私は今子ども部屋の隣にあるバスルームで泡風呂に浸かっている。

泡風呂だよ!大事なことなので、二回言います。

日本人なら一度は憧れる、猫足バスタブに溢れんばかりのあわあわ。


「幸せ……」


先程擦れた肘の痺れは頭の端っこに追いやって、体を包む贅沢な香りに身を委ねる。

夕方からこんなことをしていたら怒られそうだけど、両親は今夜パーティーなのだ。


銀行員の父は、時々融資家達が開くパーティーに嫌々ながら出掛ける。

黒髪黒目で七三眼鏡な父はお世辞にも社交家とは言えず、そんな父を支えるのが麗しき我が母上なのである。

栗色の艶やかな髪はウェーブがかかっており、少したれ目がちな大きな緑色の眼はいつもキラキラしている。

真っ赤な唇の下には黒子があり、抜群のプロポーションも相まって夜会前の色気はハンパない。

……残念ながらその遺伝子の大半は姉にいったようだが。

あっ、目から汗が……。


閑話休題


てな訳で、両親は夜からのパーティーの準備に大忙しで、あと数時間で入れ替わるようにして来る大叔母(未亡人)にさえ気付かれなければまだまだ泡風呂を楽しめるのだ。

泡風呂万歳!!

知らず知らず鼻歌を歌ってしまったのも致し方ない。

手足の指の腹がふやけてシワシワになる頃ようやく風呂を出て、ちゃっかり風呂掃除まで済ませておく。

証拠隠滅、これで完全犯罪、って何か違う気が……ま、いいか。


バスルームの出口にはナナが待機して、ベッドの上に放り投げていたワンピースやらバスタオルやらを用意してくれていた。

どうやって、って?

それが、謎なのだ。

どんなに見ようとしても隙を見せない。

首を傾げてじっとこちらを見るのだが、その目がまさに幼い子を見る母親の目で……

もうこの子はしょうがないわね、と見つめられたら精神年齢アラサーな私には耐えられなかった。

ただ用意されたものは(唾などとんでもない)綺麗に畳まれており、かつ使う順番に重ねられているためありがたく全てお任せしている。

プロフェッショナルなのだ、断じて怠けている訳ではない!

鼻歌を歌っていた自分が多少恥ずかしくなる……が後悔はしていない。


眼と同じダークグリーンの楽な、でも綺麗な長めのワンピースドレスを着て、ナナと廊下を歩く。

すると、ドタドタ……と階段を駆け上がる音がして、金色のほわほわが視界に飛び込んできた。


「ジョン、おかえり!」


紹介しよう、ダーリング家の末っ子で一番の甘えん坊、マイケルである。

彼は舌ったらずだったときの癖で私をジョンと呼ぶ。

いつもよりちょっと高そうな服を来たマイケルは我が弟ながらまるで天使だ。

母方の祖父に似た猫っ毛の金髪に、緑色の瞳。

ふっくらとした年相応の頬を少し紅潮させた少年は、私の顔を見てニコニコしている。

ま、眩しい……!

私には彼の背後にキラキラが見える。

私はよろよろと側に座っていナナの背に寄りかかり、マイケルを見上げた。


「パト〇ッシュ……お迎えが来たみたいだ……」


気をきかせて伏せたナナの努力も空しく、マイケルはやれやれと肩をすくめた。


「ふぅ、また変なことしてるの?床は汚いんだよ、せっかくお風呂入ったみたいなのに。まあ、いいや。ウェンディが呼んでるよ、今日の予行練習だって!下行こ?」


最近、姉の扱いが荒い件について。


私の手を引っ張って立たせるマイケル。

先程のお礼にナナの耳の下をかいて、私達は一階のフロアに向かった。

相変わらずの亀(以上ののろま)更新です。

お察しの通り見切り発車ですが、来月もよろしくお願いします!

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