夢への干渉
結局、稲荷神社へと蜻蛉返りした俺は、狐川と一緒にテストへ向けての勉強をしばらくしたのち寝床へとついた。けれど、気になることが多すぎて眠気が一向にやってこない。
仕方なしに、体を起こして居間へとお茶を飲みに降りていく。
「ま、大神さん。どうなされましたか?」
「四季まだ起きていたのか」
「明日の仕込みがまだ終わらなかったので」
俺はそのまま台所へと向かい急須にお茶っ葉とお湯を入れて湯呑みに注ぐ。
「四季も飲むか?」
「そうですね。こちらももう終わりますし、ご一緒させてください」
もう一つ湯呑みを取り出してお茶を注いだ。四季も仕込んでいたものを仕舞い、居間へとやって来た。
「どうですか?この生活には慣れましたか」
「慣れるっていうもんじゃないだろうけど、なんとか生き延びてる感じがするかな」
「なんだか不憫な言い方ですね」
こうして四季と二人きりで話すなんて今までほとんど無かった。冬歩も割と歳言ってるとしか教えてくれなかった。見た目はほとんど小学生と言っても過言ではない幼さがあるのに。
「四季は神月と契約をしてるんだよな?」
「はい、私を含めて皆さんそうですよ」
「それはどうやって決まるんだ?」
「特に決まりはありません。ここだと雅様が選出した方が契約するという形を取ってるだけで基準があるとすれば雅様の中にしかありません」
それこそ神のみぞ知るみたいだ。
けれど契約もしていない俺がずっとここに留まるのはいかがなものなのだろう。
「錫牙様、もし契約のことが気になるのなら雅様に聞いてみてもいいかもしれませんよ」
「神月にね」
今はなんだか聞く気になれなかった。
それに取り急ぎやるものでもないから今はやめておくことにした。それからは他愛もない話を四季としてから就寝につく。
そして、また夢を見る──。
***
こんばんは。
そう声は聞こえる。けれどあたりは真っ暗で何も見えない。けれどこの声にももう聞き覚えがある。少女Aだ。
「こんばんは。一体ここはどこだ」
わかりません。
意思疎通は出来ているのに、姿が見えないだけで不安になるものだと思ってしまう。
「夢の中?にしては今までとは違いすぎる。これも少女Aの能力なんだろう?」
そうですね。けれどこれは私だけではなくもう一つの能力が反映しているかもしれません。
「もう一つの能力?」
何者かが大神さんに干渉して、それに私も巻き込まれているというのがわかりやすいですかね。
理解できたようなできないようなそんな感じの説明に俺は困ってしまった。
「俺はどうすればいいんだ?」
とにかく起きましょう。そしてこのことを巫女様に伝えるべきです。
さぁ、意識して。目覚めることを。
少女Aに言われた通りに目を覚ますことだけを意識する。すると、ゆっくりと閉じていた瞼は開き元の部屋へと戻ってくることができた。隣のベットでは狐川が規律のいい寝息をたてて寝ている。それを見てほっと安心してしまう。
「って、安心してる場合じゃない。早く神月のところに行かないと」
俺はそのまま隣の部屋の神月のところへと急いだ。




