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稲荷神社の妖達  作者: 朝凪
プロローグ
8/93

お好み焼きの行方

狐川の部屋を出て俺たちは居間へ向かった。そこに着くと神月は台所へと行きエプロンをし髪を束ねながら振り返った。


「簡単なものしか作れないけど、そこ座って待ってて」


俺は狐川に習うように畳の上に置かれたちゃぶ台の近くに座る。


「じゃあ今からスタートだな」


狐川はスマホを取り出しスポットウォッチで時間を計り始めた。


「なんで時間なんて計るんだ?」


「まぁ見てて、すぐに理由ならわかるから」


時間制限で調理しなければいけないのだろうか。それとも時短というやつでもやっているのだろうか。そんな狐川を他所に神月は早速作り始めたのかトントンとリズムよく具材が切られていく音がした。しばらくしてから今度はこちらもリズムよくタッタッたと廊下を走る音が徐々に近づいてくる。そして、一瞬止まったかと思うとスパンっと襖を開ける。


「やっぱり!雅様ダメです!!」


少女は、俺たちのことなど見向きもせずに神月のいる台所へと向かった。


「夕飯の準備は四季がやりますから、雅様は大人しく待っていてください」


神月は聞く耳を持たず、手は止めずに調理を続けていく。


「四季は、白雪の側にいてほしい。性質からしてあまり暖かい部屋にはいられないだろうし。まだ、体調も回復していないのだから」


「でも、これは四季の仕事です!雅様に任せるわけにはいきません!」


「たまには私が作っても……」


「でないと、四季泣きますよ?」


その言葉を聞き神月の手はピタリと止まる。重い空気の中神月は溜息をつく。そして、持っていた包丁をまな板の上に置く。


「わかった。四季に任せる」


「はい!すぐにご用意するので居間で待っていてください」


その言葉を待ちわびていたかのように満面の笑みをする四季を後に神月はこちらへやってきた。


「三分三十七秒、いつもよりも遅かったね」


「今日はいけると思ったのに」


残念そうに肩を落とした神月が向かいに座る。


「ちなみに何を作る予定だったの?」


「お好み焼き」


「昨日も同じの作ろうとして止められなかったけ?」


「昨日はキャベツを冷蔵庫から出した瞬間だった」


「過去最速の一秒だったしね」


千切りを終えたキャベツはいったい何に変わるのだろうか。


「本当に四季の涙には弱いね」


「こればかりは仕方ない」


「涙って別にまだ泣いてもなかっただろう?」


「四季が泣くと言って泣かなかった試しは無いから。もし、あのまま神月さんが四季の言うことを聞かず料理を作り続けていたら……」


「続けていたら?」


間を空けてから狐川はつげた。


「とりあえず、一日で泣き止むなんて思わないことだね」


微笑みながら言う狐川に恐怖を覚えた。

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