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稲荷神社の妖達  作者: 朝凪
能力編
63/93

優秀すぎる二人

冬歩と四季と一緒にまだ帰ってこないと狐川のために夕飯の準備をしていた。


「早くご飯食べたい!」


そう騒ぐ冬歩はおやつだと言いながら先ほど大福を食べていた。本人曰く、満縁堂の大福は格別だからいくらでも食べれるからいいらしい。


「確かに帰りが遅いですね。何かあったんでしょうか」


盆に天ぷらとひじき煮を乗せながらこちらに四季がやってくる。


「そもそも狐川から帰りは遅くなるって言われてるから、そこまで神経質に心配しなくても大丈夫だとは思うけど」


「でもせっかくの四季の料理が冷めちゃう!」


確かに四季が丹精込めて作ってくれたのが冷めてしまうのは申し訳ない。

少し表まで狐川が帰ってきてないか見てこうと思い立ち上がると右側の頭に鋭い痛みが走った。それと同時に一瞬よろけてしまった私を見てすかさず四季が駆け寄る。


「雅様、何があったんですか」


「……三時の方向、結界破り」


「嘘、こんな時に限って」


そう呟けば冬歩は血相を変えて、口元を手で押さえて驚きを隠しきれていない。それもそうだ。今破られたのは稲荷神社を一番強固に守っている結界なのだ。そう簡単に破られるものではない。それが破られたのだ、相当な力の持ち主でないと難しい。それに加えてもう一つはここに狐川までもいないということだ。


「四季、冬歩少し下がって」


ポケットに常備しておいた札を取り出し床に置き、そこを中心とした半径五十メートルまでの結界を新たに組み立てた。

けれど問題は、敵がどこまで内部に入ってきているかだ。結界はあくまでも外部からの侵入を守るだけであって内部に入られていては意味がない。

果たしてどこまでいける。


「へぇ、それで私達を拒もうっていうんだ」


どうやら時すでに遅しだったようだ。

既に敵はこちらの内に入られていたらしい。私は腰の後ろに着けてあるケースから短刀を取り出す。


「我、この身に宿る五神の力刀に宿り姿を変えよ」


その言葉通りに短刀は白い光を放ちながら、打刀へと変化する。


「私、知ってるよ。お姉さんが私のことを殺せないこと」


余裕綽綽の表情を浮かべながら少女は言う。水や空を連想させるほどの透き通った青髪は右目を隠すように流れている。帯飾りは綺麗なものだが、百合が描かれた着物は不吉さを際立たせていた。


「それが何か?」


「だから私は常に間合いをとりながら倒せばいいだけだってこと」


どうやら能力までも知っているらしい。もちろん、それらはシレネによる入れ知恵であることには違いない。少女は手に持っていたいくつかのビー玉をこちらに向かって投げつける。それらを避けると意思があるようにこちらを追いかけてくる。仕方なく、一振りすればその場でビー玉たちは破裂した。勢いもの小さいものの体制を崩してしまう。


「逃げられないですよ。だってこれが私の能力だもの」


「みーやん!後」


一瞬でも怯めば残りのビー玉が襲いかかってくるようだ。


「文界せよ。我が身を守れ」


既の所で爆発を回避する。少女は何か合図する様子は見れなかった。この近さで爆発することを考えると、どうやらその命令とやらで距離を測られているみたいだ。

せめて名前さえ触れて知ることができれば。

爆破の衝撃による煙もなくなり視界が開けてきた。

少し手荒く仕込んで行こうか。


「跳躍せよ。ひと蹴りで進め」


一歩引いた右足から勢いよく飛び出ると刀の先が少女の鼻先に止まる。


「だめだよ。お姉さん」


来ることがわかっていたかのように私の目の前にビー玉が打ち上げられる。


「そうだと思ったよ」


爆発までには必ずラグが存在する。その瞬間にこのビー玉を吹き飛ばす。


「飛躍せよ。彼方の向こうへ」


そうすると、まるでピンポン玉のようにあちらこちらの木にぶつかりながらぐるぐると回り始めた。術式が切れたらタイムリミットだ。

私は鼻先にあった刀を下ろし地面に垂直に突き刺す。そして柄の部分に右手を置き体を支えてその勢いのまま胸へと蹴り込む。

少女の名はカンナ。

カンナは蹴りの勢いのまま母後ろへと吹っ飛ばされる。

蹴りの際の一瞬、しかも直に触れたわけではないので黒蝶でのコードネームしか知ることができなかった。


「カンナ、合っている?」


「へぇ、あんな一瞬だけでわかっちゃうんだ」


ふらつきながらもカンナは立ち上がる。


「でもこれ以上は近づかせない」


闘志を燃やす瞳に変わり先程よりも多くのビー玉をこちらに投げつける。これだけの数に一つ一つ指示を出しているとすればそれはかなりの負担だろう。けれど、そんな様子はカンナからは一切感じられない。ならば、どこかに規則性やカラクリがあるはずだ。避けながではなかなか答えが見出せない。


「っ!?みーやん次は左から来るよ!」


冬歩の突然の言葉に瞬時に動くとその通りにビー玉が飛んできた。


「みーやん、私が見るからそれを聞いて」


冬歩の能力である視力はコマ送りのように見えたり普段目には映らないもの見えたりとする。これならば何か法則性が分かるかもしれない。


「ならば私が夏麻様の代わりになりますね」


「優秀すぎるね、二人とも」


四季の能力のコピーによってカンナに悟られずに冬歩の指示を聞くことができる。

何もわからないカンナはさらにスピードを上げてこちらにビー玉を迫らせる。


『みーやん、左の後上と下両方向から。その後に右と真下の方向からくるよ』


その指示は的確で必ずそちらからやってくる。


『みーやん、この玉の法則性は赤いビー玉が来たらそこから四方向。三角錐を描くようにくるから。こっちでも指示を出すけど一応頭に入れておいて』


冬歩本来に備わっている観察力は群を抜いて高い。そのおかげで見えてきた突破口だ。


「二人とも一気に畳み掛ける」


先ほどまではその場で来るものを避けることしかできなかったが、理屈がわかれば容易いものだ。私はスピードを上げて避けながら近づく。そして、再びカンナ自身に触れることが出来た。

せめてだ、せめて後五秒あれば全てがわかる。

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