六つの能力
風見渓の写真を見ながら説明が続く。
「仕え人って、具体的には?」
「やることは水嶋さんや神月と同じだよ。言い方が違うだけ」
「つまり巫女?」
「そう。けど男は巫女にはなれない。だから仕え人って言ってるんだ」
「じゃあ風見渓も神との契約者?」
「そういうこと」
きっと何かがなければ神月と互角になるなんて無理だとは思っていたが、まさか男でもなれるとは思わらなかった。
「けど、なんで風見渓だけなんだ?」
「どういう意味?」
「いや、水嶋さんと風見渓が同じなら水嶋さんも神月と互角になれるくらいの力があるんじゃないか?」
「なるほどね。けど残念水嶋さんは多分一番弱いかな」
「同じ契約してるのにか?」
「水嶋さんは攻撃系じゃなくて保守系だからね。それでも、他の妖達と比べれば圧倒的だけど」
同じ契約なのに内容によって随分違うものになるようだ。
「そういえば神月の能力って攻撃系のあったっけ?」
俺が知る限り神月は相手の記憶を見ることと能力の増減だけだ。どちらも攻撃としては不足するところがあるように思う。
「神月さんは特別だからね。普通は皆能力を一つしか持たないけど、神月さんは六つある」
「なんでそんなにあるんだよ」
「それが全てを取りまとめる本巫女だからだよ」
四季もそうだったが、本巫女に対する特別視が強い気がする。まだ俺は神月のカケラしか見ていないということなのだろう。
「といっても僕も全部は知らないんだ。一つは結界の能力、神月さんがいるおかげでこの覡町はどんな災害が起きても傷一つなく過ごせる」
「そういえば周りの街はこの前も台風で屋根瓦が吹っ飛んだとかニュースにあったな」
「それは神月さんのおかげ。あとは──」
「二つは知ってる記憶を見るのと能力の増減だろう?」
「……そうだね」
狐川は歯切れが悪い返事をする。間違ってはいないみたいだが、なんだか不機嫌になっている気がする。俺は無言が続くのが嫌で他はと催促する。
「あとは僕も知らないんだ」
「え、そうなのか」
「うん、多分本人しか知らないと思う」
「それじゃあ、神月がどんな攻撃系の能力があるかとかわからないのか」
せっかく何かがわかると思っていただけに残念ではある。
「風見渓の能力は?」
「あ、それならわかるよ。風見さんは重力の能力者だよ」
「重力の能力者って具体的にはどんな感じなんだ?」
「うーん、例えば今ここにあるシャーペンに通常の五倍の重力だけを加えたとする。そうするとどうなると思う?」
そんな急に物理の問題を出されても困る。
「えっと、重力だけだから下にのめり込む?」
「そう。逆に重力だけを通常の五分の一にしてしまえば宙に浮くってわけ」
「宇宙空間にいるみたいな感じ?」
「そうそう。月だと体重が六分の一になるからそれと一緒」
なかなか厄介の能力だと思うと同時に以前神月に言われたことを思い出す。
「利点と欠点……。この能力の欠点とかわかるのか?」
「神月さんと同じで対象者に触れなければいけないことかな」
強い能力であっても唯一敗れる突破口は存在するらしい。




