戦闘開始五秒前
あの蹴りを決め込まれた瞬間俺は骨が折れたかと思うほど痛かった。
「あー!あとちょっとだったのに!」
「夏麻、俺の顔は歪んでいないか?」
地に平伏しながら問うが、そんなことよりも目の前の神月に勝てなかったのがショックだったらしく俺の存在など目もくれず踏みつけて神月のところまで走っていった。
「……足りない」
「え」
「二人とも能力に頼りすぎて武術が足りなくなってる」
確かに夏麻との意思疎通ができることを最優先に意識していた。
「ちょうどいいから二人とも一戦やろうか」
それは俺と夏麻ではなくそれ以外の二人を指しているのだろう。
「ほら、見つかっちゃった」
「もう誰のせい!」
いつのまにかに忍び込んでいた狐川と冬歩がいた。
「戦闘訓練五秒前」
そう神月が言うと二人はすぐに模擬の武器を手に取り構えに入る。俺は夏麻に首根っこ引っ張られて離れる。
「四、三、二、一。始め!」
その瞬間二人同時に神月にゼロ距離となる。その瞬間に狐川が刀を冬歩は苦無を振りかざす。が、神月は分かっていたかのように避ける。しかし、冬歩は避ける先まで読んでいたのかその場所に苦無を投げ込む。神月は持っていた刀でそれを叩き落とすが既に反対からは狐川が襲いにかかる。それを抑えるため、二人は鍔競り合いを始めた。
「二人とも何も打ち合わせしてないのにピッタリだ」
神月と狐川が鍔競り合いの最中、冬歩は後ろから苦無で仕掛けていく。
「……っく!」
それに気づいてか、神月は狐川を押し蹴り飛ばすと今度は冬歩との攻防が始まった。
「互いが互いにギリギリのところまで粘って隙を抜く。二対一ならこれが基本の攻撃です」
俺はそれすらも知らないのか。
***
「もう!往生際が悪いよ」
「覗き見してたそっちには言われたくない」
私は一回距離を取る。
その直後に左手の苦無を投げ込む。それをみーやんが刀で払った隙を見て手裏剣を三枚続けて三方向バラバラに繰り出し、その間から今度はまぼろんが飛び出す。みーやんは全ての動きを防ぎながらまぼろんの刃を押さえる。
やはり、一戦交えた後のみーやんでもまぼろんの方が推されている。刃と刃が攻防している音が辺りに響き出す。私とまぼろんに関してはいつもどちらがギブアップするまでの耐久戦となっているため時間など関係ない。だからといっていつまでも長引かせる方がこちらには不利だ。そろそろ決着をつけなければ。それならばと、持っていたもう一つの苦無を持ち私はまぼろんがみーやんにその刀を振り下ろすと同時に反対方向から襲いかかる。お互いにタイミングはぴったり。後はみーやんがどうするか。
すると、みーやんは私の攻撃を避けつつ後ろ向き刀を使いでまぼろんの攻撃を防ぐ。そして、私の手首を掴んだかと思うと二人同時にまわし飛ばした。
「戦闘不能かな?」
投げ飛ばされた私とまぼろんを見てそう言った。悔しいがここで「降参」と私は言おうと思い、口を開こうとした瞬間まぼろんは一番低い打点から飛び出した。それに気がついたみーやんは前宙して辛うじて避ける。
「……まだ、終わらない」
「なるほど、なら冬歩下がって夏麻と一緒にいて一対一の真剣勝負に変更しよう」
私が既に戦意が無いことを感じたのか、まぼろんとだけの一対一を指示した。私はゆっくりと立ち上がるとそのまま夏麻とすずやんのところに向かった。




