能力の弱点
互いに間合いをとったまま立ち尽くす。
「お疲れ様、二人とも」
スポーツタオルを片手に神月はその間に入りそれぞれにタオルを渡す。
「今の手合わせ夏麻はどうだった?」
「……わからなかった。どうして俺の居場所がバレたのか。このナイフは的確に俺の背後から来た。たまたまなのかそれとも能力なのか」
苦い顔をしながら答える。
「大神答えは?」
急に言われても、多分今の夏麻の『わからなかった』に対することなのだろう。状況説明みたいな感じだ。ならありのままに話せばいい。
「え、ああ。神月がさっき俺に聞けって言っただろう?それを意識したらたまたま聞こえてきたんだ、声じゃなくて地面を踏みつける音とか服が擦れる音とかが」
「夏麻、貴方の能力は?」
「……伝導です」
どんどん声がか細くなる。これ以上の説明は無理と判断したのか神月が代わりに話し出す。
「簡単に言うと夏麻は音や熱、電気など様々物質を繋げることができるの」
「夏麻は連絡係になれるってことか」
「そう、離れたところからなら夏麻を介せば盗聴もされずに連絡を取ることができる。まぁ、それは夏麻に筒抜けにはなってしまうんだけど」
「でもそれが今回の勝敗になんの関係があるんだよ」
「関係大有り、能力だって万能じゃない。利点があれば必ず欠点がある」
「一つ例えをあげるとすれば、私には『他者の記録を見る』っていう能力がある。利点はその人の全ての記録を見れるということ。欠点は対象者への接触と時間がかかること。長くても十秒は触れていないと全てが見えない」
そんな能力隠し持ってたのか。
神月には触れない、会わない、近づかないを合言葉に過ごしていこう。会わないはほぼ無理だとは思うが。
「夏麻の伝導はさっきも言ったけど物質同士を結び合わせ伝える。特に夏麻の場合は無意識のうちに能力を発動してしまうことが多いの」
「それで俺に伝わったのか」
「夏麻の能力は特定者を想定しない限り、一番近い者に伝わってしまうの」
「これが……俺の弱点」
神月の話を聞き終えた夏麻は明らかに脱力しその場に座り込む。
「そう、でも今ここでわかったのはかなり大きい」
神月は夏麻の前に座り、諭すように続ける。
「夏麻の伝導。大神の聴力。二つがそればさらに拡大的に全ての人員配置を確実にわかるようになる」
「どういう意味だ?」
「これから大神が能力を高めていけば、聴ける範囲も音も多くなる。そうすれば確実に誰よりも有力な情報を掴むことができる」
能力を高めればそんなこともできるようになるのか。今はまだ偶然聞こえたり強く意識したりしないと何もないからわからなかった。
「けど、大神に聞こえただけじゃその先に繋がらない。そこで夏麻の伝導で他者に邪魔されずに伝える必要性がある」
「なるほど?」
わかったような、わからないような。
「そしてそれは時として一刻も要する時がある。どんなに離れていても繋げられる必要性。夏麻には『無意識に』大神との伝導ができるようになってもらう」
そう高らかに宣言された。




