使い魔
能力がわかって家に帰ってきてから一週間。クラスの生徒は俺がいなかったことなどなかったかなかったかのように接してきた。
「どうなってるんだ」
稲荷神社についた俺は神月を問い詰めた。
「理由はこれ」
そう言って見せてくれたのは、尻尾が二本に分かれた狐。しかし、狐には珍しく白色をしている。
「私の使い魔でもあるフィズ」
「この狐がなんだっていうんだよ」
狐扱いに神月は少し苛立ったのか、声が鋭くなる。
「……フィズ、変幻」
そして姿を見せたのは俺自身だった。
「狐川と同じ能力?」
頭をよぎったのはそのことだった。前に狐川にも同じようなことをされたからだ。
「少し違う。フィズの変幻には制限がある」
「制限?」
「フィズ自ら、もしくは主人である私が見たことがあるものでないと変幻はできない。それと大きさも、フィズの十倍の大きさが限界」
このフィズからして俺は変化できる範囲内ってことだったため、オレに代わり学校生活を送っていてくれたみたいだ。
「そういえば前に妖には使い魔は使えないって言ってたな」
「使い魔の契約は、神の使いの者のみ。独立している妖とは違って使い魔は主人の神力を食べて生きてる」
「それが使い魔と妖の違い」
この両手に収まるほどの大きさなのに、自らだけでは息をすることすらできないのか。そんなことを思いながらすり寄ってきたフィズを抱き上げる。
「大神はフィズに感謝した方がいい。一週間能力を使い続けるのは慣れている使い魔でも難しい。いつフィズが倒れてもおかしくなかったんだ」
「そうだったのか。ありがとう、フィズ」
ならなおのこと神月の神力の消耗も大きかったはずだ。
「でもどうしてそこまでしたんだよ」
「仕方ないでしょ、今回休んだら留年だったんだから」
「は?」
「月宮さんが亡くなって以降、二学期が始まっても学校には来ないし。一学期も三回休んでたから」
言われてみれば、俺は月宮が休んだ日に同じように休んでいた。理由は簡単で起こされなかったからだ。
「俺、二学期始まりと同時に留年?」
自らを指差しながら聞く。
「その通り、あなた留年。私進級。あなた、後輩。私、先輩」
いちいち俺と神月を交互に指しながら説明される。
喧嘩売ってんのかこいつ。
「ま、そんな感じだから今回はフィズを使っての学校生活を送ってもらったの」
「じゃあ、この前言ってた能力強化はどうなるんだよ」
「それは放課後、学校から帰ってきたときにやるから支障はないはず」
学校生活に対する支障はないだろうが、俺に対する支障は破壊されないだろう。きっと。
そんな不安と現実のものにする特訓が始まった。




