聞こえる手がかりに惑わされ
もう四日も経ったが手掛かり一つ見つけ出せない。
「全然わかんねぇ」
「今のところ全て全滅か」
寝そべる俺の横でメモをとり続ける神月。そこには今まで開けた宝箱の内容と場所。その時能力が発揮できたかどうか。当然のことながら能力のところには全てバツ印。
「ずっと屋外にいた気分だったけどやっぱり室内だったんだな」
「どうしたの、急に」
「天井を見てそれを思っただけ、星空が見えるかなって思ってたけど」
照明が落とされたのか、あたりは真っ暗になる。今明るいのも荷物の中に入れておいた懐中電灯のおかげだ。
「そういえば、一緒に見たっけ?」
「見たな。一ヶ月しかまだ経ってないけど」
濃い時間を過ごして今ここにいる。
「それで明日はどうするんだ?」
「あと行ってないのはこの崖の上かな」
指差された方を見上げて、一気に幻滅する。
「まさかこれ登るのか?」
「それ以外方法はないし」
……さいですか。
***
崖登りではなく獣道をただひたすら歩く。足元も悪ければ、気を抜けば迷子になるレベル。その間にも宝箱は見つけるもののどれも全滅。
「まだ頂上にならないのか」
「あと二時間くらい歩けば行けると思うけど」
「嘘だろ。ちょっと休憩」
「三十分前にも同じこと聞いた」
「だって……。ん?」
微かに聞こえた音に対して静かに耳を澄ます。
「水の音?」
「え?」
「こっちの方から水の音が聞こえてくる」
そうして意気揚々と木々をかき分けて突っ走る。そうすると光が一気に差込み惹かれるように一歩、また一歩と進む。足元を見ることなく。
「大神、危ない!」
俺がだした一歩はそのまま地に着くことなく空中に放り出される。一瞬のことに思考も追いつかず、何度目かの死を覚悟。する前に左手を掴まれハンマー投げの如く振り回されてて木々の方に投げられる。そして、俺の手を掴んで助けてくれた神月は勢いで宙に放り出された。
「神月!」
投げられたことに反応が遅れた俺は神月を助けようと手を伸ばすが、届くことなく神月はそのまま落ちていった。




