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稲荷神社の妖達  作者: 朝凪
能力編
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地下の秘境

狐川の作業も無事終了した連絡を受けた俺たちは早速さと月宮の家を後にした。


「これで元の場所に戻った」


「身体だけな」


「嫌な言い方」


「事実だろ?」


結局肝心なものは何も見つかっていない。痛いところを突かれたのか、苦い顔をする。けれどすぐに戻って一つ決心する。


「今回の件は狐川に一任する」


「は?なら俺はなにするんだよ」


「能力を探す」


能力。その言葉を聞いたのもまだ一ヶ月しか経っていないのに久しぶりな気がする。


「そんなことしてる場合かよ」


「悪いけど、これに関しては拒否も否定も受け付けない」


「今までだってなかっただろう」


「今まで以上に」


「脅迫だな」


そうかもねと悲しい笑みを浮かべいった。


***


稲荷神社の湖のさらに奥。秘境といっても過言ではない場所には一つの洞窟。それを突き当たりまで進むとどうやって入れ込まれたのかわからないエレベーターがあった。神月が近くにあったスイッチをしばらくいじると扉が開いた。

それに乗り下へ下へとどんどん降りていく。


「あ、神月さん!三十二時間振りですね」


「……そうだね。元気そうで良かった」


若干引き気味で返事をする。


「そちらのお客様が今回の依頼ですか?」


神月の後ろからひょっこりと顔を少女が顔を出す。戸惑いながらも会釈をする。


「けどその前に手合わせかな」


「わあ!ならお師匠様呼んできますね」


その言葉に喜びを隠せない少女は一目散に奥へと走っていく。


「今の子は?」


「ここの一番弟子ってところかな。それと、大神の後ろにいるのがそのお師匠様」


振り返れば間は五センチもないところに顔があった。


「うわぁ!いつから」


「来た時からずっと後ろにいたよ。かなりの変わり者だから気をつけた方がいい」


「やはりお前には気づかれていたか。本巫女」


「これぐらいわからないと本巫女などやってられませんから」


「ほぉう。なら手慣らしついでに一つ手合わせをしようか」


「そのために今千に呼びに行くせましたよ」


「まじか!」


膝から崩れ落ち両手も床につく。


「わしの一番弟子はまだわしの気配にも感づけんのか」


「貴方よりも私が来たことに気を取られただけだと思いますよ?」


ぐわっと顔を上げて叫ぶ、


「問答無用じゃ!千の仇つけてやるわい」


そう言って投げられた竹刀を神月が拾い上げると同時に、隙をつくようにして襲いかかる。


「合図もなしにスタートとは随分姑息なことをしますね」


拾い上げた竹刀でうまく躱す。


「長い付き合いのお前ならわかってただろう」


「さぁ?どうでしょうか」


余裕綽綽の笑みで答える。


「なら次はこうじゃ!」


二人の攻防は進めば進むほど激しさを増していく。


「あー!ちょっと!せっかく呼びに行ったのにもう始めてたんですか!」


戻ってきた少女は心底残念そうにしながら走ってきた。それに気がついたお師匠様は一瞬の隙でこちらを見る。


「えい!千!お前は破門だ!」


「なんでですか!お師匠様!この間棚にあったお饅頭食べちゃったのは謝りますからご勘弁を」


「な!」


その驚きと同時にお師匠様は足を滑らせてそのまま後ろにひっくり返る。その隙をついてお師匠様の喉元に竹刀を突き立てる。


「これで詰みですね?」


「ぐぐぐ。千!お前は後で手合わせだ!」


負けたことが悔しかったのか力の限り叫ぶ。


「ななな!なんでですかお師匠様〜」


こちらも自分との手合わせが嫌だったのか既に涙目になりながら叫ぶ。

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