三つの根拠
それからは紡さんとゼル、神月の三人によって進められた。俺には何をやっているかはさっぱりわからなかったが二時間ほどして、神月から終了の声がかけられた。
「それで何がわかったんだよ」
既にゼルと紡さんは帰り、居間には俺と神月、狐川の三人だけが集まっていた。そして俺はそれを開口一番に聞いた。
「私の予想は当たってた。ゼルの回収地点よりも先に何者かによって回収されていた」
「それでそいつは誰なんだよ」
急かすような口ぶりで聞く。
「それはまだわからない。ただ、かなり絞り込めた」
「そう言えるだけの根拠は?」
仲介役として同席している狐川からも問われる。
神月は人差し指を立てる。
「まず一つ、死神だけが扱うことを許される灯籠を使い魂を回収したこと。相手はかなりの知識と技術を持つ人物」
次に中指。
「二つ、ゼルに聞いたんだけど三ヶ月ほど前にある死神がその灯籠を紛失させてしまっていた。灯籠自体その仕事の時のみに使者の人数分しか渡されない」
その次は薬指。
「三つ、黒蝶の仲間である可能性が高い」
「黒蝶って?」
狐川は何かに気がついている様子もあるが、俺には聞き馴染みのない名前だ。
「月宮さんを殺したロベリア、シレネの所属する名」
「それって!」
「そう、魂回収した奴もその仲間。あくまでまだ可能性ってだけ」
「なぜまだ可能性なんだ?」
「身体から回収した記録から左手首に黒蝶の紋章が描かれているのが見えた。けど、確定ではない。もしくは、そういうことにして黒蝶とこちらでの潰したいを望んでいる組の罠という可能性が残されているから」
もしかしたら、月宮を殺した奴らの仲間かもしれない。それだけで拳に力が入る。
「これでこちらからの報告は全て」
「それで月宮さんはどうするの?」
狐川からの質問に予定していた通りの答えを提示する。
「明日、改めてこちらで月宮さんを火葬する。そして、月宮さんの自宅にある納骨と交換して今回は終わりとする」
「それって……」
「もう一度、明後日月宮さんの家に向かう」
***
学校にいるはずの時間に制服を着て俺の隣の月宮の家の前に立っていた。
「そんなに緊張しなくていい。手筈通りこちらで全て完遂させる。頼んだよ、狐川」
黒いマントに身を隠した狐川に言う。
「了解」
その言葉が作戦開始の合図となる。
インターフォンを鳴らせば間も無くして「はい」と返事が聞こえる。
「神楽高校一年で月宮鏡さんと同じクラスの神月雅と申します。急に押しかけて申し訳ありません。先日の葬儀に参加できなかった為、ご挨拶をさせていただきたいと思い訪ねさせていただきました。お時間少々よろしいでしょうか?」
奥さんは「そういうことなら」と家に招き入れてくれた。部屋の片隅には既に月宮の仏壇が置かれていた。俺たちはすぐに挨拶に向かった。しばらくしてから、奥さんがお茶を用意してくれたので頂くことにした。
「まさか錫牙君まで来てくれるなんて思わなかったわ」
「一応、学級委員ですし。神月さんが家を知らないというので」
「ありがとう、最後に貴方と会えてきっと鏡も喜んでいるわ」
「最後?」
「まだ言ってなかったわね。私達ここから引っ越すことにしたの」
「本当は鏡も好きなこの街でこれからもと思ったんだけど、あの子がいたであろう場所が誰かに埋められるわけでもなく。ただそんなのはなかったようになるのが耐えられなくって」
当然として隣にいた。
家族と同じくらい共に過ごしていた。
そんな人達がここを去っていく。
「なら、最後に──」
後悔がないように。




