魂の裁判
「見つからないってどういうことだよ」
立ち上がった紡さんが説明をしてくれる。
「死者が天界か冥界どちらに行くかというのは、あちらの世界での裁判で決まります。その判決は亡くなって一週間も経てば出ているはずなのです」
「それなのに見つからなかった?」
「はい、私の判断ではありますが生前の経歴からして月宮様は罪にあうようなお方には見られませんでした」
神月は紡さんを疑うことなく、考え込む。
「それは月宮の魂が裁判にすらかけられてないってこと?」
「その可能性ともしくは……」
「二度と転生できないところにいったか」
「それって……」
思わず口を挟むが、ここにいる三人が誰一人としてその後の言葉を口にはしなかった。
「しかし、それはないかと」
神月は考えを巡らせて、月宮が亡くなったところをに跪き手を添える。
「ここの管轄はゼルか」
「そのはずです」
ゼル。
また聞いたことのない名前だ。でも今までの話からしてそのゼルという人物なら何か知っているかもしれないのだろう。
神月は何かを決心したように手をグッと握り立ち上がる。
「時間はあまりない。私はゼルに仕事をしたか聞いてくる。紡、また何かあったら連絡する。今日は夜遅かったのにありがとう」
「もったいなきお言葉。お待ちしております」
「大神は……」
まさかのここに一人置いていかれるパターンなのか。そんな予感が頭を掠めた。
しかし、神月はとある存在に気づいたらしく一安心といった表現をする。
「いや、必要ないみたい。夏麻お願いね」
「ちぇ、やっぱりバレてたか。了解」
俺の後方の草むらから出てきた夏麻はやれやれといった様子で了承する。
「四季には朝方に帰る。何かあればフィズを連れて行くから知らせると伝えておいて」
フィズってなんだ。
ゼルと同じようなものなのか。
「みーや、気をつけて」
「大丈夫、ゼルは他の奴とは違って野蛮なことはしないから」
「でも油断は禁物だよ。奴ら権力だけはあるからみーやのことどうとでもできちゃうんだから」
「そんなに危険なやつなのか?」
「構えすぎ。ゼルにそんなことする勇気は多分ないし、そもそもやる気もないよ」
「けど!何かあってからじゃ遅いんだから」
更なる注意を促すように伝える。それを受け取った神月は夏麻に近づいて頭をスッと撫でる。
「心配してくれてありがとう。夏麻の言葉とどめておくよ。それじゃあ、いってきます」
そうして、神月は森の奥へと姿を消していくように向かって行った。




