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稲荷神社の妖達  作者: 朝凪
能力編
32/93

繋げ屋

稲荷神社に到着すると、俺たちはそれぞれ布切れから降りる。三人とも降りると、神月と少し言葉を交わしてからそいつはそのまま空へと姿を消してしまった。


「狐川はもう休んで大丈夫」


わかっていたという表情をしながら。けれどと引き下がらずに抗議するが。


「あとは私と大神二人で話したいことがあるから」


それを言われ、狐川は諦めた様子で分かったとそれだけ言い残し帰っていった。


「さてと、夜も遅くて悪いけど大神はまだ私に付き合ってもらうから」


そう言って強制的に神月の後をついて歩いて数分、まず連れてこられたのは月宮が亡くなった場所だった。


「なんでここなんだよ」


「ここが一番月宮さんの温もりが残ってるから」


今でも直視できずに視線を外す。


「人の心の傷を抉り出す真似して楽しいかよ」


「そんなつもりはない。ただ、私も逢いたいから」


逢いたい?一体誰にだ。

神月は月宮が亡くなった辺りに屈むと狼のマスコットをそっと置いた。

そのマスコットは前に月宮がポーチにつけていたのによく似ていた。


「紡、始めて」


どこに隠れていたのか、後ろから一人の女性が現れる。花魁という姿に近い着物の着崩し方に、虜のなったものは逃さないという目つき。そしてなんといっても今までに見たことがない豊胸である。思わず見とれてしまう。


「かしこまりました、お呼びするのは月宮

鏡様でお間違いないですね?」


「この人は?」


「繋げ屋という仕事をしてる紡。彼女は死者の魂と生者を繋ぎ合わせることができるの」


「つまり、俺は紡さんの能力で月宮に会えるってことか?」


そうですという顔で説明をする。


「私の能力は、死者の思いが強ければ強いだけ色濃く反映されます。そのためこの場所に連れてきてもらったのです。嫌な思いをさせて申し訳ありません」


「いえ、大丈夫です」


「早速で悪いが始めてくれ紡」


紡さんはかしこまりましたと、もう一度頭を下げて言う。


「死者 月宮鏡をこの場で繋ぎ合わせの糸を結ばせていただきます」


すると、先ほど神月が使った糸と同じようなのが重力に逆らいながら天高く上がっていく。その間も祈りを捧げ続ける紡さん。しばらく、そのままでいるとプツンと切れたように糸が天から落下してくる。その様子に驚いた紡さんはもう一度とまた試してみるが結果は同じ。


「何故?これほどまでに思いが強い場所なのに」


違和感を感じ取った月宮が間を空けずに聞く。


「何があったの?」


その声掛けに答えるよに紡さんは青ざめた顔で振り返る。


「申し上げます。月宮様の魂が見つかりません」


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