探しながら、見つけて
「俺が、惹きつけた」
あまり自分ではピンとこない。自らの手を見ながら自分自身でも知らない何かを知りたくて眺めていると。
「本来は満月の夜、妖力が著しく弱まった妖を襲い取り憑き意識ごと体を乗っ取る」
そして内に秘めた妬み恨みが力となり、なりふり構わずに人を襲う。ただ、俺の場合は周りにどれだけ人が居ようと妖力が強いせいで意図せずに引き寄せてしまうらしい。その代わりに俺自身が悪霊に取り憑かれ乗っ取られることは相手が俺の妖力以上でないと出来ないことだからほぼないらしい。
「強くなるのは大禍時から明け方まで」
「大禍時から明け方」
大禍時というのは多分、昼から夜へと変わる夕方の時刻くらいのことなのだろう。今考えてみると、俺は帰宅部だったため帰るのはいつも夕方になる前。下校はほとんどが狐川と一緒だった。大禍時に出かけることも一人で出かけることもあまりしない。そのおかげで必然的に大禍時は避けられ一人にならずに済み、狙われることはなかった。
「悪霊ってのは室内に入ってくることはないのか?」
「場合によるが……大神の家は平気」
なんとも曖昧な答えだが、俺の家は平気だと確信している。神月には俺の家が平気だと言える確固たる理由があるようだ。
「俺は、これからどうすれば良いんだ?」
その返答に誰もが口を閉ざす。
簡単にこうすれば良いと定義できるものではないから。
「とにかく、今まで通り過ごして少しずつ理解しながら探していくしかないんじゃない」
狐川の言う通りこれから模索しながら考えるしかない。俺はぐっと唇を噛みしてるとある疑問が生まれた。
「……月宮はこの件に関して巻き込まれたりするのか?」
これだけは確かにしておかなければならないことだ月宮にはこれ以上自分に関わることで妙なことに巻き込まれてほしくはない。
「少なくとも大神が関わっている以上無関係にはならない」
自分が妖だったという事実よりも重く突きつけられた気がする。
「なら、俺と月宮の縁を切れば」
そもそも月宮が変にこれ以上俺のことに巻き込まれる必要はないのだ。
「縁切りなんて簡単に口に出さないほうがいい」
あまりにもその目つきと言葉に冷たさを感じ俺はでもと続ける気が失せた。またも沈黙が時間を支配する。すると、静かに襖が開けられる。
「みなさんこちらにいらしたんですか」
「どうかした?」
襖から入ってきた四季はタスキで着物の袖をたくし上げ、肩まであったか髪は後ろで一つにまとめられていた。
「はい、8月31日に行われる夏祭りに使う提灯の作成をしていて。あ、まぼろ様もこちらにいらしたんですね!探しましたよ」
「え、あ……うん。ごめん」
もうと膨れる四季。狐川が遅れた理由はその夏祭りに使われる提灯の作成のためだったらしい。この夏祭りは覡町の一大行事で俺も毎年のように参加している。
「もう用は済みましたか?なら、さっさと作業に戻ってください。ただでさえ人手が足りなくて困っているというのに」
「あ、その人手のことなんだけどさ。助っ人連れてきたんだ」
「助っ人ですか?」
「そうそう」
と狐川は何食わぬ顔で俺の方へと手を回し、自らに引き寄せる。
「な、助っ人さん」




