近くにいる、知らない事実
半分。その言葉には疑問しか浮かばない。
「大神、貴方の中には人間と妖の血が半分ずつ流れている」
何を言っているのかさっぱりだ。
そんなことをお構い無しに神月は続ける。
「純血の人間でも妖でもない。大神、貴方は混血の半妖と呼ばれる部類に当たるだから半分正解。そのため不安定な状態が今もなお続いてる」
「半妖?混血?ちょっと待て、わけがわからないんだけど」
「端的に話したつもりだったけど?信じられないの?」
それは先程の狐川のことよりも信じられないことだった。なんせ自分自身のことなのだ。簡単に信じれるはずなどない。
「当然だろ」
神月の言葉に自分でも驚くくらいの声量と速さで否を唱える。そう答えるとわかっていたように、神月は驚きもせずに続ける。
「なぜ今までこの状況を黙っていたと思う?」
それは話を聞かされた時から感じていた疑問。けれど答えなど皆目見当もつかなかった。
「理由は簡単。大神、あなたを守るため」
「守る?」
「そう、今までだって大神のことは生まれてからずっと守る元いい監視をしていた。中学から今まで狐川とクラスが同じだったは、狐川に大神の監視をさせるため」
「それだと、学校のやつらは俺が人じゃないって知ってるみたいだな」
やけくそになりながら神月に言う。
「いや彼らは知らない。多分、大神のご両親ですら知らない」
「じゃあ、誰が知ってんだよ!親も知らないこのことを他に誰が!!」
半ばキレながら神月に言い放つ。生まれる前から俺と一緒にいた親ですら知らないことを誰が知り得たというのだろう。でも、神月は答えを知っているのか冷静に続ける。
「いるだろ、もう一人生まれてから当たり前のように一緒にいる人物が」
俺には兄弟はいない。強いていうなら祖父母になるのだろうが近くに住んでいるわけではないため会うのは年に一回の正月くらい。言葉からするに常に俺のことと共に行動ができる人物。
そんなのは一人だけ。
「……月宮、鏡」
思わずその名前が出た。何の根拠も証拠も裏付けもない。でも、それ以外が思いつかなかった。
「そう、月宮さんは大神が人ではないとこを知っていて、尚且つ常に大神のことを監視していた人物」
「……嘘だ」
「なら月宮さんが何故いつも朝起こしに来てくれていたと思う?」
「…………嘘だ」
「月宮さんに関しては何故幼稚園からずっと同じクラスだっと思う?」
「………………嘘だ」
「月宮さんが何故家族同然として一緒にいたと思う?」
「……………………嘘だ」
神月が話す言葉に一語一句全てが受け止めきれなくて受け入れなれなくて全てを嘘だと否定する。
「全ては大神のことを監視するため」
「嘘だ!!!」
先ほどよりも強く神月の言葉を否定する。だが、今考えるとおかしな点が納得がいく。
「それじゃあ、月宮が俺が人間じゃないって知りながら十五年間も過ごしてたって?何の冗談。それなら、何であいつは俺が人間じゃないなんて知ってんだよ。可笑しいだろ?親でも俺自身ですら知らなかったことなのに」
そう、だいたい人間じゃないというのなら何だというのだろう。狐川と同じで九尾の狐か?はたまた、それ以外か。
「……月宮さんは人間。彼女の役目は主に監視のみ。大神が人間じゃないことを知ってるのは特徴があるから」
「なんだよ、特徴って」
「色々あるけれど」
そういうと神月は一歩近づき右手を俺の胸の前にかざす。
「共鳴」
その瞬間、自らの胸から一音が聞こえる。
「人間なら老若男女問わずDつまりレの音が聞こえる。けれど人間じゃない……妖の類だと聞こえる音はEつまりミの音になる」
「それで俺のは?」
「レ♭。人と妖の間の心音」
すとんとその言葉が降りてくる。ここまでの話から予測はしていた。だからこれと言って驚くこともなく、そうかと理解するように受け止める。するとふと疑問が生まれる。
「神月、お前は何でそんなことできるんだよ。お前も人間じゃなくて妖なのか?」
「私は違う。人ではあるけれど、昨日四季が『本巫女』って言ったの覚えてる?」
その話はなんとなくまだ頭の片隅に残っている。本巫女とは一言だと神の総長に使える巫女のことだったと思う。
「今日話したこと考えてほしい。これからどうしていきたいのか」
「これからってなんだよ」
次に来るのはわかっている気がした。新たな事実を突きつけられた俺に対しての選択。
「自分のことから逃げるか、受け止めるか」




