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稲荷神社の妖達  作者: 朝凪
プロローグ
2/93

夏休みの始まり

今日は、俺と月宮が通う高校『神楽高校』の一学期終了式だ。これで、長い長い夏休みが始まる。と言っても、この間に各教科ごとに出された課題に赤点者は夏休み二週間使って行われる補習参加など中学生の頃より面倒なことが増えている。これを一年生の頃からやる意味はあるのかと積まれた宿題をぼうっと見ていると。


「なんかぼけっとしてるな」


「狐川」


そう俺に話しかけてきたのは、中学から同じクラスの爽やか笑顔の青年面の狐川まぼろだ。


「この量の課題にへきへきとしてただけ」


確かにと同調しながらと俺の前の席に座ると、そういえばと思いついたかのように質問をしてくる。


「夏休みはどっか行くの?」


「いや、予定はないから多分家にいると思う」


「なんだ、寂しい青春の幕開けだな。どこか行ってお土産でも期待してたのに」


「ほっとけ。行ったとしても土産なんて買ってこない」


ひどいなと全くそんなことを思っていないだろうに言ってくる。そういう狐川はどうなのかと聞くと、僕も同じだと苦い顔をする。


「そもそもこの辺遊びに行くようなところないしな」


覡町自体田舎というわけではないのだが、駅前にカラオケやゲームセンターがあるわけでもない。出かけるとなると電車で三十分かけてショッピングモールに行くくらいだ。


「そういえば、新しい服が欲しんだ。付き合ってくれないか?」


なんと嬉しくない誘い。

誘われるならもっと可愛い女子がいい。

けれど、このままでは夏休みの期間中バイトか用があってコンビニに行くくらいしかやることはないだろう。


「出かけるのはいいけど。服か……」


「大神ももう少しは自分の服装ってのにも気を使ったら?こないだもなんかよくわからない……ボール?買ってたじゃん」


「あ・れ・は、小型プラネタリウムだ!」


ちょうど先週、俺は高校生になると同時にやっていた派遣のバイトで得た給料を投資して小型プラネタリウムを購入した。


「そうそれ。別にこの辺り街灯がないから結構星観れると思うけどそれじゃダメなのか?」


「何言ってんだ。確かに覡町は街灯は少ない。けどな、星は月光によって見えない時があるんだよ」


「そんなに重要?」


「当たり前だ。その日が満月か新月かだけでもえらい違いなんだ」


と反論するとちょっと引き気味にそうとだけ答える。


「でも出かける時毎回同じ服装ってもの飽きるだろ」


「いや別に全然」


秒の返答に劣らず狐川も応える。


「いや、一緒に出かける僕が飽きるから。僕のために服を買おう」


その言い方だと狐川が俺の彼女のようだ。しかし実際問題、今持っている服はどれも二、三年以上着続けているものばかり。だいぶ、いやかなりくたびれてはきている。何か一つくらいは買っておいたほうがいいかもしれない。


「わかったよ。ならいつにする?」


「そうだな。……それは後で相談しよう」


別に今でもいいだろうと。思い教室の入り口に目をやると担任が入ってきていた。きっとすぐにHRになるだろう。それを察して、じゃあと自席へと狐川が戻っていくのと入れ違いに担任から声をかけられた。内容は、夏休み中に行われる説明会に使われるプリント手伝いだ。初のHRでただジャンケンで負けただけなのにも関わらず、無理やらされた学級委員長で何故こんな雑用を押し付けられなければならないのか。

不満を抱えながら放課後、月宮とは真逆な副委員長の少女。一本の糸のような黒髪に、化粧などせずとも透き通るような肌。そして、誰をも魅了させる桃花眼の神月雅と作業をする。元から仲がいいわけでもない。出身中学も同じだが、今年初めて同じクラスになった神月。お互いに特に話すこともなくただ黙々と。本当に空気が流れる音が聞こえてきそうなほど。

全ての作業が終わる頃、時間は十六時手前を指していた。

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