人間なのか
結局、朝食を食べてから休憩なしで約四時間夏麻の部屋の片付けに明け暮れた。神月は夏麻に一つずつこれはいるのかいらないのか。どこに置くかなどを細かく聞いていた。なぜ聞くのか尋ねると、自分自身でどれを捨ててどこに置いたのかわからせるためらしい。なので、俺も同様に夏麻に聞きながら進めた。そうして午前中の片付けは四季が昼食に呼びに来るまで続いた。
昼食を食べ終わると先程の片付けは冬歩と四季に交代される。それについていく形で狐川も居間を出て行き人払いをする。
「さて、大神。色々聞きたいことがあると思けど、何から聞きたい?」
神月が注いでくれたお茶に口をつける間もなくどストレートに言われる。昨日の夜からずっとこの時まで色々考えてはいた。でも、何から聞いたものかと悩んで、率直に突拍子のないことを聞いてみた。
「俺は……人間なのか?」
どうしてこんなことを最初に聞いたのか自分でもよくわからない。ただ、昨日見たものが人には思えなかった。もしかしたら、自分も同じなのかもしれない。そんな思いを消したかったからなのかもしれない。
「それは、半分正解」
「半分?」
「正確に言うと、大神貴方の中には人間の血と妖の血両方が身体の中に流れている」
思わず息を飲む。俺は声が震えながらゆっくりと聞いてみる。
「つまり、俺は……人として生きることが、今まで通り生活が出来なくなってことか?」
「そんなことはない。ただ、強いて言うなら昨日のことが日常茶飯事のように起こるようになる可能性があるそれだけ」
それだけという言葉に安心と同時に不安に駆られる。でも、確実に今までの俺の平穏は崩壊しかけている。
「俺は死ぬのか?」
「その問いの意味は『人じゃなくなることで今すぐ死ぬか?』という意味でいい?」
ああと小さく返事をする。
「人間の血と妖の血が混じり合う者が長命だったのは数少ないが今すぐと言う訳ではない。ただ、昨日のように狂い出したら一気に近くなるだろうな」
血の気がサーっと引く。神月が言っていることは嘘ではないのだろう。でも、受け入れられない。別に最高年まで生きてギネス記録を更新したいとか百歳まで生きたいという目標はない。ただ、今を生きるそのタイムリミットが平均よりも短いであろうと宣告された。それに戸惑いしかない。そんな俺の様子を見て神月が声をかけた。
「大神、少し外に出よう」




