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稲荷神社の妖達  作者: 朝凪
プロローグ
13/93

呼び方

夏麻の部屋を後にし、少女と廊下を歩いている。


「あ」


なにかを思い出したかのように声を出す。


「どうかした?」


「そういえば、自己紹介まだでした」


言われてみれば、夏麻は先ほど聞いたが思いっきりタイミングを逃していた。


「私、灰冬歩です。夏麻とは双子で妹です」


「双子!?しかも妹って」


耳を疑った。


「あ、やっぱり驚きますよね」


「そりゃ……ね」


夏魔の部屋での出来事を思えば尚のこと。兄妹とは思っていたが、まさか双子でしかも夏麻の方が兄だったとは。


「よく言われるんですよね。『逆でしょ』って」


「しっかりしてる感じするし」


「そうですよね。みーやんほどではないけれど私しっかりしてるように見えますよね」


「そう、だね」


あまりの押しっぷりに若干引きながらも答える。褒められると調子に乗るこの双子はそういうタイプなのだろう。話題を逸らそうともう一人名前を聞きそびれていた神月の妹のような人物を思い出す。


「あと、夕飯作ってくれた……」


神月達が呼んでいた名前を思い出そうとすると。


「四季ですね」


「そうそう、四季さんも自分から料理をしててしっかりしてる感じがする」


「見た目だけなら小学生がお母さんの代わりにお手伝いしてるって感じですよね」


「俺が同じ頃なんてそんなことお構えなしに遊んでたよ」


「みんなそうじゃないですか?四季の場合は見た目の割に歳いってますよ」


「え、そうなの」


黒髪ボブで和服の似合う四季は側から見れば小学三年生くらいに想える。


「はい。『合法ロリ』っていうのができるくらいには」


そんな言葉どこから仕入れ覚えてしまったのだろう。今すぐにでも忘れさせた方が身のためだと思うのだが。


「まぁ、女性に年齢を聞くのはマナー違反で良くないので聞かない方がいいと思いますけどね」


その言葉に本人に聞こうと思った言葉を引っ込ませた。


「それと、四季のこと『さん』付けしなくていいと思いますよ」


「なんで?」


合法ロリなら確実に俺よりも年は上だ。


「本人が嫌がると思います。理由は教えてもらったのとないですけど。それと、私のことも呼び捨てにしてもらって大丈夫ですから」


冬歩に関しては夏麻との兼ね合いもあることだしもともとそのつもりだった。が、四季はどんな理由があるのだろうか。それに俺はまだ四季の名字を聞いていない。気にはなったが知り合って初めてあった人間がそこまでズケズケとプライベートのことを聞くのは失礼だろう。俺は、呼び捨てにすることを考えながら返事をした。

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