散乱した部屋
食事を終え、食器を流しに持っていくと「洗い物は俺がする」言われ預ける形となった。それから狐川に「風呂に入ってこい」と言われた。確かに、走り回ったおかげで汗で服が肌に張り付いて気持ち悪い。しかし、寝間着がないと言うと狐川はすかさず寝間着を持ってきた。俺は躊躇いながらもそれらを頂き、風呂へ狐川に案内してもらった。
風呂場の前の扉に掛かっていた札を入浴中に変え俺は中に入った。脱衣所で服を脱ぎ、いざ風呂へ向かう。檜風呂。さすがに驚いた。俺自身、檜風呂に入るのも初めてだしこんな場所で巡り合うとは。俺は、体を洗った後に恐る恐る湯船に入った。普段とはあまりにも違いすぎて緊張してしまう。お陰で、ゆっくりと湯船に浸からずに出てしまった。何かを考えることはぜずに。
着替えを終え、戸を開け入浴中の札を裏にする。
「あれ?もう出てきたんですか」
不意に声をかけられ右の方を見ると一人の少年が立っていた。
「もっとゆっくりしてても良かったのに。もしかして、びっくりしました?そりゃこのご時世檜風呂の家なんてそうそうないですから」
「えっと……」
笑みを見せながら話す少年。彼は先程の食事の時にもいた。名前は何だっただろうか。
「あ、そういえばまだ名乗ってませんでした。俺は、灰夏麻です」
「大神錫牙」
「よろしくです」
「よ、よろしく」
そう言いながら右手を差し出してきた、俺は戸惑いながらも右手を差し出し握手をした。そしてその手を強くに握られる。
「ところで──」
夏麻が言いかけた時、後ろから声が飛んできた。
「夏麻!こんなところにいた」
そうして駆け寄ってきた少女。夏麻と瓜二つといっていいほど似ている少女は、近づいていたと思った途端夏麻の左耳を引っ張り歩き始めた。俺は、一度離された手をもう一度掴まれ引っ張られるようにして歩く。
「ちょ。痛い、痛いって冬歩」
「そんなことより、これどういうつもりよ!」
二階に上がってすぐの部屋のと襖をバンっと開けられたと同時に夏麻の耳を引っ張っていた手が離された。そして、目の前に広がる散乱状態の部屋。
「これ、夏休みに入る前までに片付けるってみーやんと約束したよね?」
「あ、いや、これは……。そう、今から。今からやろうと考えていて……」
「なら、さっさとやって!お陰で、さっきみーやんに言われたんだから」
「え、みーやんが!それは……やばいな」
うーんと腕を組みながら考え始め、思いついたかのように顔を上げると俺の方を見て。
「お願いです。大神さん、手伝ってください」
「え、」
「何言っんてんの?それこそバレたらみーやんに何されるかわかったもんじゃないじゃん」
「……ですよね」
「とにかく、夏麻はさっさとこの部屋片付けて。大神さんは、私がまぼろんの部屋まで案内するから」
夏麻は小さく返事をし、俺たちは部屋を後にした。




