引き金
早くも3章、そして投稿頻度上昇中のうすたくです!って、ここまで読んでるって事は知ってるかな?
前置きはこの辺にしといて、それでは本編START!
「いきなり呼び出してどうしたのかしら?」
無人の公園で緑の髪の少女、冷鳴と青髪少女の華矢が向かい合っていた。
「ひとつ聞きたい事があってさ。」
華矢は冷鳴に質問を問いかける。
「無理には答えなくていいんだけどさ、どうして鏡歌とあんたは千羅さんを助けなかったんだ?」
冷鳴は黙り込む。
「鏡歌も答えてくれなかった。でも、なにか理由があるんだろ?」
「あれは千羅の自業自得、私らは無関係よ。」
続いて華矢が黙り込む。
「千羅の死は鏡歌にとっても私にとっても無関係な事なの。分かったらもう帰ってちょうだい。」
「待て、無関係ってどういう事だよ。」
冷鳴は鋭い眼差しで華矢を凝視し、口を開く。
「そのままの意味よ。あれは千羅の力不足。千羅が死のうと私ら2人には関係のない事なの。」
「・・・かよ。」
「なにか言ったかしら。」
華矢は目を大きく見開いて剣を構える。
「それでも仲間かって聞いてんだよ!」
剣を構えた華矢を目の前にしても動じずに立ち止まっている冷鳴。その余裕の表情はさらに華矢に火を付ける。
「できれば争いはしたくないのだけれど。あと、ひとつ言っておくと、私と鏡歌は千羅と共闘したことなんて一度もない。つまり私は千羅に仲間意識なんて持ったこともない。」
「そういう事じゃねぇだろ!」
冷鳴は首を傾げて「どういう事かしら?」とだけ言う。
「仲間じゃなければ誰かを見殺しにしても良いって事なのかよ!」
「だから彼女の自業自得って言ってるでしょう?」
冷鳴は表情を変えずに説得を試みる。だが、華矢の怒りは一行に治まらない。
「その怒りっぽい性格、治した方が身の為よ。すぐに自棄を持ってしまうのがあなたの弱さ。」
「あんたもクロネの奴と同じ事言うのかよ!あんたら2人を少しでも見直した私が馬鹿だった。見殺しにしたんだからお前らは殺人鬼だ!」
華矢は剣を持って殺しにかかる。それをサラリと避ける冷鳴。
シュッ!シャッ!
「ヒントを言うのならば、相手がどう避けるかを学習した方が良いわ。あなたの攻撃の立ち回り方は悪くないと思う。でも、敵を見ていない。それじゃあ強敵相手に剣は擦りともしないわ。」
「うるさいんだよ!」
怒りに身を任せて剣を振りかざすが、冷鳴は無表情でかわし続ける。
「それに、あなたはまだ夢喰少女の持つ本当の能力を知らない。」
「本当の・・・能力?」
ここに来て初めて華矢が冷鳴の言葉に耳を傾け、攻撃を一時的に止める。
「えぇ、その能力は大きく分けて二つ。一つは自分の持つタイプの武器の量産と変形。先日は鏡歌が、さらに前には千羅もやっていたんじゃないのかしら。」
華矢は記憶を巡らせる。するといくつか心当たりがあった。サメを殺そうとした時にハンドガンをランチャーへと変形させていた。鏡歌は骸骨にトドメを刺す時に斧の形を変形させていた。
「それが夢喰少女になった上で得られる能力・・・でも、量産をした所は見たことがないぞ!」
「実際に見せた方が早いかしら。」
冷鳴は右腕を高く上げ、それを右下へ振り下ろす。その手の先には4本の槍が存在していた。
「私の扱う武器種は槍。つまり私は槍の量産と変形を行える。あなたは剣を扱うのよね。慣れるまでには少々時間がかかるとは思うけれども、足を引っ張らない為にも練習をしておいてちょうだい。」
華矢は用意された槍を見つめる。
「あんたの実力が知りたい。この前の夢食怪物と戦った時、あんたは骸骨に直接大きなダメージは与えなかった。私は自分より弱い奴から指図はされたくない。どっちが強いかはっきりさせよう。」
冷鳴は深い溜息をつく。
「やらずとも結果は見えてると思うけれど、やらないとあなたは私の指示を聞かないのでしょう?ならばやってあげるわ。」
冷鳴は先程出した槍の中から一本手に取り、自分の目の前に構える。続いて華矢も剣を構える。
「行くぞ・・・」
華矢の合図と共にお互いの武器をぶつけ合う。
キィン!ガキィン!
武器が擦れ合う音が連続してなり続ける。
パチィィン!
冷鳴の振りかざした槍は華矢の剣を捉える。衝撃に耐えられず華矢は剣を離してしまう。その隙を見計らったかの様に冷鳴は大量に槍を作り出し、天高く放る。
(あの数の槍で攻撃するつもりか?)
予想に反して冷鳴は華矢を蹴り飛ばす。不意を付かれて華矢はバランスを保つことが出来ずに地に寝転んでしまう。
ガガガガンッ!
そこで先程放り投げた槍が華矢の脇と腕の間や顔の真横などに突き刺さる。
「・・・私の負けだ。あんたは私に一切武器で攻撃をしようとしてなかったのか・・・」
「なにやってるの!?」
無人だったはずの公園の入り口から罵声が聞こえる。
「思夢?」
声の主である思夢は槍に身を包まれた華矢に接近する。
「家を訪ねていないと思えば、こんな時間にこんな所でなにをやってるの!?仲間割れ!?冷鳴さんは華矢に恨みでもあるの!?」
思夢は冷鳴に鋭い眼光を向ける。
「桐生思夢、ちょうど良かったわ。夢喰少女になった人間が得られるもう一つの能力を知ってもらう上で、あなたにも聞いてもらえると嬉しい。」
「その前に華矢になにをしたのか話して!」
すると華矢は思夢の頬に手を添える。
「これは私が撒いた種だ。悪いのは私、だから冷鳴を叱ったりしないでくれ。それより、話してくれ、得られるもう一つの能力とやらを・・・」
冷鳴は2人を見下ろして息を大きく吸っては吐く。
「いつかは話さなきゃいけない日が来るとは思ってた。でも、こんなタイミングで話すことになるとは思っていなかったわ。夢喰少女になった人間が得られる二つ目の能力。それは引き金よ」




