夢
新作、夢喰少女の1話です!
これまで予告編とプロローグの二つを公開してきました!
夢喰少女が始まるということはつまり、同時に「引き篭もりの俺が刑務所で変な労働を受けている」が終わりを迎えようとしているということです!
長らく続いた引き篭もり生活も幕を閉じて、次は夢の世界ですよ!
いつか学園モノも書きたいですね!
話が長くなりました!それでは夢喰少女第1話、STARTです!
ここは・・・どこだろう・・・
見渡す限りの花園。下を見ても前を見ても一面に花畑が広がっている。
「あぁ、夢でも見ている気分だなぁ。」
桃色の髪の毛を持つ少女・桐生 思夢。彼女は今、夢の中の花の園にいる。花以外何もないその世界はまさに非現実的だった。
しかし、その彼女の夢は一瞬で地獄へと堕とされた。
「ん、何?この匂い・・・」
突然周囲から異臭がし始めた。花粉の臭い?いや、少し違う。表現できない不思議な香り。しかし、今の彼女はその異臭さえも受け入れられるほど清々しい気分であった。
この瞬間までは・・・
思夢の足下に突然激痛が走る。
「んあっ!」
何もないところで転んだ。いや、花はあるのだけれども・・・
地に手を付けると再び激痛が走る。
「んぐっ!」
気が付いた時には、先ほどまでの楽園は地獄に変わっていた。
一面にあった綺麗な花たちは全て赤黒い花へと豹変していたのだ。
「嘘・・・でしょ?」
彼女は驚愕した。変わり果てた花たちの姿に・・・ではなく、目の前の巨大な人食い花に・・・
「ぐわっあっあっあっ!!」
ドス黒い色をした花は特徴的な笑い声をあげる。
「あなたは・・・だれなの?」
「だれ?ぐわっあっあ!それでも花好きか?好きなら私の名前くらい知っておきな!アベンティスとでも呼んでくれ。」
「アベンティス?そんな花の名前、知らない。」
「そうか。ならば仕方ない。それよりわたしの目的は分かるだろう?」
アベンティスは思夢に対して質問を投げかける。
「食す・・・?」
「ご名答。ご察しの通り私は人食い花だ。人を食わなきゃ生きて行けない。だが、私はただの人食い花ではない。人ではなく、人の夢を食す人食い花だ。夢食い花とでも呼んでくれ。」
夢食い花と自分で名乗るアベンティス。
アベンティスは続けるように思夢に問う。
「お前はもう気付いたか?私が現れる前、お前は手と足に激痛を負ったはずだ。周囲の花を見ろ。」
言われたとおり花畑に目を移す。
先ほどと変わらず赤黒い花が大量に咲いている。いや、少しだけ違う。その花達はみるみる巨大化していき、人食い花へと化していっている。
「この地獄のような夢はな、私が死ぬかお前が死ぬかで終わる。逆に、そのどちらもが実行されないのならばお前が現実の世界に戻る事はできない。まぁ、私はお前を殺すつもりでこの場にきているのだがなぁ!」
アベンティスは自分の茎を巧みに操る。
ズドォン!
「なにが・・・起きた!?」
「あのね、私はあんたらの様な人の心も考えずに夢を壊していくやつが大嫌いなの。早く消えやがれ、夢喰怪物!!」
そこにはハンドガンを展開した金髪の少女がいた。
「思夢ちゃんだっけ?今助けてあげるからね。」
ズドォン!ズドォン!
ハンドガンとは思えぬほどの破壊力でアベンティスにダメージを与える。
「貴様!なぜここにいる!この世界は夢の所持者しかこれないはず。」
「申し遅れたわね。私は夢喰少女という戦士をやっているもの。まぁ、貴様らみたいなモンスターを倒してこういう子達を助けるのが役目なのだけど。」
「そんな事を聞いているのではない!どうやってここに来たんだ!」
アベンティスは再度同じ質問をする。
「どうやってここにか・・・それはそこにいる子猫ちゃんに聞いてほしいな。」
金髪少女の肩に一匹の黒猫が立つ。
「えー、説明、めんどくさいんだけど。こいつらには関係のない事だし、さっさと倒しちゃって。この子には才能があるんだ。夢喰少女として、いい戦力になれると思う。」
「まぁ、そう言う事だから死んで。」
金髪少女はハンドガンの照準をアベンティスに合わせる。
チュドォン!チュドォン!
「ぐ、ぐわぁ!」
「この程度じゃ死なない事くらい分かってる。死んだフリなんて意味ないよ。」
彼女はハンドガンを片手にアベンティスを撃ち続ける。
チュドォン!チュドォン!
「これでとどめだ。」
少女はハンドガンを空高く放る。
打ち上げられたハンドガンは姿を変えてランチャーと化す。
「私はもう二度と誰かの死ぬところを見たくないの。」
ランチャーの先端部分に黄色い球体が出来上がる。その球体はみるみる膨張していき、
「散れ!」
放たれる。アベンティスは自らの葉を盾として我が身を守ろうとするが、少女の光線は盾を容易く貫通する。
ズドォォォォン!
アベンティスは儚くも散っていった。
「あ、ありがとうございます!」
思夢は少女に抱きつく。
「馴れ馴れしい人ですね。感謝なんていりませんよ。困っている人を助けるなんて当たり前の事じゃないですか。」
「今現実世界の時間は7時半だよ。急がないと遅刻するよ。」
猫は思夢に警告する。
「遅刻って、どこに?」
「どこって、学校だよ。君はまだ学生なんでしょ?」
すると思夢は不意をつかれたような顔をする。
「じゃあ、夢を解除するよ。」
猫は少女から飛び降り地に足を付ける───
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「はっ!」
時計の針は7時半を指していた。
「本当に夢だったんだ。いやいや、そんな事考えてる場合じゃない!早く学校に行かなきゃ!」
思夢は急いで支度をする。
「いってきまーす!」
「あれ?朝ごはんはいいの?あら、行っちゃった。」
思夢は全力疾走で公園へ向かう。
「あ、いたいた!華矢ー!」
「遅いよ!思夢!なにやってたの!?」
「寝坊しちゃった。エヘヘ」
「思夢が寝坊なんて珍しいね。」
そんな会話をしながら2人の少女は通学路を歩いていく。
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「本当にあの子が私達の仲間に?大丈夫かしら。」
「僕の見た限りでは彼女は大きな戦力になるはずだよ。」
クロネの言葉に「ならいいんだけど・・・」と答える金髪少女。
「彼女だけじゃないよ。あの娘の友達も凄い才能を持っている。一緒に仲間にしちゃおっか!」




