代償の代償
「ふんっ!」
スバァッ!!
鏡歌の振りかぶった斧は見事に腕を切り落とす。
「清斧女鏡歌の持つ武器はこの場にいる夢喰少女の中で最大火力となるだろうね。でも、連撃数の少なさといいモーションの長さといい、隙は非常に大きい。でも、引き金を使えばそれを多少ながらも補う事が出来る。」
クロネが丁寧な説明を施すが、今はそれどころの話ではなかった。それを冷鳴がクロネに問う。
「どうして鏡歌は戦えるの?目は見えないんでしょ!?」
「それは彼女の引き金の内容にある。鏡歌の持つ引き金、<代償>は捨てた物の価値の大きさに応じて力を発揮する。そして、捨てた物は引き金発動直後から徐々に失っていき、それと比例する様に引き金による力も消えていく。彼女は引き金の代償として引き金を捨てた。でも、彼女にはまだ徐々に弱くなってはいる物の、引き金の力は残っている。そして、引き金という存在がなかった事になる。故に彼女の視力やこれまでに代償として支払った物は、引き金の効果に反比例して徐々に復活していく。」
それはつまり、ただ一つの真実を指していた。
「つまりは、引き金の効果が完全になくなった時には鏡歌さんの視力や、過去に失った物は治ってるって事?」
思夢の問いにクロネは頷く。
「第一、彼女は今後、二度と引き金を発動する事はできないけどね。」
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「まだ力は残ってる。引き金が残ってる内にこいつを殺さないと・・・。」
「オンミョオオォォォン!!!」
鏡歌は夢食怪物に正確に攻撃を当てる。ダメージも徐々に蓄積していってる用で、敵の動きは鈍くなりつつある。
「まだ効果は続いてる。あと3分ってところか?」
鏡歌はぶつぶつ呟きながらも戦い続ける。
「私達になにかできないのかな?」
思夢が突如としてそう言う。
「なにもしなくていい。鏡歌も鏡歌なりに責任を感じてるんだろうね。君達がどうこうするって話じゃないよ、これは。」
クロネは現在の状況を冷静に解析して、思夢の案を拒否する。
「っ!!」
声にならない声を出す主は、冷鳴だった。彼女は泣いていた。その涙の理由は分からない。でも、それに私達が突っ込むのが板違いなのは素人目でも分かる。
「鏡歌・・・だっけ?凄く優秀な戦士だ。これといって決定的な弱点があるわけでもないし、むしろ弱さを逆手に取ってる。でも、何か引っかかる物があるんだよ。なんていうんだろう、失ってはいけない物を必死に守ってる様な・・・。」
訊乃は鏡歌の戦いを遠目で見ながら言う。
「それはなんとなく私も分かる気がする。大切な物を失わない様にしてるような。それに、それを失ったら彼女は彼女でいられなくなってしまう様な・・・。」
華矢は訊乃の台詞に反応する。華矢の応答に心当たりがある様に、冷鳴は手をグッと握り締める。でも、3人はその真相を聞けなかった。
「オンミョオオォォォン!!」
突如、夢食怪物の身体が赤く染まる。先程までの邪心を纏っている様な紫色とは異なり、怒りを体で表現したかの様な、真っ赤な色だった。
「鏡歌ぁ!!」
それを即座に判断し、冷鳴は鏡歌を助けにその場から猛ダッシュで駆け抜ける。
シュウウウゥゥゥゥ───。
夢食怪物を中心に熱気が集中していく。これはまさか・・・。
「鏡歌、それは自爆よ!逃げて!!」
「えっ!!?」
あまりの唐突すぎる展開に、鏡歌は思わず声をあげた。
「思夢、華矢、訊乃。今すぐここから子供を連れて逃げるよ。あとはあの2人に任せよう。」
「え、で、でも・・・。」
思夢は戸惑った。確かに絶望的な状況だ。でも、2人を確実に助ける方法があるのではなかろうか?
「思夢!つべこべ言わずに逃げるぞ。爆発まで時間はない。せめて私達だけでも・・・。」
華矢の台詞に思夢は涙ながらに頷く。訊乃は夢の所持者である子供を連れてくる。
「お願い、どうか無事でいて・・・。」
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キュウィィィィィィン・・・
先ほどよりも赤く染まっている。冷鳴は鏡歌を連れて全力疾走で安全確保ができる場所を探す。クロネがいなければ夢喰少女は即座に外には出れない。
「爆発まであと20秒ってところかしら。どのくらい離れれば助かるかしらね。」
冷鳴は涙を堪え、冷静を装って言う。それを見た鏡歌は息を飲み込み、足を止める。
「えっ、ちょっと鏡歌!はやく!」
「冷鳴、どうしてお前はそんな自分勝手な事をしたんだ?これだけ時間があればヤツを倒せたかもしれないだろう?」
冷鳴は歯を食いしばる。まさかこんな事になるなんて思ってなかった。
「自分勝手はどっちよ。突然姿を現して、何をするかと思えば戦い始めるし、何度だって私を心配させて、何度だって私を怒らせて、何度だってふざけた様な真似をして、何度だって私に勇気をくれて、何度だって私を笑わせてくれて・・・、何度だって・・・、何度だって・・・、何度だって・・・。」
冷鳴の瞳からは無数の涙が零れ落ち、もう声は聞き取れない程にまで小さくなっていた。
チュドオォォォォ!!
背後からとてつもない程の爆風が襲う。周囲の岩などは破壊され、破片となって飛んでくる。幸い爆発の影響はほとんどない。成功だ。
爆発によって出現した煙幕が消えた頃、夢食怪物の姿はなくなっていた。
「「・・・はぁ。」」
二人同時にため息をつき、顔を向かい合わせて笑い合う。
「久しぶり、そしてただいま。目も見える様になったよ、冷鳴。」
「・・・。おかえり!鏡歌!」
二人は抱き合っては泣いて、笑った。
彼女達はクロネの救出が来るまで、二人で抱き合っていた。
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「計画は順調だね。僕の真の夢を叶えるにあたって、奴を殺す事は大きな進歩になる。」
クロネは夜空を見ながらそう言う。
「奴を倒すことは、僕の夢への大きな近道になるだろうね。僕の夢を邪魔するヤツは、誰であろうと許さないよ。邪魔なき新世界の誕生まで、もう少しだ。」
クロネは1人、笑みを浮かべてそう言った。
皆様こんにちは!この度は投稿が遅れてしまい、申し訳ございません。そして、引き篭もりの俺が刑務所で変な労働を受けていると夢喰少女共に、不定期でお休みさせて頂こうかと考えております。
突然で申し訳ございません。理由を説明しますと、失踪しかけそうだからです。なろうをやり始めて1年が経過しようとしている中、この頃義務感の中やっている所がありました。それは私のやりたかった小説投稿なのか!?という事を感じ、完全に失踪する前に、一時的に休養を取るという考えに至りました。本当に突然で申し訳ございませんでした。
いつ頃復帰するかは未定ですが、どこかのタイミングで必ず復帰します。
読者様方、本当に申し訳ございません、そして、ありがとうございました!
また戻って来るまでを気長にお待ちください!




