復活
ズサァッ!!
何もない所から突如として赤い液体が飛び出る。
「よし、当たった!」
訊乃は攻撃を夢食怪物にクリーンヒットさせる。まともに喰らったために、夢食怪物は出血をする。
「っ!?血が付いたから、大まかな位置が見える!?」
空中で浮遊している血を見て冷鳴は驚く。出血が夢食怪物の体に付いた事によって、血が透明になる事はなく、場所が分かるようになったのだ。
「これなら!!」
冷鳴は槍を構えて、足の痛みを堪えながら夢食怪物へ向かっていく。
「ま、待て!!」
「オンミョオオォォォン!!!」
夢食怪物は姿を現した。そして、向かってくる冷鳴を凝視する。
ズドォォ!!
突然爆発が起こり、衝撃により冷鳴は吹き飛ばされる。
「な、なにが・・・」
「子供の夢なんだ。何が起きるかは分からない。ありとあらゆる攻撃パターンを警戒して戦わないと・・・。」
クロネは落ち着いた表情でそう言う。
「どうしてそんなに落ち着いていられるのかしら?」
「・・・もうそろそろ到着するからだよ・・・。せめてそれまでは耐久してほしい。」
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「時間に余裕はない。早く行くぞ!」
盲目の鏡歌が思夢と華矢に対してそう言う。
「もう・・・どうなってもしらないからな・・・。」
華矢は冷たい口調で言った。3人は夢と現実の狭間を越えて、クロネ達の待つ夢の中へ入り込む。
「うん、予想通りだ。ちゃんと来てくれたね。」
クロネは安心したようにそう言う。
「状況は?」
思夢がそう問うと、クロネは夢食怪物と冷鳴と訊乃のいる方を向く。
「圧倒的に押されてる。2人では立ち上がるのがやっとだ。はやく君達も構えて。」
すると、鏡歌がクロネと2人を押しのける。
「私に任せてくれ。」
「任せろって、いい加減にしてよ!なにができるっていうの!?」
華矢はついに怒鳴りを入れる。そんな事など気にもせず、鏡歌は斧を構える。
「最初から引き金を使わせてもらうぞ。」
鏡歌は見えない目で夢食怪物を見つめる。それを見てクロネは驚愕の表情を向ける。
「鏡歌!君は何を言ってるんだい?今は思夢と華矢もいるんだ。わざわざ引き金を使わずしても勝てるかもしれないだろう?」
鏡歌は呆れた表情で返事をする。
「これまで引き金を使わずして夢食怪物を倒せた前例があったか?」
鏡歌の言った通り、前例はなかった。誰かが引き金を使わなければ、夢食怪物を倒す事はできない。素の状態ではどう足掻いても勝てないのだ。
「で、でもそれなら鏡歌さん以外の引き金を使えば・・・。」
「私はいかなるタイミングでも引き金を使える。ここまで好都合なのは私しかいないだろう?」
華矢の問いかけにさらっと鏡歌は答える。
「鏡歌さんは目が見えないんですよね・・・。それなら引き金を使っても攻撃が出来ないんじゃ・・・。」
思夢が心配そうな声色で問う。それを小さく笑みを浮かべた鏡歌が自信あり気に言う。
「それには策がある。まぁ見てな。」
「鏡歌!!」
「冷鳴!戻って来い!!」
クロネの静止も耳に止めず、鏡歌は前線で戦う冷鳴の名前を呼ぶ。
「えっ!?」
突然聞き慣れた声に呼ばれ、手を止める。
「どうして鏡歌が・・・?鏡歌の指示よ、早く戻るわよ。」
冷鳴が訊乃にそう言う。あまりの想定外の状況に、2人はそれ以上何も言わなかった。
「鏡歌さん、何をするつもりなの?」
思夢が背後からそう問うと、鏡歌は笑顔で言った。
「もしかしたら私が夢食怪物を仕留められるのは今日が最後かもしれない。でも、それはあくまで仕留められるのは・・・だ。戦う事ができないわけじゃない。」
言ってる意味が分からなかった。仕留めるだの最後だの、理解が追いついていない。
「私の引き金は<代償>。何かを捨てることで、それに見合うほどの力を手に入れられる。私が今回捨てるのは・・・。」
鏡歌は手に持つ斧をグッと握り締める。何かを決心したようだ。その場にいた全員は、なにやら嫌な予感を感じていた。
「<引き金>だ。」
「「「「えっ!!??」」」」
鏡歌を除く4人の夢喰少女は驚愕の表情をする。しかし、クロネは冷静に返事をした。
「まさか、自分から引き金という概念を取り払うというのかい!?でもそれは、君はこれから引き金を発動させる事は出来ないということだ。」
「でも、これまで私が引き金で失って来たものを取り戻すことだって可能だろ?」
その言葉の真意を悟る事は、鏡歌とクロネ以外できなかった。
「さて、生贄になってもらうぞ、夢食怪物!!」
「オンミョオオォォォン」




