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夢喰少女  作者: うすたく
復帰
19/24

復活

 ズサァッ!!


 何もない所から突如として赤い液体が飛び出る。


「よし、当たった!」


 訊乃は攻撃を夢食怪物(ドラール)にクリーンヒットさせる。まともに喰らったために、夢食怪物(ドラール)は出血をする。


「っ!?血が付いたから、大まかな位置が見える!?」


 空中で浮遊している血を見て冷鳴は驚く。出血が夢食怪物(ドラール)の体に付いた事によって、血が透明になる事はなく、場所が分かるようになったのだ。


「これなら!!」


 冷鳴は槍を構えて、足の痛みを堪えながら夢食怪物(ドラール)へ向かっていく。


「ま、待て!!」


「オンミョオオォォォン!!!」


 夢食怪物(ドラール)は姿を現した。そして、向かってくる冷鳴を凝視する。


 ズドォォ!!


 突然爆発が起こり、衝撃により冷鳴は吹き飛ばされる。


「な、なにが・・・」


「子供の夢なんだ。何が起きるかは分からない。ありとあらゆる攻撃パターンを警戒して戦わないと・・・。」


 クロネは落ち着いた表情でそう言う。


「どうしてそんなに落ち着いていられるのかしら?」


「・・・もうそろそろ到着するからだよ・・・。せめてそれまでは耐久してほしい。」


 -------


「時間に余裕はない。早く行くぞ!」


 盲目の鏡歌が思夢と華矢に対してそう言う。


「もう・・・どうなってもしらないからな・・・。」


 華矢は冷たい口調で言った。3人は夢と現実の狭間を越えて、クロネ達の待つ夢の中へ入り込む。


「うん、予想通りだ。ちゃんと来てくれたね。」


 クロネは安心したようにそう言う。


「状況は?」


 思夢がそう問うと、クロネは夢食怪物(ドラール)と冷鳴と訊乃のいる方を向く。


「圧倒的に押されてる。2人では立ち上がるのがやっとだ。はやく君達も構えて。」


 すると、鏡歌がクロネと2人を押しのける。


「私に任せてくれ。」


「任せろって、いい加減にしてよ!なにができるっていうの!?」


 華矢はついに怒鳴りを入れる。そんな事など気にもせず、鏡歌は斧を構える。


「最初から引き金(トリガー)を使わせてもらうぞ。」


 鏡歌は見えない目で夢食怪物(ドラール)を見つめる。それを見てクロネは驚愕の表情を向ける。


「鏡歌!君は何を言ってるんだい?今は思夢と華矢もいるんだ。わざわざ引き金(トリガー)を使わずしても勝てるかもしれないだろう?」


 鏡歌は呆れた表情で返事をする。


「これまで引き金(トリガー)を使わずして夢食怪物(ドラール)を倒せた前例があったか?」


 鏡歌の言った通り、前例はなかった。誰かが引き金(トリガー)を使わなければ、夢食怪物(ドラール)を倒す事はできない。素の状態ではどう足掻いても勝てないのだ。


「で、でもそれなら鏡歌さん以外の引き金(トリガー)を使えば・・・。」


「私はいかなるタイミングでも引き金(トリガー)を使える。ここまで好都合なのは私しかいないだろう?」


 華矢の問いかけにさらっと鏡歌は答える。


「鏡歌さんは目が見えないんですよね・・・。それなら引き金(トリガー)を使っても攻撃が出来ないんじゃ・・・。」


 思夢が心配そうな声色で問う。それを小さく笑みを浮かべた鏡歌が自信あり気に言う。


「それには策がある。まぁ見てな。」


「鏡歌!!」


「冷鳴!戻って来い!!」


 クロネの静止も耳に止めず、鏡歌は前線で戦う冷鳴の名前を呼ぶ。


「えっ!?」


 突然聞き慣れた声に呼ばれ、手を止める。


「どうして鏡歌が・・・?鏡歌の指示よ、早く戻るわよ。」


 冷鳴が訊乃にそう言う。あまりの想定外の状況に、2人はそれ以上何も言わなかった。


「鏡歌さん、何をするつもりなの?」


 思夢が背後からそう問うと、鏡歌は笑顔で言った。


「もしかしたら私が夢食怪物(ドラール)を仕留められるのは今日が最後かもしれない。でも、それはあくまで仕留められるのは・・・だ。戦う事ができないわけじゃない。」


 言ってる意味が分からなかった。仕留めるだの最後だの、理解が追いついていない。


「私の引き金(トリガー)は<代償>。何かを捨てることで、それに見合うほどの力を手に入れられる。私が今回捨てるのは・・・。」


 鏡歌は手に持つ斧をグッと握り締める。何かを決心したようだ。その場にいた全員は、なにやら嫌な予感を感じていた。


「<引き金(トリガー)>だ。」


「「「「えっ!!??」」」」


 鏡歌を除く4人の夢喰少女は驚愕の表情をする。しかし、クロネは冷静に返事をした。


「まさか、自分から引き金(トリガー)という概念を取り払うというのかい!?でもそれは、君はこれから引き金(トリガー)を発動させる事は出来ないということだ。」


「でも、これまで私が引き金(トリガー)で失って来たものを取り戻すことだって可能だろ?」


 その言葉の真意を悟る事は、鏡歌とクロネ以外できなかった。


「さて、生贄になってもらうぞ、夢食怪物(ドラール)!!」


「オンミョオオォォォン」

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