先輩
5章目に入ります。ペースを上げてからかなりの時間が経過しましたが、このペースなら本編に追いつくのではないでしょうか?それでは、夢喰少女13話をお楽しみください!
「どういうことだよ。」
華矢のその真っ黒な声色には、邪悪な空気が滲み出ていた。
「ごめん。翔也君が告白してきた事を華矢に言ったら、何て言われるか怖くて・・・」
パチィン!
思夢は地に手を付ける。華矢に引っ叩かれたのだ。
「えっ・・・」
状況が理解出来ずにいる思夢と泣きながら思夢見つめる華矢。華矢は口を開いた。
「私が怒ってるのは翔也君が告白してきたからとかじゃない。どうしてその事を隠してたのかだ。私がそんな事で思夢と縁を切ると思ったのか?思夢にとって私達の絆はその程度だったのか?」
思夢はその瞬間察した。自分がどんな勘違いをしていたのか。その勘違いが華矢にとって、自分にとってもどれだけ悲しい事なのかも・・・
「そうだよね・・・ごめん。」
思夢が華矢に謝ると、華矢は思夢に手を差し出す。
「こっちこそ、殴ってごめんな。」
思夢は差し出された手を受け取り、立ち上がる。すると後ろから
「あなたが千羅を・・・」
何者かの声が聞こえた。しかし、後ろを向いても誰もいなかった。
「華矢、今誰かの声がしなかった?」
「いや、聞こえなかったけど。疲れてんじゃ・・・」
「復讐してやる・・・」
再び聞こえた。今度は確実に。根拠はないけど、華矢も聞き取れている様子だ。
「確かに聞こえた。でも、誰の声だ?」
辺りを見回しても、誰かがいる気配はなく、この場にいるのは間違いなく思夢と華矢だけだった。
「どういうことなんだ?」
「わからないよ。」
全く状況を掴めず、困惑している2人、すると突然・・・
「逃げて!!」
冷鳴の声が聞こえた。
「「えっ!?」」
ズザザッ!
突然で反応出来なかったが、2人の背後に突然火が現れた。
「思夢!逃げるぞ!」
「えっ!あ、うん。」
2人は全力疾走で逃げていく。
「あら、どうしてこんなところにいるのかしら。」
冷鳴は見えぬ敵になにかを告げる。
「・・・」
誰もいない空間から、音の聞こえる沈黙を向ける敵。
「何か答えて・・・」
冷鳴の質問に反応する様に、そいつは答えた。
「怪我をしていても私の攻撃に反応できるとは、さすがだ。」
「あなたは死んだってクロネが言っていた気がするのだけれど、それを説明してもらえる?」
すると何もなかった空間から紺色の髪色を持つ少女が現れる。
「私は死んでなんかない。千羅を守る為に死んだふりをしただけ。」
「そう。そんな事情はさておき、どうしてあの2人を狙ったのかしら?」
紺色の少女は数秒の沈黙を置いたあと、大きく息を吸ってから口を開く。
「あの娘達が千羅を殺したんだろ?親友として、それが許せないだけだ。」
冷鳴はそれを聞いて、呆れた様に息を吐く。
「そんなので千羅は喜ぶのかしら?千羅にとってあの2人は新たな仲間の様なもの。あの2人を殺す行為は、所詮あなたの自己満足に過ぎない気がしてならないのどけど。」
その瞬間、冷鳴の首元にナイフを当てられる。寸止めではあるものの、あと数ミリ動かせば喉を切られて発声ができなくなる。
「それ以上なんか言ったら、タダじゃ済ませねぇぞ?」
冷鳴は再度息を吐き、紺色少女を蹴り飛ばす。
「正論を言われて悔しいからそんな行動をしたのかしら?」
冷鳴に突き飛ばされた少女は少し顔を強張らせる。
「それ以上言ったらタダじゃ済ませないって言ったよな?」
少女は何もない所から一本の杖を出現させる。
「私の名は奏杖訊乃今この場であんたを殺すから、覚えなくて結構。」
冷鳴も槍を構える。
「いきなり勝利宣言とは・・・こちらは現役夢喰少女よ?今のあなたに勝てるのかしら?」
訊乃は息を吐いた。
「怪我人を痛めつけるのは気にくわねぇ。怪我を治したらいつでも受けてたってやる。私はあの2人を先に殺すだけだ。」
訊乃は杖を地に付ける。その瞬間訊乃の姿はその場から消えていく。1人残された冷鳴の足は震えていた。
「なんなの?あの化け物・・・勝てるわけない・・・」
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「はぁ、はぁ・・・」
「なんだよ、さっきの・・・」
必死に逃げて異常な程の疲労感に襲われる思夢と華矢。それだけ奇妙な現象に晒されたのだ。冷鳴がいなければ今頃自分達は捕まっていたかもしれない。
「・・・冷鳴さん、大丈夫かな」
思夢はサラッと背筋を凍らせる質問をする。不可視の攻撃をしかける敵と戦って勝つのは非常に困難だろう。
「冷鳴さん、怪我してたよな。さっきの夢食怪物との戦いで・・・」
2人の間に沈黙が過る。
「・・・帰るか。」
華矢は思夢にそう言い残し、1人で帰って行った。
(なんか、今日は色々なことがあったなぁ・・・)
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「先日、新しく出来た彼氏に手料理を作ってあげたの。そしたらね?これ、冷凍じゃないの?って言われたの。確かに冷凍を食べさせました。でも!冷凍食品も自分で手を加えれば手料理だと思います!その点についてどう思います?岡島君!」
「えっ!?俺!?」
いつもの様に先生の生活事情を聞かされている今日だけど、いつもとは何かが違う。不穏な空気・・・というよりはどこからか視線を感じる様な・・・
「先生、またフラれたんすか?」
1人の男子生徒の質問に先生は顔を青くする。
「こら、片桐君、余計な事を言わないでください!先生はこれでもショックを受けてるんです!男子の皆さん!冷凍食品を使うかどうかでケチケチ言う様な男性には絶対にならないでください!女子の皆さんも、その程度でグチグチいう男とは付き合わない事をオススメします!」
いつも通りの日常を送っているはずなのに、この奇妙な感覚はどこから来るのだろうか・・・




