裏切り
「人の恋を邪魔するなんて、なんて酷いお方なのかしら?」
ハネムーンは冷鳴を凝視しながら不適な笑みを浮かべる。
「誰かの夢を抉るような事をする奴は絶対に殺す。」
冷鳴は槍を構えてハネムーンを睨み返す。
「可愛い顔していらっしゃるのに、怒ったら台無しよ?」
「黙れ!絶対にあんたを殺してみせる。」
冷鳴は全力疾走でハネムーンの方へ駆け抜ける。
距離が10m、9mと近づいた時・・・
シュバシュバシュバシュバシュバッ!!
無数の矢がありとあらゆる角度から冷鳴をめがけて飛んで行く。
(こいつ、今どこから!)
しかし、冷鳴の反応速度も負けておらず、大量の槍を生成し、接近する矢へ飛ばす。
ガキィンガキィンガキィンッ!
矢と槍がぶつかり合う音が絶え間無く響き渡る。歩みを止めることなく走り続ける冷鳴に対してハネムーンは先ほどよりも一回り小さな弓を構える。
「今度は当ててみせるわ。」
シュインッ!
無音に近い空気を切り裂く音と共に、超音速を凌駕する光速の矢が冷鳴の方へ飛ぶ。
ズシィッ!
決死の思いで槍を出し、防ぐ体制を作ったものの、わずかにこすれ、少し方向を変えた程度になってしまった。しかし、幸運な事にその矢は冷鳴の服を少し掠った程度だった。
(構えがなかったら直撃で即死だった。こいつ、強いっ!)
冷鳴とハネムーンの距離が僅か2mとなった時、冷鳴は大きく飛び上がる。
「死ねっ!」
冷鳴は変形させて巨大化した槍をハネムーンへ投げつける。
ギィンッ!
こすれ合う金属音。ハネムーンは投げつけられた槍を弓本体で弾く。
「この距離で防ぐの!?」
そんなセリフも束の間、一瞬不意をつかれた内に、多方向から無数の矢が飛び交う。
(まずい、やられるっ!)
ザクザクザクザクッ!!
「が・・・はぁっ!」
冷鳴は矢により串刺しになり、多量の血を吐き出す。力が完全に抜けた冷鳴はその高度から落ちていく。
ドサッ!
冷鳴は無惨な姿で地面に這いつくばる。周囲は血によって真っ赤に染まっていた。
「急所は外してやったわ。今度はどうやって調理してやろうかしら・・・いえ、その前にあの男の子を殺してあげないと。」
「させ・・・るか・・・」
冷鳴は立ち上がろうとするが、矢が刺さっていて上手く力が入らない。
「あらあら、可哀想に。あの男のコが殺られるところをそこから見てればいいわ。」
ハネムーンは翔の方へ翼を広げて飛んで行く。
「やめろ・・・やめてくれ・・・」
翔は腰を抜かせ、地に座り込んでいる。なにも抵抗のできない状態でハネムーンが殺しにかかるのを見ているしかなかった。
「さて、行くわよ♡」
ハネムーンは巨大な弓を翔に向ける。
「やめろ・・・」
シュバッ!ガキィッン!
放った矢は一瞬にして弾かれる。ハネムーンは矢を弾いた主の方へ目を向ける。そこには青髪の少女、華矢と思夢、そして鏡歌がいた。
「まったく、だらしない奴だな。槍見冷鳴さんよぉ。」
華矢は調子に乗った様な声色でそんな事を言う。
「どう・・・うか・・・」
声に鳴らない程小さい弱った声で冷鳴は何かを言う。
「邪魔者が増えたみたいね。まとめて逝かせてあげる。」
華矢は周囲を見渡すと、顔を真っ赤にする。
「どうして翔也君がっ!?」
それを聞いて思夢の顔は青ざめる。
(今日告白されたことが華矢にバレたらなんて言われるかっ!)
「し、思夢さんっ!?どうしてこんなところに・・・」
反応して翔也も顔を赤くする。華矢は大きく深呼吸して、息を整える。
「とにかく今はこいつを倒さなきゃ!」
華矢は剣を2本生み出す。
「覚悟ッ!!」
華矢は猛ダッシュでハネムーンの方へ走り、剣を投げつける。しかし、何もなかったはずの空間から現れた矢によって剣は弾かれる。
(前に、思夢に見殺しにしたくないって言ったっけ・・・私の一方的な思いかもしれない。でも、今後こんな強敵が連続で現れたら・・・)
華矢は再度剣を生成し、ハネムーンの胸元へ跳び上がる。構えた剣を後ろから前へ振りかざすものの、その攻撃も矢によって防がれる。
「こんなの見てられないよっ!」
思夢は大きな声で今の状況からの感想を放つ。幼馴染の華矢が1人で戦っている。それも命懸けで・・・
「君も戦えば良いんじゃない?」
クロネは冷静な顔をしながらそんな事を呟く。正直迷っていた。華矢は見捨てたくないし、夢喰少女になったことがバレれば約束を破ったことになる。でも、よくよく考えれば答えは簡単な事だ。
(守れないかもしれないな・・・)
突然頭にそんな言葉がよぎる。誰の声か?そんなのは聞く価値もない。自分の声だ。その瞬間体中に力が湧き上がってくるのを感じた。
ドクン・・・ドクン・・・
心臓の音がよく聞こえる。痛い・・・心が抉られるように・・・
華矢の持っていた剣が大剣へと姿を変える。
「死ねぇぇぇぇぇっ!」
大きく振りかぶった大剣はハネムーンの翼を切り落とす。ついにハネムーンを殺ったのだ。
「バカなっ!あり得ない・・・この私が・・・」
しかし、華矢には息つく暇もなかった。ハネムーンがやられると同時に使用したのであろう。無数の矢が自分をめがけて飛んで来ているのがわかる。
(駄目だ・・・避けられないっ!死ぬ・・・)
ガチガチガチガチガチィッ!
瞬間の出来事だった。自分の方へ飛んで来ていた矢は一瞬にして地に落とされる。
「な、なにがっ!」
華矢は理由を探るために周囲を見渡す。するとそこには変わり果てた思夢の姿が・・・
「破ちゃったね。忠告・・・」
弓を手に持ち夢喰少女となった思夢は笑顔で泣いていた。
「・・・ざけんなよ。」
同様に華矢も泣いていた。そして震えていた。
「私の苦労は何だったんだよ!あいつを倒したと思えば思夢が私を救った?それに思夢が夢喰少女になった?一体私は何のためにここまで頑張ってきたんだよ・・・」
冷鳴が足を引きずりながらこちらへ向かう。
「はぁ、はぁ。あなたは思夢がいなかったらしんでいたのよ?・・・命の恩人に対してその態度はなんなのかしら・・・」
「喧嘩はその辺にしときな。これ以上言い合ってもなにも生まねえぞ?」
鏡歌がさらに割り込む様に口を出す。と、クロネが大きく深呼吸をする。
「改めて紹介しようか。華矢も含めてね。桐生思夢、剣見華矢。今日から彼女達が君達の仲間だよ、槍見冷鳴、清斧女鏡歌。」
その場にいる全員はポカーンと口を開ける。状況が読み取れなかった。
「紹介も済んだ事だし、夢を解放しようか」
クロネが夢を解除しようとしたその時、翔也が「少し待ってください!」と静止する。一同が沈黙した。
「桐生思夢さん。改めてあなたを見て思いました。やはりあなたが好きです。どうか、もう一度チャンスを・・・」
戸惑う一同と目に光の色を失った華矢。そして焦る思夢。
「えっ、えぇと・・・それはこういうところでやるべきじゃないよね・・・どちらにしろごめんなさい。」
翔也はデジャブを感じさせる様にその場に跪く。
「思夢、後で話を聞かせて・・・」
何やら邪悪な空気を纏っている華矢と恐怖心を覚える思夢。
「もういいよね。切るよ。」
クロネが足を地につけると、普段の公園に戻されていた。時計が指す時刻は深夜の1時半。
「どういうことだよ・・・」
華矢が冷たい声色でそんな事を言った。
-------
「久しぶり、クロネ・・・」
生え狂う木々の中、紺色の長髪少女とクロネが向かい合っていた。
「急にどうしたんだい?またやりたくなったのかい?夢喰少女を・・・」
その少女は薄く悲しげな表情をする。
「やるわけないでしょ?ただ、千羅を殺した人間が今の夢喰少女の中にいるんでしょ?仇討ち。殺してやるよ。どれだけ辛い思いして私は千羅を見捨てたと思ってんだ。それを簡単に殺しやがって・・・」
クロネは少女を見つめては口を開く。
「復讐するのかい?桐生思夢と剣見華矢に・・・。彼女達は強いよ。いくら先輩とはいえども一筋縄じゃいかないんじゃないかな?奏杖訊乃。」
瞬間、訊乃はクロネの首元に杖を向ける。
「名前で呼ぶな。殺すぞ?」
まずは謝罪からさせていただきます。前回の投稿から一週間ほど経過してしまいました。本当にもうしわけございません。外せない事情があったため、投稿を控えさせていただきました。本当に失礼いたしました!
これからまた普通に投稿していくつもりなので、よろしくお願いします!
今回はこの辺で終わりにしましょう。
それでは、次回の夢喰少女をお楽しみください。




