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23 地上の楽園②

前回のあらすじ

搭乗者「俺の機動殻を見てくれ、こいつをどう思う?」

 

 検問の影響で発生している渋滞。

 遅々として進まない車列に辟易していた2ndだったが、M-2と運転を交換してからまだ20分しか経っていなかった。

 それでも既に2nd達の検問は次にまでなっていたのだが。


「……すごく、大きい」


 ハンドルから手を離し、暇そうにしながら頭の後ろで組んでいた2ndは隣で呆然と呟いた佳奈を見る。

 助手席に座る佳奈はフロントガラスの向こうを指さしており、その先には2ndの操る機動殻――骨董品級のチハ――よりも一回り以上大きい機動殻が立っていた。


「確かにデカいな。ありゃあG(ガンズ)&A(アーミー)の最新型の第三世代機動殻か? 名前は確か……」


《拠点殲滅用多携行型第三世代機動殻F-37。

 平均装甲厚180㎜、平均移動速度80km/時、最高速度120km/時。

 初期武装は90㎜ライフル2丁、近接装甲刀1本、120㎜拡散曲射砲一門。

 腰部には二門の40㎜機関砲があり、脚部には対人散弾口が複数備え付けられています》


「補足説明ありがとうな、M-2さんや。でもその説明だと佳奈が分かり難いんじゃないか?」


 2ndがそう言って助手席に座る佳奈を見ると、分かったような分かっていないような曖昧な表情をしながら首を傾げている。


《では分かりやすく言ってしまいますと、2nd様が乗っている機動殻であればものの数秒でハチの巣に出来てしまう最新型の機動殻という事ですよ。佳奈様》


「なるほど」


「あ、その説明だと分かるんだ」


 神妙な顔つきで頷く佳奈に2ndは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 その後も取り止めのない会話を繰り返していた2ndと佳奈だったが、数分もしない内に機動殻の足元に停まっていた輸送車が走り出す。

 2ndも後に続くようにアクセルペダルを踏み込むが、装甲車が動き出すよりも早く機動殻が右腕を2ndたちへ向ける。

 当然右腕の動きに合わせて握られていたライフルの銃口も2ndたちへ向けられ、佳奈の表情が一瞬にして凍り付く。

 ただ銃口が火を噴くことはなく、右腕から一本のワイヤーケーブルが射出されてコンッと音を立てて装甲車の天井部分にケーブルの先端が張り付いた。


《こちらはG&A社中東支部所属のグラウンドエデン派遣防衛部隊検問班のラウル・ブリッツ曹長だ。グラウンドエデンへの来訪目的と滞在期間を答えろ》


 運転席に若い男の声が響く。

 今まで一度も聞いた事のない声に佳奈は首を傾げているが、2ndはアクセルを踏み込んで機動殻の隣まで装甲車を進める。


「グラウンドエデンには物資の補給と休息のために来た。滞在日数は明確には決めてないが、まぁ一か月はいないんじゃないかな」


《そうか。大量破壊兵器等は所持してはいないか?》


「いや、そういうのは一切ないな」


 ラウルと名乗った男の簡素な返事を聞いていると、2ndのポケットに仕舞ってあった携帯端末が小さな音を立てる。

 機動殻から見えない様に端末を取り出して画面に目を向けると、リトルキャッスルの情報端末に不正アクセスが行われているのを知らせる文字が表示されていた。

 2ndの持つ端末を覗き込んでいた佳奈に唇に人差し指を当てて静かにしているように伝えると、2ndは不正アクセスが行われていることに気づいていない風を装う。


《ふむ、グラウンドエデン内での指名手配はされてもいないようだな。物資の補給と言っていたが、具体的には一体何を補給するんだ?》


「水と食料、それから弾薬類の補給かな」


《そうなると、四番入場口だな。場所は分かるか?》


「何度も来てるからそこら辺は大丈夫だ。あぁそうだ、フロントマックス社のドックスペースは空いてるか?」


《ちょっと待て……あぁ、ちょうど一台分空いてるな。場所の予約連絡を入れておこうか?》


「できるならお願いしたい」


 グラウンドエデンへ立ち寄った際にいつも利用している物資補給会社に予約を入れてもらいながら簡素なやり取りを幾つか交わしていると、手にしていた端末が小さな警告音を鳴らす。

 端末には装甲車のデータベースへ不正アクセスを行っていた者がセキュリティーを抜け、装甲車にあるデータを閲覧していることを知らせるものだった。

 物問いたげな視線を投げている佳奈にウィンクすると、さっきから何も教えてくれない2ndに対して不満そうに頬を膨らませる。

 抗議の視線が混じり始めた佳奈に2ndが後でなと言うと、ひっきりなしに警告音を鳴らし続けていた端末が、急に音を発さなくなる。


《待たせたな、漸く入場許可が下りた。それでグラウンドエデンへ入るにあたってだが―――》


「“面倒事を起こすな。自分の身は自分で守れ”だろ?」


《分かっていればそれでいい。あとこれも分かっているとは思うが、無許可での二級市民街以上への立ち入りは基本的に厳禁だ。入りたいなら必ず許可を取れよ。

 さて、これで検問は終わりだ。くれぐれも面倒事は起こさないでくれよ、俺達の仕事が増えるからな。

 それじゃあようこそ、神様にすら見捨てられたこの地球に残る最後の“楽園エデン”へ》


「へいへい」


 天井部分に張り付いていたコードが巻き取られると、男の声は一切しなくなる。それに合わせて2ndはアクセルを踏み込み、グラウンドエデンへと装甲車を向かわせる。





 M-2に運転を任せた2ndと佳奈は、日常生活を送っているスペースへと戻っていた。

 何時ものように2ndがソファーで寛いでいると、隣に腰掛けていた佳奈が遠慮がちに2ndの服を引っ張る。佳奈の表情はやや膨れっ面であった。


「さっきのは何だったの?」


「あれは検問でな、グラウンドエデンに持ち込んじゃいけないものを持ってないかって言う検査をしていたんだよ」


「……でも」


「まぁ、佳奈の言いたいことはわかるぜ。なんで禁制品の持ち込みを容認しているのに検査するのかって事だろ?」


「うん、それなのに―――」


 佳奈が口を開こうとした瞬間、装甲車の後方から巨大な爆発音と共に大きな振動で装甲車が僅かに揺れる。


「―――な、なに?!」


「たぶん、グラウンドエデンに持ち込めないものでも隠してたんじゃないかな。M-2さん、外の様子はどんな感じ?」


 突然の爆発音に佳奈は怯えて2ndにしがみ付くが、2ndは何事もなかったかのようにM-2が格納されている天井を見上げていた。


《遣防衛部隊以外の機動殻の姿は確認できず、襲撃者レイダーなどによる攻撃の痕跡も確認できません。

 ラウル・ブリッツ曹長殿の乗るF-37の付近で輸送車が炎上している状況から鑑みまして、恐らくラウル・ブリッツ曹長殿が検査していた輸送車を破壊したものと思われます》


「馬鹿だねぇ。欲をかかなきゃ少なくとも死ぬことは無かっただろうに」


 グラウンドエデンは確かに禁制品などについては黙認していたが、全ての持ち込みを許している訳ではなかった。

 特に化学兵器や生物兵器などの機動殻を除いた大量破壊兵器の持ち込みについては厳しく規制していた。街中に入る際には自衛用の最低限の武装を除いて、爆発物系の所持も原則として禁じられている。

 それらについては深い理由はなく、グラウンドエデン内部で破壊工作等を行わせない為である。

 事前に申し出ていれば核兵器だろうとなんだろうと持ち込む事は可能だったが、かなり高額の手数料を求められるため、防衛部隊に破壊された輸送車は許可を取らずに持ち込もうとしたのだろう。

 ちなみに機動殻や傭兵が携行しているような武装についてはグラウンドエデンを利用する傭兵の大半が所有しており、利用者の不満を抑えるために手続きは不要となっていた。

 数機の機動殻や傭兵が暴れた所で、直ぐに殲滅できる戦力を有しているという事もあったが。


「―――そういうこったな。基本的に誰でも受け入れてはくれるけど、グラウンドエデンにも守らなきゃいけない最低限のルールがあるって事だ」


「……なるほど」


 説明するまでは不満げだった佳奈も、2ndの分かりやすく噛み砕いた説明を聞いていると納得したのか、2ndに促されて児童用の企業間共通言語の教本に目を落とす。

 検問が行われていた場所から、予約を入れた四番ドックまではまだまだ距離がある。

 佳奈も自習を始めてしまい、手持無沙汰になった2ndはシャルロット救出の際に使用した銃やナイフの手入れを行い始める。

 それから30分ほど時間が経つと、銃を組み上げる音しかしない車内にM-2の抑揚に乏しい声が響く。


《間もなく四番ドックに到着いたします》


「あいあい、じゃあ佳奈も準備しときな。グラウンドエデンには長いこと居る事になるから、服とか忘れるなよ。装甲車と宿泊場所はかなり離れると思うから、取りに戻るのも時間が掛かるからな」


「はーい」


 一通りの整備を終えていた2ndはそれらを武器庫に仕舞ってから再び運転席へと移動し、佳奈はグラウンドエデンに下りる為の準備を始める。

 2ndが運転席に着くとちょうどリトルキャッスルがグラウンドエデンの都市防壁をくぐる所であり、電磁障壁で視界の歪められた搬入口と見上げてギリギリ頂点の見える巨壁が目の前にあった。

 M-2に運転を任せたまま2ndたちが電磁障壁を抜けると、そこはリトルキャッスルと牽引しているトレーラーが入っても余裕のある除染室があり、赤色灯に薄暗く照らし出された一室の奥にはこれまた大きな扉が行く手を阻むように閉ざされていた。

 扉の手前にあった車止めによってリトルキャッシルが止まると、視界を塞ぐ勢いで霧状の消毒液が吹きかけられる。

 数秒で消毒液の噴霧が終わると、今度は四方八方から轟音を伴う強風が吹き付けられる。


 2ndは暢気に風が止むのを待っていると、幾ばくもしない内に強風が止まる。そして室内を照らしていた赤色灯が緑色に変わると、2ndの目の前にあった扉がゆっくりと開かれる。

 車止めも下げられ、歩くような速度でリトルキャッスルが除染室から進み出るとそのタイミングで佳奈が運転スペースへやってくる。

 助手席に座った佳奈の両手には子供用のリュックが抱えられており、中身については2ndは関知していなかったが、生真面目な佳奈のことだからしっかりと言いつけを守り、長期滞在用の着替えなどが入っているのだろう。


「スッゴク、広い!!」


 そんな風に佳奈のことを観察している2ndを余所に、佳奈は防壁内に組み込まれた補給専用の空間を見て感嘆の声を漏らす。

 天井は何処までも高く、装甲車が走れるように設けられた道はリトルキャッスルが複数台ならんでも十二分な余裕があるほど広く作られている。

 都市側の壁際には雑多な機械で埋め尽くされており、様々な種類の大型輸送車や装甲車が数えるのが馬鹿らしくなるほど停まっていた。

 以前立ち寄ったコープ―――ヴェグラウンドラウンジと比べるもの阿呆らしくなる規模の違いだった。

 少女が見とれ、大の男が少女を観察しているという奇っ怪な空間が運転席出来上がっていたなか、外ではゆっくりと進む装甲車に一人の男が電子端末を手に走り寄ってきていた。

 M-2の指摘でそれに気付いた2ndが装甲車を止めさせ、窓を開けると運転席の隣にまでやってきた男が柔和な笑顔を浮かべながら話しかけてきた。


「グラウンドエデン四番補給入場口へ、ようこそ!! ご利用したい補給会社はお決まりですか?」


「あぁ。さっき検問所でフロントマックス社のドックスペースを予約してもらったんだが、どうなってる?」


「えぇっと、少々お待ちください。あぁ、フロントマックス社をご希望のリトルキャッスルの方ですね。大丈夫です、ちゃんと予約されていますよ。

 それでフロントマックス社の空きドックは………少し遠いですが向こうの方で誘導棒を振ってる人が見えませんか? あそこになります」


「わかった、ありがとな」


 2ndはそう言って窓を閉めると、装甲車は再びゆっくりと動き出す。

 補給入場口という事もあって大型の車両もひっきりなしに出入りしており、リトルキャッスルよりも小さい車両もあれば遥かに大きな牽引トラックも行き交っている。

 そのため2ndの装甲車の進みは遅い。それでも十分に余裕をもって作られた道の御かげで直ぐに誘導棒を振っていた件の人物の元に到着する。

 係りの指示に従い装甲車を所定の位置に駐車させると、2ndは端末を手に装甲車を下りる。


「弾薬から奴隷以外の生活物資全てを潤沢に用意しているフロントマックス社をご利用いただき誠にありがとうございます。担当させて頂きますブルーノと申します。本日はどういったご用件でしょうか?」


 2ndが装甲車から外へ出ると待ち構えていたかのように男が立っており、ブルーノと名乗った男は人当たりの良い笑顔を浮かべて一息に挨拶をしてくる。


「物資の補給を頼みたい。簡単に言うと第二世代機動殻の推進剤と弾薬各種。汚水の回収と容量一杯の一級除染飲料水、それから合成食料とリトルキャッスル用と歩兵用の弾薬だな」


「ご購入されたい弾薬などでご希望の製造会社はもう御決まりですか? 詳細の書かれたリストなどがあればお時間の短縮が出来ますよ」


「ちょっと待ってくれな……」


 ブルーノの流れるように紡がれる言葉を聞きながら2ndはポケットから端末を取り出し、M-2によって作成されたリストに目を通していく。

 軽く目を通して問題ないと判断した2ndは端末からデータチップを取り出してブルーノに差し出すと男は慇懃にそれを受け取り、割れ物を取り扱うかのように自身が持つ電子端末の差し込み口に入れる。


「あと検問時に滞在期間が未定とお答えになっておりますが、宿泊施設等はお決まりですか? もしお決まりでなければ私の方で御予約なども出来ますが、如何ですか?」


「そうだなぁ……」


 2ndは考える素振りを見せながらチラリとブルーノに目を向ける。

 フロントマックス社の制服をきちんと着こみ、一見すると真面目で丁寧な応対を心掛けている中年担当者という風に見える。

 しかしブルーノを目の当たりにした2ndの感想としては、所作や言動がどうにも演技じみていて胡散臭さしか感じなかった。

 揉み手を今にも始めそうなブルーノの低姿勢が、その印象に拍車を掛けていた。

 レムナントの大半は勉学に励む余裕のないクラスタ出身という事もあるが、元ユニオン出身者であったとしても殆どが追放された厄介者たちばかりである。

 そのため、基本的にレムナントとして活動している者の多くは学がないと言ってもいいだろう。

 安定した職業―――特に第三次産業についている者たちはレムナントを見下す傾向にあり、卸売を専門にしている人間ですらレムナントと分かれば言葉や態度の節々にそういった感情が現れる。

 一切軽蔑した姿を見せない人間もいるが、そう言った人間に限って人を騙そうと企んでいる人間なのだ。

 勿論、全ての客に対して分け隔てなく接する人間もいるのだが、2ndの目の前にいるブルーノは何か企んでいると勘が告げていた。


「まだホテルとかは決めてないんだが、比較的治安の良い区画で警備がしっかりしてる宿泊施設で二人部屋の空いてる所はあるかい? 値段に関してはいくら高くなっても構わないから」


 とは言えブルーノが行動を起こす前から警戒していても、見逃す時はどんなに用心深くなっていても見逃すと割り切った2ndは今後の予定を大雑把に組み、端末を操作していたブルーノに告げる。


「少々お待ちください……あぁ、ちょうど二級市民区画の近くに“イン・デ・ロップ”と言うホテルに空きがありますね。宿泊費は他の宿と比べてかなり高額となりますが、常駐警備員も居りますし、外苑区画の中ではトップクラスの安全を保障しますよ。

 ちなみにシングル二つとダブル一つでそれぞれ空きがありますが、如何致しますか? ダブルお一つなら幾分かお安いですよ。

 あと、先ほど頂いたリストの中に弊社ではご用意できない物が数点ございましたので、リストの方に提示させていただきました。お力になれず誠に申し訳ございません。

 ただ大半の物は直ちにご購入いただいだけますよ。こちらがそのリストと合計金額になります」


 返されたデータチップを自分の端末に戻すと、ブルーノが新たに作成した購入リストが表示される。

 リストの中には何点か赤文字で表示されていたが、その多くが2ndの旧式機動殻―――チハの物であり、2ndとしてもチハ用の備品は古すぎて中々手に入りにくいことは予想できていたため、諦めもつく。

 今までは流用可能な物を使っていたが、本来ならばチハに適した物を使いたい。

 だが、機動殻用の製品を豊富に取り扱っているフロントマックス社でも揃わないのであれば、仕方がないと2ndは大きなため息を吐き出した。


 2ndの溜息に反応したブルーノに気にしない様に伝え、手元の端末に表示されているリストに軽く目を通していく。

 弾薬や飲料水の値段が異様に高く、予想していたよりはるかに高いが、払えない値段ではない。金額を除けば表示されているリストや契約書に何かが仕込まれている事もなく、不審な点は見当たらない。

 提示された値段にしてもユニオン以外では需要と供給が大きく変動しやすく、物資が高騰しやすいため、装甲車で移動している間に高騰しているというのもザラだった。

 それに吹っ掛けられていると断言できるほど高値でもなく、想定しうる範囲である。


 2ndは勘が外れたかと内心首を傾げているが、嫌な予感と言うのは存外当たる物である。

 2ndはリストを読みながらポケットに仕舞ったままの端末を操作し、念のために不備や不審な点が無いかをM-2に調べさせることにした。


「ねぇ、セカンド。新しい服買って」


 いつまでもリストを見ている訳にも行かず、それとなく会話で時間を稼いでいると装甲車に待っているように言い付けておいたはずの佳奈が下りてきた。しかも今まで1度も無かった我侭の言葉を口にしながら。

 2ndが嗜めようと口を開く前に左手を掴み、引っ張りながら尚も言い募る。


「おやおや、随分とお転婆なお嬢さんですね」


「あ、あぁ。何時もはこんなに我侭じゃ……ん?」


 2ndを見上げながら買って買ってとせがんでいる佳奈に微笑むブルーノだったが、2ndは左手の中に妙な感触があるのに気づく。


「どうかなさいましたか?」


「あ、いや。何でもない。それより少し時間を貰っていいか?」


「えぇ、構いませんよ」


 ニッコリと柔和な笑みを浮かべるブルーノに一言礼を言い、ブルーノに背を向ける形で佳奈の正面に回って視線を合わせる。

 そして我侭を言う佳奈を諭す風を装いながら手の中にあった紙切れに目を通す。

 紙切れには拙い字で幾つかの単語が書かれているだけだったが、2ndがその意味を理解すると笑みを浮かべていた。


 2ndがどう言った類の表情をしていたのかは目撃者がほとんど居なかったため判然としないが、唯一目にした佳奈は身を引くほどドン引きしていたという。




 次回更新は9/20を予定しています。

 それではここまで読んで頂き、ありがとうございます。

 誤字・脱字・質問・感想など、首を長くしてお待ちしております。

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